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46 天使のように穢れなく可愛い

 何度も何度も唇を重ねた。やめられなかった。 「好きだよ、天音」 「……ん……っ、と……ま……」    天音の熱っぽい瞳、俺のスーツを握る震える手、そして今まで以上に可愛い甘い吐息に、俺の心臓はもはや爆発してた。  心臓痛てぇ……。苦しい……。 「天音、お前が俺を好きって……ほんとに夢じゃねぇよな?」  今までどうやって好かれたらいいのかと悩んでいたレベルだったから、これは夢じゃなのかとまだ不安になる。 「……好き…………」  天音が泣きながら唇を震わせた。  「とぉま、好き……っ、ぅ゙ぅー……好きぃ……っ」 「天音」  たまらなくなって天音をきつく抱きしめた。  いつか俺を好きになってくれる日が来てほしいとずっと願っていたのに、もうとっくに天音は俺を好きだった。  大好きって瞳で伝えられる好きの言葉に、心が震えて身体中が燃えたぎる。  天音が背中に腕を回してぎゅっと俺を抱きしめてきた。こんなに強く抱きしめられたのは初めてだ。 「と……ま……」  俺の腕の中で泣きながら震える天音が、死ぬほど可愛くて心臓がさらに壊れた。 「はぁ……。なんでお前、そんな可愛いんだよ……ほんと」 「とぉま……好き……」 「やばいな……。もう俺、幸せすぎて死んじゃうかも」 「……やだ」 「ふはっ、かわい」  今までの天音の『やだ』とはまるで違う、甘えたような可愛い『やだ』に悶絶しそうになる。  俺は天音の唇に何度もキスを繰り返した。 「とぉ……ま」 「ん?」 「おれ……」 「うん、なに?」 「冬磨の知ってる俺じゃ……なくても……本当に……」  不安そうに瞳をゆらして天音が俺を見つめる。 「ビッチ天音じゃ、なくても……本当に……いいの?」 「それ、何度聞いても可愛いんだけど。ビッチ天音って」  本当に可愛すぎるだろ。  表情がまるで違う。少しも強がっていない、ゆるんだ柔らかい表情。ここに天使がいる。本当に天使のように穢れなく可愛いと思った。 「ん……」  唇に音を立てて何度もキスを落とし、そのたびまた天音が震える。  可愛くて嬉しくて幸せで、笑みがこぼれっぱなしで仕方なかった。   「本当の天音も知ってるよ」 「え……っ」 「ポトフ食ってるときの天音、あれ素だろ?」  びっくりした顔で天音がぐっと息を呑んだ。 「あとお前、俺の前では笑わないようにしてたろ? だから笑った天音も本当の天音。俺が、可愛くて悶絶したときの天音は全部本当の天音」  思い出すだけでほんと可愛い。 「線香上げたときに長ぇあいさつしたのも本当の天音。俺の前では泣いていいよって言ったのも。結局、ビッチの演技してる天音だって全部本当の天音だろ? 俺は天音の全部が好きだよ」 「とぉ、ま……」 「だから、もうビッチ天音は封印。な?」  そう伝えると、天音は嗚咽を漏らしながら可愛く顔をゆがませて、涙をボロボロとこぼした。  もうこれからはずっと天使のように可愛い天音なんだな。まだ夢みたいだ。  俺なんかにお前はもったいないと分かっていても、もう二度と手放したくない。  いつまでも止まらない天音の涙を指で拭いながら、俺は優しく微笑んだ。 「んで、なんでいつも抱かれながら泣いてたんだ? 身体の震えもさ。トラウマじゃないなら、なんで?」 「……し……」 「し?」 「幸せ……で……」  その言葉にはさすがに目を見張った。 「え、だって怯えてただろ?」 「……好きってバレたら……終わっちゃう……から、怖くて……」  天音の涙の理由は、俺の心臓を完全に壊した。  俺は深く息をつきながら天音の上に倒れ込んだ。 「天音……俺を殺す気……?」 「え……っ?」 「心臓痛てぇ……」 「えっ、だ……大丈夫っ?」 「……だめ。もう一生、天音がそばにいてくんなきゃ俺死ぬから」 「えっ?」 「もう天音以外なんもいらない。ずっと俺のそばにいて、天音」  本当に大好きだよ、天音。俺の特別。俺の宝物。もう片時も離れたくない。  こんなに大切だと思える子が現れるなんて想像もしていなかった。天音に出会えて、本当に俺は幸せ者だ。  なんて幸せにひたっていたのに、いくら待っても天音からの返事が返ってこない。 「天音? 返事くんねぇの?」  頬にちゅっとキスをして天音を見下ろした。  瞳いっぱいに涙を浮かべて、天音が俺を見つめてくる。 「……やっぱり……夢……かなって……」 「ふはっ。わかる。俺も夢みたい。でも、夢じゃねぇよ」 「冬磨……本物……?」  天音の気持ちが分かりすぎた。俺も、この天音は本物か? なんて思いたくなるくらいに夢のようだ。 「もう一回キスしたら、本物ってわかるか?」  涙でぐちゃぐちゃの天音の目元をそっと指で拭い、ゆっくりと唇を重ねた。舌を絡めにいくと、ぎこちなく答えてくれる天音の舌。 「……ん……っ、ぁ……っ……」  上顎を舐めるとビクビクと震える。たまらなく可愛いくて何度も舐めた。  キスに酔いしれ、頭がバカになりそうなほどとろけていく。  夢じゃない。天音は俺を好きで、もう俺の恋人だ。これは夢じゃないんだ。 「と……ま……っ……」  可愛い声色で、身体の震えで、くしゃくしゃの涙顔で、何より熱い視線で、全身で嬉しいと幸せだと訴えてくる天音に、まぶたの奥が熱くなった。 「ちゃんと本物だってわかった?」  優しく問いかけると、天音が首に腕を回してぎゅっと抱きついてきた。 「あ、天音?」 「お……おれ、……俺はもうずっと、冬磨以外なにもいらなかった……っ。冬磨だけがほしかった……っ。ずっと……ずっとずっと冬磨のそばに……冬磨のそばにいたい……っ」  もうたまらなくなって天音を壊してしまいそうなほど力強く抱きしめた。 「天音……っ」 「とぉま……っ」 「……もうほんと限界。天音……抱いていい?」 「だ……いて。抱いて……冬磨……」 「天音。もうずっと俺のそばにいろよ」  天音の耳に唇を寄せて伝えると「ぁ……っ……」と吐息を漏らして天音が震えた。  

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