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第1話

麻野 英知(24)は恋愛に興味はなかった。 学生の頃からいわゆる陰キャで、会社員になった今でも、人付き合いが上手く出来なかった。同僚とは必要な事以外、話すこともなかったし話したいとも思わなかった。 でも、一応会社の行事には参加している。 今日も、中途で入社した駒田 一生(24)の歓迎会に参加していた。 それなりに左右の席の同僚にお酌をし合う。 向かいの席には今日の主役、駒田がいた。 いわゆる陽キャ側の人間。 入社してあっさり誰とでも仲良くなった。 いつも会話の中心にいた。 自分とは別世界の人間なんだと思っていた。 「麻野さんお疲れ様です。どうぞ」 と、ふと見ると駒田が英知の隣に来ていてビール瓶をこちらに向けている。 にこっと愛想よく笑うその顔がイケメン過ぎて、英知はムカついた。 「おつかれ、ありがとう」 メガネをくいっと直し、英知はビールを注いでもらう。 麻野さんて、あのツール作ったんでしょ?すごいですよね」 「ああ、あれは誰でも出来る。俺が暇だっただけだ」 「またまた謙遜して〜、あれから皆仕事しやすくなったって言ってたし、皆仕事のスキル褒めてましたよ」 「陰キャだけどとか言われたんだろ」 そう言うと、駒田がケラケラと笑い、 「まあ暗すぎるよね。存在感ねえし」 英知はイライラしながら、注がれたすぐのビールを一気に飲み干し、 ダンッ! グラスをとテーブルに置いて、 「君はお酌ついでに喧嘩を売りに来たのか?」 「え」 駒田はきょとんとする。英知は知っている。 彼は誰とでも仲良くなるし、人に好かれる方だが、無意識に一言多い男なのだ。 英知はそんな駒田が嫌いだった。駒田は困惑した顔をしている。 「喧嘩を売るつもりは全然・・・」 と、ヘラヘラする。その態度に英知はまたイラッとして、 「君は中途で入社してきて成績もいい。コミュニケーション力もある。でも、時々取引先から、一言余計だと注意を受けているだろう」 「そうですかね・・・?」 彼の指摘もピンときていないようだ。 英知は駒田の手からビール瓶を奪い、自分のグラスに注ぎグイッと飲み干す。 「ち、ちょっと!」 無茶な飲み方をする英知のグラスを持つ手を止める。 英知はグイッと駒田に詰め寄り、 「俺はな、君みたいなイケメンで陽キャなヤツが大っきらいだ!」 「そ・・・それはどうも」 駒田は酔っ払いの勢いに引く。 翌朝、 「ってぇ・・・」 英知はフカフカなベッドの上で頭痛に苦しみ目を覚ます。 完全に二日酔いだ。 起き上がりメガネを探す。 起き上がると、腰と尻がズキズキした。 酔って何か無理をした・・・ メガネを掛けて、部屋を見るとそこは家ではなかった。 何処かのホテルだ。 そしてベッドの上には裸の自分と、 「んー・・・」 裸の駒田がいた。 これはどう考えても事後だろう。 しかし昨日の事は全く覚えていない。 なぜ駒田と裸でホテルのベッドにいるのか。 歓迎会で酔った勢い・・・? それとも駒田が男が好きで、酔った自分をホテルに連れ込んだ? それとも・・・ メガネを掛けて、スマホを見ると朝の6時。 「おはようございます。麻野さん」 ふと気が付くと、駒田が目を覚ましていた。 ベッドに横になりながら、こちらを見上げている。 それを見て、起きてすぐイケメンでムカつくと思った。 「あんた、昨日のことなんにも覚えてないんでしょ?」 「・・・」 その言葉に英知は頭痛のする頭を抱えて頷く。 「べろべろに酔っ払ったアンタは、家に帰りたくない〜って駄々こねるから。 仕方なく近くのホテルに運んだんだよ」 「・・・そう」 じゃあ、何もなかった・・・? 「んで、俺は帰ろうとしたら、イケメンでムカつくって俺の服脱がして・・・」 「ん?」 「キスしろーって、俺にキスしてきて」 「んん」 「抱け抱けうるさいから」 「!?」 駒田は顔を背けて、少しだけ照れて。 「めちゃくちゃ抱いた」 「!!!」 駒田の話に、英知は絶句した。 (俺が・・・抱かれた、駒田に・・・) 英知は頭が真っ白になった。 よりにもよって嫌いな奴に抱かれてしまった・・・ 何てことだ。 英知はメガネをクイッと上げて、心を落ち着かせる。 手が震えているので全然冷静にはなっていないが。 「駒田くん、昨日は迷惑をかけたようだ」 「え、いやぁ・・・」 駒田は何故か照れた素振りを見せ、頭を掻く。 対して英知は服を着て、テーブルに一万円札ボンッと置き、 「だが君が言うように、はっきりいって俺は昨日のことを全く覚えていない」 「え、はい」 英知の言葉になぜか駒田はショックを受けているようだ。 「一晩の過ちと思って忘れて欲しい。会社では関わってこないでくれ、じゃ」 英知はそれだけ早口でまくし立て、一目散にホテルを後にした。 人生最大の過ちだ!! 週明け月曜日。 「おはようございます、麻野さん」 笑顔で話しかけてくる駒田。 関わるなと言っているのに。英知はそっぽを向いて、 「おはよう。では」 すぐにその場を去ろうとする英知を、駒田は他に人がいないことを確認して腕を掴んで引き止める。 それに英知はドキッとなり、 「は、離せ」 駒田は英知の耳元でそっと、 「昨日のセンパイが乱れている時の動画・・・あるんですけど」 ぞくっとした。 「何だって・・・?」 「昨日何があったのか、知りたくないですか?」 駒田はニッと笑みを浮かべる。 とりあえず確認せねば。 「わかった・・・今日時間を取ってくれ」 「わかりました」 完全に自分の勝利という顔を見せて駒田はその場を去った。 誰もいない場所が良いとの事で、英知は駒田の家に来ていた。 整ったリビングに通され、ソファに腰を掛け、 「それで?動画があるとは本当か?」 英知の言葉に、駒田は自分のスマホを操作し画面をこちらに向ける。 その動画を再生する。 《ああっ、もっとぉ〜もっと奥まで突いてぇ》 酔ってベロベロの自分が裸で駒田とベッドにいる。 後ろから挿れられ、バチュバチュとやらしい音が入っている。 《あぁん、気持ちいいぃ》 これが、自分が言っているのか? 信じられない。 後ろから挿れられ何度も何度もイッている自分の乱れた姿。 その動画を見て、昨日の事を少しずつ思い出していく。 自分を運んでくれた駒田が、帰ってしまう。 何故か寂しくなり、彼を引き止めて自分からキスをして。 だんだんとはっきりしてきた。 服を脱がせて、しっかりと締まった駒田の身体を舐め回し、挿れてと言った。 思い出してきたのは、場面だけじゃなく・・・ その時の身体の反応も思い出してきた。 男とセックスする事は昔から興味があり、挿れられたい願望があった。 でもそれを実行したことはなく、これからもそれはないつもりだった。 なのに、動画では快楽に素直に身を任せて気持ちよくなっている。 本当は気持ちよくなりたい。 「思い出した?」 駒田は完全に勃ってしまった英知を、マジマジと見つめて呟いた。 「・・・っ思い出した」 めちゃくちゃ気持ちよかった事を。 英知は勃ってしまったモノを、今さら上着で隠す。 「別に隠さなくてもいいでしょ」 「だって、気持ち悪いだろ。男が男に反応するなんて」 「まあ俺だって男は初めてだったけど。あんた綺麗だし余裕でイケた」 駒田は熱っぽくなっている英知を見つめ、 「正直、今までで1番気持ちよかった」 それを言われ、また身体が疼き出す。 英知はメガネをくいっと動かし、 「と、とにかく、動画は消してくれ」 「いいよ、条件があるけど」 「え」 聞き返すまもなく、英知は駒田にベッドに押し倒される。 「もう1回抱かせて」 「なっ」 「酔ったせいなのか、シラフでも抱けるのか確かめさせてよ」 「な、何言って・・・あっ」 ベッドに押し倒され上に乗っかられる。駒田は英知のすでに勃っているモノをズボンの上から撫でる。 「こんなにして、説得力ねえよ」 駒田はそのまま英知のシャツを胸まで捲くり上げ、ズボンのファスナーを下ろしていく。 すでに勃っているため、ファスナーを開ける時に手が触れるだけで、 「あっん」 英知はやらしい声を漏らす。 それに駒田は顔を赤くする。 「ちょっと・・・あんまり反応しないでくれません?照れるんで」 何故か照れる駒田に、英知はもう余裕がなかった。 「だ、だって・・・ひゃあっ」 言いながら、パンツから引っ張り出した英知のモノを擦り始める駒田。 もう先走りでぬるぬるな英知のモノをクチャクチャと擦り、下を全て脱がす。 2人とも裸になり、肌をあわせるとビリビリと痺れる感覚。 どこを触られても気持ちいい。 どうして駒田だったんだ? 「あっあっ」 後ろに挿れられ、揺さぶられ、最高に気持ちよくなる。 「もっと、もっと奥までっ」 「言ったな」 駒田は英知の足を広げ、ぐいっと腰を打ち付けられ、 「ひゃあっ」 そのまま勢いよく打ち付けられ、最後まで果てる。 ベッドの上で完全に力尽きて横たわる英知と駒田。 英知はもう完全に動けない。 駒田はスマホを取り出し、英知の目の前で前回の動画を消去した。 メガネをしていないため視界がボヤケているが、 目を細めてそれを見て、英知はホッとする。 ただ抱かれていた時は動画のことはすっかり忘れていたが。 「これで動画は消しました」 「・・・そうか」 安心して息を吐きながら呟いた。 これでもう、会社以外で会う理由はない。 脱力してベッドに仰向けになる。 「気持ちよかった?」 「・・・ん?」 駒田は仰向けに眠る英知の隣に寝転がり、彼の肩に自分の額をくっつける。 「良かった?」 「・・・まあ」 ホントはめちゃくちゃ気持ちよかった。 どうやら身体の相性は良いようだ。 でもよく男と抱けるなこいつ。 駒田は少しだけ照れた顔を見せ、 「そう・・・ですか」 顔を隠す。 (・・・?) なぜ照れる・・・? 駒田は英知の方は見ずに、 「また、会ってくれませんか?」 「・・・?動画は消しただろう」 「でも、またシたい」 「はあ?」 英知はびっくりして起き上がる。 「お前と会社以外で会うつもりはないぞ」 「えー何で?相性ばっちりだったじゃん」 「嫌だ」 ふいっと顔を背ける英知に、駒田は彼の耳にそっと口を近づけ、 「でも」 英知は駒田に腰を触られビクッと強張らせる。その反応を楽しみながら、 「挿れてる時の麻野さん、すっごくエロいですよ。前から男に抱かれたい願望あったんじゃないんですか?」 「なっ」 「もっと奥まで突いて〜ってねだってくれたり、自分で腰動かしたり」 英知は言われた言葉にドキッとした。 言い当てられて、答えに困った。 確かに男同士のセックス動画を観て、挿れられてみたいと思ってた。 「たっ、確かに・・・興味はあったが、別に相手がお前である必要はない」 「じゃあ知らない男でも探すんですか?そんなの危ないですよ。知らない奴より知ってて気持ちよくしてくれる相手の方がいいでしょ?」 「ぐっ・・・」 確かにそうだ。 「俺なら都合のいいセフレになれると思うなー」 何だか、こちらを上手く載せようとする気満々の駒田に、 「とにかくこれで終わりだ」 と言って、英知は服を着て帰宅した。 もうこいつとは、二度とシない。 そう思ってたのに。 あれ以来、 英知は駒田からの誘いを断っているのに、 結局飲みに行って最後にはホテルに行ってしまう。 そして全身気持ちよくなって。 いつも満たされる。 英知は駒田が嫌いなのに。 なのに。 「何で断れないんだ!!」 英知は頭を抱えた。 毎回毎回断ると思っているのに、 身体は正直で、キスされると触れられると、 いつの間にか夢中になっている。 「麻野さーん、今日飲みに・・・」 「今日は無理」 「えーご飯だけでも・・・」 「何なんだよ、お前は!」 急に大きな声を出す英知。駒田はビックリして動きを止める。 英知はビクついていた。 それに気が付いて、駒田はへらへらしていた顔を曇らせる。 止めたいけど、もう止まらない。 「毎回毎回ご飯だけって、結局俺を抱くだけ抱いて、お前は何がしたいんだ?」 「え・・・」 英知の思い詰めた顔を見て、ただ事じゃないと駒田は感じる。 「俺は・・・もうよく分からい。お前なんて嫌いなのに」 頭を抱える英知。 「嫌いなのに・・・抱かれれば気持ちよくて、何もかもどうでも良くなる」 「それでいいじゃないですか」 「何が良いんだ?俺はセフレは嫌だって言ってるだろ」 駒田は、英知の腕を掴んで、 「麻野さん、怖いの?」 「何が・・・?」 「俺のこと好きになるのが」 「っそんなんじゃない!!」 駒田の手を振り払って、麻野はその場から走って逃げた。 それからしばらく英知は駒田とは話すことはなくなり数日経過した。 「出張ですか?」 急に上司に呼ばれ出張の通達を受ける英知。 うちの部署の女敏腕部長・笹野 涼子は、いつものように気だるい顔をして、 「そ、本当は伊藤を連れて行こうと思ったんだけど・・・」 と、ちらっと駒田を見て、 「他の奴らは新プロジェクトで忙しいし、駒田と行ってきてくれ」 「え」 眉間にしわを寄せる英知に、 「頼んだぞ」 行って部長は会議に行ってしまう。 駒田は英知の横にすっと近寄り、 「仕事でしょ。麻野さん」 「・・・」 英知は逃げ場を失った。 気まずい。 混乱していたとはいえ、 自分の考えを言うだけ言って、 あれから、話をしてはいなかった。 数日後。 電車で2時間程のとある件にある取引先の会社に、英知と駒田は足を運んでいた。 取引は上手く行った。 ほとんどコミュニケーションに慣れている駒田のお陰で。 「・・・オレこなくても良かったのでは」 「何言っているんですか。俺が忘れている部分とかフォローしてくれたじゃないですか」 取引先の会社を出て、歩きながら落ち込む英知に駒田はそういった。 「それにプレゼンに資料足りなくて、麻野さんが用意してくれていたから助かりましたし」 そうプレゼン用の大事な資料を忘れるなんて駒田らしくない。 「念のためいつも用意しているだけだ」 「本当にありがとうございました。一緒にいたのが麻野さんで良かった」 あんなに焦っていた駒田を見たのは初めてだった。 「とにかく上手く行って良かったな」 そう小さく笑いこちらの肩を軽くポンポンと叩く英知。 駒田は嬉しくて胸がいっぱいになる。 英知は気を使っているのはいないのか、 「さ、飯でも行くか」 「・・・はい」 駒田もホッとして歩き出した。 その夜。 駅の近くのホテルに戻り2人は、上司への報告を終え一息ついていた。 「はあ・・・」 英知はホテルのシャワー後にバタッとベッドに横たわった。 今、駒田は入れ替わりでシャワーを浴びている。 2人で同じ部屋に泊まるのはあの日以来だ。 今は仕事として来ているのに、一緒に泊まる事が何だか不思議に思う。 嫌だ嫌だと言いながらも、抱かれた時のことを寝るたびに思い出す。 どうしてこんなに思い出すんだ。 駒田が英知に触れる時、甘くて熱くて・・・ 思い出すと自然に手が自分の股間に伸びていて、すでに硬くなっているモノを 自分で擦り、後ろに指を入れていく。 「っあ・・・」 駒田のモノを挿れられた時を思い出す。 もっと奥のイイ所まで届いて、これ以上無いくらい気持ちよくて・・・ 英知は、はっとして顔を横にブンブンと振る。 自分でシているのを止めて、 (違う違う、これは仕事だ) 「何一人で百面相しているんですか?」 するとそこにはシャワーからあがった駒田がいた。 英知と同じくホテルのナイトウェアを着ている。 ワンピースのような一枚仕立てだが。 駒田はきょとんとして、ホテルに来る前に買っておいたペットボトルの水をグイッと飲む。 「・・・何でもないよ、おやすみ」 英知はそれ以上何も言わずに布団を被って横になった。 「・・・」 駒田は英知の隣のベッドに座り、水を飲みつつ横たわる彼を見つめる。 「麻野さん」 「・・・ん?」 英知は眠そうに相槌を打つ、 「久しぶりですね。一緒に寝るの」 「ん〜?・・・はあっ!?」 がばっと起きる英知。 駒田はにこっと笑みを浮かべ、 「先月以来ですね」 「っ知らん!」 再び、がばっと布団をかぶる英知。 (何を言い出すんだこいつは・・・!) 一度セックスした2人が、仕事とはいえ一緒に泊まっている。 ギシッ・・・ 駒田が英知のベッドに近づいてくる。 「麻野さん」 小さく囁く駒田。英知の耳元で、 「俺のこと意識してるくせに」 「し、してない」 「俺は昨日から意識してたけど?まあ、意識しすぎて資料忘れてきたけど」 駒田はゆっくりと英知の身体を布団の上から撫でていく。肩からゆっくり背中と・・・ 触れられて所から、身体が熱くなっていく。 ここに逃げ場はない。 英知はグッと駒田の腕を止める。 「い、嫌だって・・・」 「ほんとに?」 「俺は、お前なんて嫌いだ」 「別に嫌いでも良いけどさ、気持ちよさとは別に考えればいいよ」 「え・・・」 駒田は英知を背中から抱きしめ、 ナイトウェアの胸あたらりのボタンを外し、胸をさわっていく。 「んっ、嫌だってっ」 英知はすぐさま反応する。乳首をいじられどんどん勃っていく。 さっき自分で触っていたせいで、感度がいい。 口では嫌だって言っているのに、 身体は拒否できない。 「ああっ・・・はっ」 駒田は英知の耳にキスをしながら、 片手で乳首をイジりながら下に手を滑らせていく。 英知の身体はこれ以上ないくらい素直に反応する。 ほんとうは触って欲しい。 ほんとうは触ってほしかった。 夜になると思い出して身体が疼いて、毎晩自分でシていた。 駒田といると、身体が反応してしまう。 「いやなら、ちゃんと拒否して・・・」 「・・こっち向け」 英知は駒田の方に顔を向けキスをする。 駒田も紅潮していた。彼の身体も熱くなっている。 ナイトウェアの前を開け、パンツを脱ぎ捨てる。 さっきまで自分で触っていた事に気が付いたが知らないふりをして、 駒田はあらわになった肌を、英知の肌に擦り合わせ下も触っていく。 英知の後ろに指を入れ、良いトロコをさがしていく。 指がすんなり入り、駒田は英知を見て、 「自分で触ってたんですか?もう柔らかい。簡単に指入っていくよ」 「っ知らん」 駒田は英知を仰向けにして足を広げ、一気に挿入していく。 ググッ・・・ 「んあああっ」 「くっ・・・はあっ、気持ちいい」 駒田の熱のこもった声を聞いて、英知は興奮していく。 久しぶりに触れて挿れて、もう訳がわからない。 英知は駒田の首に腕を回し、もっと深く深くキスしていく。 もっと強く抱きしめて奥まで突いてほしい。 「もっと、もっと奥まで突いてぇ」 ねだられ、駒田はさらに奥まで挿れて打ち込んでいく。 腰をゆるゆる動かしながら、駒田は英知の手を取って、 「あんたとこうしてるの好きだよ」 その手の甲にキスをして手のひら、腕へとキスしていく。 その行動にドキッとする英知。 今までとは違う駒田の優しい行為に戸惑う。 (俺はこいつが嫌いだ) 気持ちよさに、もう何も考えられない。 どうして駒田とこうしていると、気持ちいいんだろう。 (嫌いなのに・・・) 「あんたは俺のこと好き・・・?」 耳元で囁かれて、英知はイッて寝落ちする。 (俺は・・・) そのすぐに駒田もイッてベッドに横たわる。 気を失っている英知を見つめ、 駒田は自分の気持ちをはっきり自覚する。 翌日 英知は隣で寝てる駒田の寝顔を見つめ、昨日の事を思い出す。 久しぶりに抱かれて、何だか心が満たされていた。 自分はずっとこうしたかった事に気が付いた。 駒田もそうだと思う。 『俺のこと好き?』 嫌いだってば。 英知は恥ずかしくなり、布団の中に顔を埋める。 でも、相手は会社の同僚。 男同士で付き合ってもいいのだろうか? などと、考えを巡らせてると、 布団の上からぎゅっと抱きしめられる。 「何潜ってんの」 気だるげに、優しく声掛けられる。 明らかに優しい声に英知はドキッとした。 こんな甘い関係になるなんて恥ずかしすぎる。 駒田はそっと、 「顔出してよ英知さん。じゃないとキスできない」 「えぇ」 小さく呟く英知の声に駒田はふっと笑う。 (そんな事言われたら、顔だしにくいじゃないか) 「俺はお前のことが嫌いだ」 英知はそっと布団から顔を出した。 駒田は優しく笑っている。 ゆっくりと英知に甘咬みするようにキスする駒田。 英知は黙ってそれに答える。 「でも、お前の・・・キスは好きだ」 「えぇええ、なにそれぇ!?」 駒田はばったりとベッドにうつ伏せる。 英知は答えを濁したまま、シャワーを浴びにいった。 あれからはっきりしないまま、数日が経つ。 「駒田くん」 呼び止められ振り返ると、そこには先日の出張にいくはずだった伊藤 春男がいた。 伊藤は駒田の前に来て、 「こないだは代わりに出張に行ってくれてありがとう」 「別に気にないでください。いい仕事が出来ました」 あたり触りのない返事を返して、駒田は振り返りその場を去ろうとすると、 「ち、ちょっとまって!」 伊藤は駒田を引き止める。 「?何ですか?」 疑問符を浮かべる駒田に、伊藤は気まずい顔をして、 「ちょっと話しない?」 「?」 「こないだの出張って、麻野センパイと行ったんでしょ?」 もう人気のないオフィスで、話を始める伊藤。 「そうですけど」 駒田が答えると、伊藤は少しだけ照れて、 「麻野さんって、その・・・素敵ですよね」 「・・・は?はい。まあそうですね」 伊藤が何をいいたいのかよく分からず、駒田は答える。 「俺実は麻野さんの事、良いなと思ってて。最近駒田仲いいだろ?」 そういうことか・・・。 駒田はジッと伊藤を見る。 伊藤はいい男だ。よく失敗はするが真っ直ぐな所を部長には買われている。 「良かったら紹介してくれないかな」 そう言われて、 駒田の気持ちははっきりしていた。 「それは無理ですね」 「え?」 「紹介するのは無理」 「どうして?」 伊藤に尋ねられ、 「俺が麻野さんの事独り占めしたいから」 真っ直ぐな目ではっきりいった。 自分でも恥ずかしいことを言っている。 その自覚はあった。 でも、英知が誰かと仲良くするのも付き合うのも、見てるのは無理だった。 好きだから。 伊藤は何かピンときたのか、 「なるほどね」 ニヤニヤして駒田を見て、 「俺が言ったのは、センパイとして紹介して欲しかったんだけど・・・駒田の考えてることとあってる?」 「え・・・?」 駒田はきょとんとする。 そしてニヤニヤする伊藤に、はっとして、 一気に赤くなる。 「もっもちろんだろ!センパイとして独り占めしたんだよ」 「そうは聞こえなかったけどな〜」 意味深な言い方をする伊藤。 「麻野さんの全てを独り占めしたいように聞こえたけど」 「ち、違います・・・」 駒田は両手で顔を押さえて、しまったという態度を取る。 伊藤は駒田の背後に目をやり、 「でも麻野さんも同じ顔しているけど」 「へ?」 促され、駒田は振り返るとそこには英知が真っ赤になって顔を押さえていた。 それを見て、ぎくっとする駒田。 ぎこちない2人を見つめ、伊藤は席を立った。 「お疲れ様でした〜」 伊藤が帰って言って、 きごちない2人だけが残された。 「・・・いつからいたんですか」 英知から目をそらして駒田は訪ねた。 「ほとんど最初から」 「・・・」 駒田は完全に頭を抱えた。 でも、嘘は言ってない。 「聞いてたなら、説明する必要ないですね」 駒田は英知の方を向いて、椅子に座ったまま彼の手を取り、 「さっきいったのは本心です。あなたを誰にも渡したくない」 言って英知の手にキスをした。 「好きです英知さん。セフレじゃなくて、俺と付き合って」 真っ直ぐこちらを見て告白する駒田を英知は、カッコいいと思った。 英知の中でも気持ちがしっくりする。 駒田とセックスして何故気持ちいいのか。 英知は彼のことが好きだからだ。 心を奪われているから。 英知は椅子に座ったままの駒田の顔を引き寄せ、 チュッと、キスをして。 「俺は・・・セフレは嫌だ」 その言葉に、駒田は嬉しそうに英知を見上げ、 「それって、俺と付き合ってくれるってこと?」 「それは・・・ん」 彼の言葉を遮るように駒田は英知の唇を奪う。 吸い込むようにキスして、 「っここ会社!」 英知は口を話した途端に声を上げた。 「すみません。・・・嬉しくて」 そういう駒田の顔は夢の中にいるみたいに、ぼうっとしていた。 「続きは、お前の家が良い」 そう言って照れる英知の顔を見て、駒田はすぐに英知を家に連れて行った。 家に到着するなり、駒田は英知を抱き寄せ深く深くキスしていく。 「んっむう」 英知の気持ちよさそうな息遣いを耳にして、駒田は満足する。 もっと素直に気持ちよくなる英知を堪能したい。 「ま、まって靴・・・」 再び口を塞がれ英知は気持ちよくさせられる。 キスだけで全身が痺れる感覚を覚える。 玄関で壁に迫られシャツの後ろに手を入れられ、背中を撫でられ気持ちよくなる。 そのままズボンを降ろされ、駒田は英知の後ろに自分の硬くなったモノを押し付ける。 「もう挿れたい。挿れて良い?」 「ん」 うなずく英知を確認するとすぐに英知の後ろに指を入れて解し、すぐに挿入していく。 「ああっん」 英知の甘い声を聞いてたまらなくなり、バチュバチュとやらしい音を立てて腰を打ち付ける。 「はあっ」 「あああっ」 英知と駒田は同時にイッて玄関で力尽きる。 昨日、あれからベッドに移動して、もう2回シて最近では1番眠れた。 駒田は英知の寝顔を見つめ、まだ夢の中にいるような気持ちでいた。 会社に来ても夢心地のまま会社のエレベーター前で英知を見つける。 「おはようございます。英知さん」 声掛けられ、英知はちょっとだけ顔をこちらに向ける。 「・・・おはよう」 お互いが照れくさくて、距離の取り方に困る。 「あの、身体大丈夫ですか?」 「・・・別に」 照れながらメガネをくいっと動かす。 かわいい。 駒田は英知の隣に寄り、 「昨日も英知さん可愛くて・・・止められなかったから」 「ばっ馬鹿!」 真っ赤になる英知の反応に駒田は嬉しくなる。 「おはようございまーす。麻野さん、駒田さん」 伊藤が後ろから2人に声掛けてきた。 「朝から仲いいですね」 その言葉に照れる英知と、嬉しそうな駒田。 「伊藤、先に行くぞ」 女部長が伊藤を呼ぶ。 「呼ばれから、行くな」 駒田に声かける伊藤。 ふと、立ち止まり、 英知と駒田の2人にしか聞こえない小声で、 「2人の邪魔はもうしないんで」 「ちょ何言って」 英知は声を上げるが、伊藤はふふっと笑い、 「おれ、部長にアプローチしてるんで」 『え』 それだけ言って、伊藤は部長の方に走っていった。 「あいつ強いな」 「ですね」 あの敏腕女部長に言い寄るなんて相当の大物でなければ無理だ。 その日の夜。 「麻野さーん、帰りませんか」 英知のデスクに寄ってくる駒田。 ちょうどデスクを片付けている英知。 「もう帰るよ。19時まではさすがに疲れたー」 「来週からは少し落ち着きますし、これからご飯でも」 英知はジッと駒田を見て、ふと顔を背け、 「・・・今日は帰る」 「え、何で週末ですよ?」 心の底から残念がる駒田。 オフィスはもう人気はない。 英知はカバンを持ってオフィスの電気を消す。 2人で廊下を歩きながら、 「ねえ行きましょうよ。英知さんてば」 「お前な・・・あ、部長に資料渡すの忘れた」 英知は引き返し、奥の部長室に向かう。 「ねえ英知さんてば」 「しつこいって」 英知は半ば呆れて駒田を見る。 駒田は諦めないという意志を感じる。 一緒にいたいのだろう。 その強引さに少し照れる。 部長室に近づくと、 ガタタッ 部長室の中から物音がする。 部屋の隙間から光が漏れている。 何やら小さな話し声が聞こえて、英知と駒田は顔を見合わせる。 「あっ」 何やらヤラシイ喘ぎ声が聞こえる。 そっと覗くと・・・ 「んっああっ、あん」 今まで聞いたことのない女部長の喘ぎ声と、部長室のデスクの上で服が乱れた部長に挿入する瞬間の伊藤の姿。 そのまま伊藤は腰を動かし、バチュバチュとやらしい音を立てて腰を打ち付ける。 「あっあっ気持ちいいっ、伊藤もっと奥」 「はいはい」 慣れた手付きで腰を揺らす伊藤。 会社でヤるなよ。 「え、やばっ」 「しっ」 駒田が思わず声を出して、英知は慌てて彼の口を塞ぎ壁に隠れる。 部屋の奥から、 「誰だ」 いつもの部長の声が聞こえる。 部屋の中を見ずに、 「あ、麻野です。お取り込み中の所すみません。資料を渡すの忘れて・・・」 「そうか、入り口に置いて置いてくれ」 「は、はい」 部屋の中は見ずに、部屋の入口にそっと資料を置いて、 「お、お疲れ様でした」 「ああ、ありがとう、お疲れ」 英知はそっと部屋のドアを締めた。 「もう動きますよ!」 「ああん!」 すぐさま、部長室の中から2人が動く音と部長の喘ぎ声が聞こえて、 2人は慌ててオフィスを出た。 会社の外に出て、英知と駒田はハアッと息をついた。 「会社でヤるなよな・・・」 「伊藤が部長を狙ってるって、本当だったんですね」 「・・・だな」 うなだれる英知を見つめ、 「で、どうします?」 「?なにが」 「だから・・・」 駒田は英知をじっと見つめ、 「あんな場面見て、シたくなってませんか?」 「?・・・・!!」 最初はピンと来ていなかった英知はふと、何かに気が付き赤くなる。 「というか俺がシたい」 と、英知の腰を引き寄せる駒田。 じっと見つめられ、 英知は動けなくなる。 この視線に弱い自分に気が付いた。 「・・・飯だけだぞ」 「やったー」 駒田は喜び英知の後ろを付いていく。 週末で店がどこも混んでいて、仕方なく英知は自分の家に駒田を呼んだ。 英知は、駒田の事を好きだとまだ言っていない。 もしさっきの会社での場面が、駒田と他の人との場面だったら、 きっと嫌だった。 彼が他の誰かとシてる所を想像するだけで、おかしくなりそうだ。 英知は自分が駒田の事が好きだと、今はっきり分かった。 でも、好きだと口に出す事は勇気がいった。 駒田は英知が作ったつまみを、美味しい美味しいとビールを飲みながら嬉しそうに話す。 それを眺めるだけでも、英知は嬉しかった。 「英知さん料理上手ですね」 「一人暮らしが長いからな。自分が食べる程度だよ」 「俺カレーしか作れない」 「ふっ」 「でもめっちゃ美味いですよ」 何故か得意げに話す駒田に、英知は可愛さも感じる。 食事の後、駒田が片付けてくれて、 テレビを見ながら座っている。 駒田はスマホの時計を見ながら、 「いけね、もうこんな時間だ。遅くまですみませ・・・」 という駒田の前に、英知はスウェットの上下を差し出す。 「え?」 「金曜だ。・・・ゆっくりしていけ」 気恥ずかしそうに着替えを渡す英知の態度に、駒田は面食らったような顔をしている。 スウェットのサイズが、明らかに英知のサイズとは1サイズ違う。 駒田は自分のために用意してくれた事を感づいた。 「泊まって・・・いいんですか?」 「・・・ああ」 駒田はスウェットを持つ英知の手を掴んで、 「下心ありますけど」 「・・・知ってる」 知ってる? 知ってて泊まっていいの? 「抱いていいってこと?ちゃんと拒否してくれないと、俺」 そう言いかけた駒田の口を英知はキスで塞ぐ。 「んん」 英知は積極的に、駒田の上に乗って彼の首に腕を回す。 時に柔らかく、時に口の中で舌を絡ませる。 駒田は熱っぽく自分を見つめる英知の顔を撫で、 「本当にいいの?」 「・・・さっき会社でシてたのが、駒田と他の誰かだったら嫌だと思った。 お前のこと誰にも渡したくない。・・・・・・・・・・・・す、好きだから」 遠慮がちにでも、はっきりと英知は駒田に返事をした。 駒田は優しく英知の額、鼻筋にキスしていく。 「嬉しい、英知さん。俺も誰にも渡したくないし、触らせたくない」 そう言って口にキスをして、首筋、肩甲骨と、ゆっくり全身にキスしていく。 駒田は英知のシャツを脱がして、乳首を吸い舌で転がして弄ぶ。 「好き」 駒田は英知をソファに寝かせ彼の腹筋にキスをして、そのままズボンを脱がせ自分の口を英知の股間に近づける。 英知は自分をじっと見つめる駒田を見て、カッと赤くなる。 「は、恥ずかしい・・・」 「何言ってるんですか」 駒田は英知の顕になったモノを咥えチュパチュパと吸う。 「あっあああ」 同時に後ろに指を挿れていく。 フェラでイカせたい衝動を抑え咥えていた口を外す駒田。 「はあっん」 「これからもっと恥ずかしいことするんですよ」 駒田は英知の後ろを指でほぐし、足の付根にキスをする。英知は彼に触れられた全てが気持ちよくて、あっあっとその度に声を漏らす。その可愛い声に嬉しくなり、駒田は英知の太腿の内側にキスをして、 「動くよ」 ぐんっ 「っあああ!!」 勢いよく奥まで挿れ、抜き差しを繰り返し、そのあとはゆっくり抜き差しする。 すぐに終わらないようにゆっくりと。 「あっん・・・やあっあっあっ」 「はあっ」 触れた所も熱も、英知の喘ぎ声も、熱い視線も、 全てが愛おしくてたまらない。 「英知さん、好き」 奥まで挿れて、 「ずっと、好きだった」 駒田の目からは涙が流れている。 「触れられるだけで、夢みたい」 英知は彼の頬を伝う涙を優しく拭う。 「夢じゃないから、もう泣くな」 優しく頬笑みキスをした。 朝まで何度も触れ合い、一緒にベッドに眠った。 ベッドの上で英知は、隣で寝ている駒田の顔をじっと見つめそっと前髪に触れる。 こないだまで嫌いな男だったのに。 好きになってしまった。 昨日のセックスを思い出し、また赤くなる。 英知は駒田の身体に寄り添い、彼の肩に顔をくっつける。 「・・・おはよう」 駒田は目を覚まして英知の額にキスをする。 英知は駒田の口にチュッとキスをする。 「おはよう・・・一生」 「名前で呼ぶとか・・・やば」 下の名前を呼ばれ、布団に顔を埋める駒田。 英知はそんな駒田を、枕に肘をついて見つめ、 「しかしまあ・・・人生って何が起こるか分からないな」 「何で・・・?」 枕に顔を埋めたまま尋ねると、 「このあいだまで、嫌いな男だったのにな」 その言葉にピクッと動き、 「今は?」 「・・・」 返事がないので、駒田は顔を枕から上げ、英知の様子を伺う。 英知は無言で駒田に背中を向けていた。 その彼の背中を後ろから抱きしめ、英知の頬にキスをする。 「ねえ、今は?」 「しつこいな!嫌いになるぞ!」 照れた英知の可愛さにたまらず、ニヤける駒田。 くいっと英知の顔を自分の方に向け、 「好きって言うまで、抱いていやる」 「っちょっと!」 英知はこのあと、朝からしつこいくらい抱かれて気持ちよくなり、 好きと言わされるのだった。 ーーーーエピローグ あれから半年。 女部長と伊藤は順調な付き合いを続けているようだ。 ただし会社には秘密にしているらしいが、 伊藤は来年プロポーズする予定だと、英知たちにこっそり教えてくれた。 英知たちもまた、順調な付き合いを続けていた。 「ただいまー」 英知は自分の家にそう言いながら入っていく。 「おかえりー、英知さん」 中から返事してくれたのは駒田。 先に仕事が終わり、英知の家で夕食の用意をしてくれたのだ。 「カレーか」 「シーフードカレー♪」 前に言っていた通り、駒田はカレーしか作れなかったが言うだけあって、 すごく美味しかった。 この半年で何度か種類の違うカレーを作ってくれた。 駒田の家にはカレーを作る様な大きな鍋がないため、 自然に英知の家で作る流れになっていた。 それを理由に自然に合鍵を渡した。 きっかけがなければ自分からは無理だったが。 「美味しいな」 「んふっふっ」 褒められて自慢気になる駒田。 今日のカレーも美味しい。 カレーをきっかけに、最近は英知に教わって簡単なものなら作れるようになった。 不思議なものだ。 嫌いだと思っていた駒田と、たった一年で家で一緒にカレーを食べる仲になるなんて。 嫌いだと思ってたのも、まあある意味意識しての事だろうが。 社交的な駒田が羨ましかったのかも知れない。 後片付けをする英知の後ろ姿を眺めて、駒田は英知を後ろから抱きしめる。 「なんだよもう少しで終わるから」 「んー」 駒田はただくっついて離れない。 それをいつもの事と気にせず食器のあと片付けをする英知。 だが駒田は知っている。 平気な顔をしているが英知は照れている。 でもけして嫌がらない。 自分に心を許してくれているのが、駒田は嬉しかった。 「終わったぞ・・・おわっ!」 言うな否や、駒田は英知を背後から抱っこしてソファに連れて行く。 ドシッとソファに押し倒され、ゆっくりキスをする。 チュッチュッと優しいキスをされ、英知は赤くなる。 この初々しさはずっと持って欲しいと希望を持ちながら、顔を背ける英知をみて、 「なんですか?」 「キスは・・・歯磨いてから」 「何で?」 「・・・カレー食べたし」 付き合いたてかよ。あー、可愛い。 「どうせ同じ味でしょうが」 「そうだけど」 そうだけどって、マジかわいい。 口を開けて、舌を絡ませる英知駒田はそれに答える。 「んん」 深く深くキスして、口を放すと、 英知はポヤッとした顔をする。それを見て、 「かわいいなぁ、もう」 「心の声が漏れてるぞ、一生」 英知はいつも駒田が心の中で英知のことを可愛いと思っている事を知っていた それはなぜか・・・ 『・・・かわいい、英知さん』 と、寝言をほとんど毎日言うからだ。 それを聞いて、英知は照れる。 でも嬉しくて寝言の度に、眠る駒田にキスをして再び眠るのだった。 この寝言を知っているのは、 英知だけの秘密だ。 終。

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