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【終章】黄金の祝祭(8)
何なのかしら、この男は。急に大きな声をだしてとばかりにリリアナがカインを見やる目には不審の色しか映っていない。
数秒後、気を取り直したか再びアルフォンスのほうへと向き直った。
「それではアル様、今度グロムアスの街を案内してさしあげますわね」
「い、いや、それは……」
アルフォンスの表情が引きつる。
隣りのカインの視線が刺すように痛い。
こころなしかディオールも顔を強張らせている。
無理矢理といった強引さでアルフォンスは話題を変えた。
「お、おひとりで地下へ行くなど危ないのでは? 俺が……俺たちが一緒に行かなくても?」
構いませんわとリリアナは手を振る。
「一人の方が身軽ですもの」
言うが早いか、ドレスの裾をつまんで駆けて行ってしまった。
たくましい──感心したように呟いてリリアナの背を見送るアルフォンス。
「……ずいぶんあのお嬢さんと仲良くなったのですね。そういえばあのお嬢さん、惚れっぽいことで有名でした」
「アル様と呼ばれていた。どういうことだ? アルと呼ぶのは私だけじゃなかったのか?」
背後霊のように鬱陶しい二人を見ないように咳払いを繰り返すアルフォンス。
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