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第3話
なんだか、懐かしい匂いがする。
昔、お祖母さんの家で嗅いだ、畳と、お線香と、お味噌汁の匂いだ。
「う〜ん……?」
頭がガンガンする。目を無理矢理にこじ開けると、そこには鏡があって、目を閉じた自分が映っていた。
「え……?」
違う。鏡じゃない。俺にそっくりな金髪の男が、気持ちよさそうに寝息を立てている。
虎柄のイカついボクサーパンツ一丁で。
「は?…え…っ、なんで?」
しかも、俺自身もパンツ一丁だった。
黒のカルバンクラインで、一番気に入っているやつだ。
「なっ……何で裸……」
俺は慌てて布団を引っ張り、乙女のように体を隠した。
その時、後ろの襖がスーッと開いた。
「あれ!起きたの!」
お盆にコップを乗せたお婆さんが、優しげに微笑んでいた。
毎週日曜日の夜に放送しているアニメに登場しそうな、懐かしいフォルムの割烹着を着ている。
「これ、お水だからね。あと胃薬も。
何か食べる?お腹すいた?」
謎のお婆さんは優しく笑いながら、枕元にお盆を置いた。
「あっ……すみません……。
あの……僕は何で、ここに……」
「え? ああ……それは、ヘイジがね。」
「ヘイジ?」
「あんたの隣で素っ裸で寝てる阿呆よ。」
「はあ……」
「それにしても……あんたたち本当にソックリね!生き別れの双子みたい……歳は違うみたいだけど」
「はい……」
弱々しく返事をしていると、後ろで寝ている兵士が、寝返りを打った。
俺よりも数倍筋肉質な背中が目に入り、思わず目を逸らしてしまった。
「こら!! あんたいつまで寝てんの!
もう昼だよ!!今日は現場行かなくていいの?」
お婆さんは兵士の尻を思いっきり叩いた。
ペシンと気持ちの良い音がして、兵士が呻き声を上げた。
「今日は休みなんだよ〜。寝かしてくれ〜。」
「寝るのはいいけど、この子どうすんの!
あんたが拾ってきたんでしょ!」
「……んあ?」
兵士が起き上がって、俺の方を見た。
本当に鏡を見てるみたいだ。
髪色以外全て同じ。
耳の形も、鼻筋も、太めの眉毛も、目の位置も。
クローン人間がいたら、こういう感じなのだろうか。
「はよっす。王子様。」
すりガラスの窓から入る太陽の光が、兵士の金髪を一際キラキラさせていた。
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