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02相対
屋敷に戻ると、スヴェンがいた。
「ヴァニタス!! どうした!!」
「いや、魔法陣描くのに血を使ったからって……アルビオンが大袈裟なんだよ……」
「それは、アルビオンが正しい。ヴァニタスはすぐに無理するからな。話はヴァニタスの寝室でしよう」
そういえば、スヴェンもすごく過保護だった。
忘れてた。
でも……ちょっと懐かしい。
寝室のベッドに寝かされた。
俺、そんなに重症じゃないんだけどなぁ。
「アッシュフィールド公爵との対談の日が決まった」
俺は思わず目を見開いた。
飛び起きなかったあたり、やっぱり血の消耗が激しかったのかもしれない。
アルビオンやスヴェンの判断が正しかったというのはちょっと悔しいな。
俺ももう少し強くなりたい。
「場所はアッシュフィールド公爵家。対談にはセオドア様と護衛としてフィニス騎士団長の息子、ジェラルド殿が同行する」
噂のジェラルドに会えるのか。
いや、本命はもちろん親父との対談なのだけど。
「アルビオン、お前も同行してくれないか?」
「勿論。マドリーン様を“視る”のが目的だよね」
「そしてユズキ殿も」
「……えっ!?」
アルビオンの肩に乗っていた柚希が、ふわりと飛び降り人間の姿に変身する。
「お兄さんはてっきり、この屋敷を守る為に残るものだと思ってた」
「スピルスは同行しない。そうなると、魔王側の知識を持つ貴方には是非とも同行していただきたい」
「あー、そういうこと……」
柚希はコクコクと頷いている。
「スライム姿で、ヴァニタスの服の中に入っていけばいい?」
「…………今回だけは。やむを得ません」
スヴェン、めちゃくちゃ不服そうだな。
「柚希、変なとこ触るなよ」
「任せて! お兄さんは空気の読める男だから!」
いや、お前空気読めるの?
空気を読んだ上でシリアスブレイクしてるのか?
余計に罪深いぞ、お前。
「この屋敷の守護はフィニス騎士団長が担当するそうです。流石にご自身が同行するのは不味いだろうといって、息子のジェラルド殿を同行者に選んだようです」
フィニスは一応公爵だからな。
他の公爵家の話に交じるのは不味いよな、そりゃ。
「つーか、今更だけど……ただの家族会議がめちゃくちゃ大事になってんなぁ……」
「仕方がありません。アッシュフィールド公爵家は王家よりも長い歴史を持つ家系です。王家ですら無視できない家系なのです」
今更ながら、すごい家に生まれちまったんだな……俺。
「とりあえず、今は休んでください。マチルダには貧血が回復する食事を頼んできます」
そう言うと、スヴェンはアルビオンと柚希を連れて寝室を出て行った。
スヴェンとの食事……懐かしいな。
親父と対話をして、関係が改善するかはわからない。
とりあえず、俺の幽閉が解ければ御の字だ。
俺の父親はスヴェンだし、俺の母親はマチルダだ。
親父に特別な感情はない。
「両親には恵まれなかったけど、周囲の人間に恵まれたんだな……ヴァニタスは」
スヴェンとマチルダに感謝しなきゃな。
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