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 さて。夕食を終えれば、あとは入浴と準備を整え眠るだけである。  使い方がわからないシャワールームの使い方を教えるため、初日の今日だけはジェゾと一緒に入ることになった。  ジェゾから貰った服を脱ぎ、細かい柄が描かれたタイル張りの浴室へ入る。浴槽が見当たらないが、綺麗で広い。 「イッサイ」 「あぁ。……お、おぉう」  全裸でぼうっと立っていると、同じく服を脱いで毛皮姿になったジェゾが背後からヒョイと一斉を抱き上げた。  もう慣れたのでそこには驚かない。  ただ体に似合う逞しいアレについ視線がいってしまい、目を見開いた。  獣らしくモフモフの毛皮の中に収納されていようと、存在を主張するモノ。  モンスターだ。  モンスターがいる。  二メートル超えの巨体に似合いの人外のブツ。平常時で手の大きな自分が丸を作ったくらいには太い。  皮の表面にシリコンのような凹凸があった。トゲではないので触れても痛くないだろうが、人間にはないオプションである。  大半は白い毛皮に包まれているが皮ごとしなだれチラリと覗く浅黒い一物は白によく映える。目が離せない。 「特権階級ハンターって、すげぇな」 「は?」  これが流行りのニンスタ映えか。  もちろんニンスタ未履修の一斉は、そっと人生初のイイネを押した。  イイネを受信できなかったジェゾは木でできた小上がりにドスン、と腰掛けて首を傾げる。そりゃあマジマジと股間を見つめられれば不思議にも思うだろう。  一斉はさりげなく内股になる。  足の間で横抱きにされると、尻にモンスターがフニフニと当たるのだ。  平均より羞恥心がだいぶ控えめな一斉は勲章のあれこれを気にしたことはないものの、流石にこうくっついていると意識した。あと、裸で毛皮に乗ると擽ったい。  ジェゾは特に気にしていないのか、むしろなにをコソコソ隠し立てしているのだと目ざとく気づかれ唸られた。  獣人は全身が毛皮で覆われているため基本的に露出が多く、局部に触れられることへの忌避感が薄いのだろう。  裸を見られる羞恥も皆無。一斉だけが無防備である。  訝しげに重ねて尋ねるジェゾに、一斉はなんでもないと知らんぷりした。 「……まぁいい。これは白スライムの消化液だ。害はなく汚れだけを消化する」 「スライム?」 「そうだ。これで全身を洗えば清潔になるぞ」 「っ、つめて」  陶器のビンから半透明のジェルを手に掬ったジェゾは、ジェルを一斉の体にたっぷりと塗り込んだ。  ヒヤリとした粘液に、一瞬ビク、と肩を跳ねさせ身を固くする。  なんだかローションに似ている。  人生経験上よくお世話になっていたので第一に浮かんだ。アレは割と扱いにくい。 「これ……こんなにドロドロ、塗るもんなのかよ……」 「お主は森に捨てられておったから多分に、だ。遠慮せずともよい。スライム製品は安価なもの故、好きなだけ使え」 「あぁ……」  複雑な心境はうまく伝えられず、ジェゾが太っ腹だとわかっただけだった。  毛に覆われた肉球が柔らかなアカスリのようになでると、ヌルヌルと滑るジェルが頭から足の先までを隅々まで清めていく。  ジェゾの手つきは丁寧で心地いい。  心地いいから困ることもあり、一斉は迂闊に身動きが取れなかった。  流石に股間を躊躇なく揉み洗われた時はビクッ、と大きく震えたが、本能は気合いで抑え込む。  でなきゃ暴れそうだ。  ローション風味のスライムで擦られて邪な行為を意識するなんて。  一斉はまだ若く旺盛な男で、不特定多数と酷いプレイでなければ、まぁそういったコトがお好きなタイプなのである。ちなみにジェゾは好みドストライク。察してほしい。 (落ち着けよ、バカ頭……飼い主に発情するネコはいねぇぜ……) 「ふー……バッチコイ」 「なにがだ」 「なんでもねー」  すっかり腑抜けてアホ丸出しな思考をする自分をギチギチと戒め無の境地に至る一斉に、首を傾げるジェゾ。  見よこの虚無顔を。  まさかジェゾのモンスターとガチムチモフモフな巨体にムラムラしているとは誰も思うまい。

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