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後日談③
温泉を楽しみ、お茶を飲んでいると、廉が売店に行ってくる! と言って浅田と連れ立って部屋を出ていった。
すると神宮寺は直生の隣へ来ると、抱きしめ、キスをする。
「んっ……ダメ……。廉がいつ帰ってくるか……。んっ。それに、んぅ。あぁ……ほ、まれ……さん。隣にだって」
「声出さなければ大丈夫だ」
「そ……んな」
神宮寺は番になった頃から愛情は一切変わらないが、二人の間で変わったことがある。それは触れることだ。
運命の番だったため、番になる前は触れるだけでヒートを起こしていたのに、廉を妊娠してからはそういうことがなくなった。だから、普通に相手に触れることができるようになったのだ。番になる前はまともに触れることができなかったので、どうなるのか、と思っていたがその心配は不要だったようだ。
とは言え、それとこれは別である。直生が抵抗をしても神宮寺はキスをやめようとしない。廉と浅田が一緒に出ていったにしても、まだ奥には友野がいるのだ。二人きりなわけではない。
「直生、ここに乗れ」
そう言って神宮寺が自分の膝を叩く。膝の上に座れということだ。直生は恥ずかしがりながらも神宮寺の方を向いて座る。そんな直生に神宮寺は満足そうに笑い、そしてまたくちづける。はじめは触れるだけのバードキスから、角度を変えてどんどんと深いキスへと変わっていく。
ぴちゃ、という水音が直生の耳を犯す。
「ン……ほ、まれ……さん。ダメ……。んっ。これ以上は、ふっ。ん……うぅ。ダメ」
「なんでだ」
「声……出ちゃ、う」
「友野に聞かせてやればいい」
「そんなの……できる、わけ……ない」
直生は拒否の言葉を言っているが、本当に嫌がっているわけではない。それがわかっているから神宮寺はやめないのだ。
神宮寺と直生の口を透明な糸が結びつけている。それが直生の目に入り、羞恥心がさらに増す。神宮寺が笑いながら、再度深くキスをしようとしたところで、廉の声が聞こえてくる。廉と浅田が帰ってきたようだ。
声が聞こえると直生は、パッと神宮寺の膝から降り、隣に座る。
「お父さん! お母さん! おやつ買ってきた!」
その声とともに廉が部屋に入ってくる。
「お母さん、顔赤いけど大丈夫?」
「え? 赤い?」
「うん。ちょっと赤い」
廉が少し心配そうに眉を寄せるのを見て直生は慌てる。
「さっき温泉入ったからだよ、きっと」
「そう? 体調悪いとかじゃなくて?」
「違うよ。大丈夫」
直生は言い訳をしながら、神宮寺を睨む。そして、その視線を受け取り神宮寺がクツクツと笑う。
「お父さん、どうしたの?」
「いや、なんでもない」
「お母さんもお父さんも変なの。あ、ねぇ、おやつ食べようよ」
廉は直生と神宮寺の様子に少し首をかしげたが、すぐにおやつに意識が戻ったようだ。
浅田にお茶を淹れて貰い、廉が売店で買ってきたという温泉饅頭を食べる。部屋に置いてあった温泉饅頭が美味しくて、もっと食べたくて売店に行ったんだ、と廉は笑う。
二週間前の廉からの母の日のプレゼントと、神宮寺からのこの贅沢な温泉旅行。これだけのことをして貰ったのだから、その分お返しをしなくてはいけない。
直生は自分ができることはなんだろう、と考えるが背伸びをしても長続きしない、と思い当たり、今まで通り自分らしくいればいいのかもしれないと思う。
しかし、幸せを感じるたびに神宮寺と番となって、結婚して本当に良かったと思う。
いつまでもこの幸せが続きますように……。
E N D
◇◇◇◇◇
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
次作は学園物になります。
よろしければ、そちらもお読み頂けたら幸いです。
またお会いできますように……
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