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フェイク
漸く落ち着いたところで問題があり過ぎて、僕は半分パニックだったんだと思う。
「アレク様、アレク様、生き……。」
僕は号泣していた。
僕がここまで泣くのは初めてだったからか、アレク様はおろおろしていた。
「リシェ、悪かった、済まなかった。」
「ひっく…うぇぇ。」
ぎゅっと強く抱き締められる。
僕が泣くのが収まるまで、アレク様はあやしてくれていた。
「どこから話すか…。」
漸く落ち着いた僕と並んで座り、僕もたくさん聞きたい事があり過ぎて、何を聞いたらいいのかと。
問い掛けるには僕は混乱してるから、アレク様の言葉を待った。
「まず、俺の核が割られたのに、って辺りか。」
「あ、うん、それが一番気に掛かった。」
「俺は兼ねてから核が弱点ってのはリスク高過ぎだと考えていた。」
「うん。それは僕も思ってた。」
「そこで、逆に割らせてやればいいんじゃないかと考えた。」
「え、あ、え?」
全く理解出来ないのは、僕に理解力足りてないのかな?
「割らせる事で相手を油断させるだろう?」
「確かに、割ったから倒したって思うね。」
「でも本物を割らせるわけにはいかない。だから、予備の核を割らせればいいってな。」
「予備の…?」
「以前リシェがくれた核、あったろ?あれを参考に俺も核を作ってみた。さすがに十個作るのに三日かかったが…。」
「十個!?待って待って…僕はあれを作るのに五年掛かってるんだけど…。」
「一つ作れば効率化…いや、とにかく、その核を壊させた。」
「で、でも、サラッて消えて…。」
もう規格外過ぎていちいち驚いてらんない。
「あれは幻影の魔法だ。幻影の魔法の映像と同時に闇神の核を抜き取って闇神としての認識を俺から切り離した。」
「でも、確かにあの時アレク様の反応が消えたよ?」
「そこでウェルナートだ。」
アレク様はわざわざウェルナート様に姿を変える。
「あ、そっか、その時アレク様はウェルナート様だったから、アレク様じゃない。」
アレク様をサーチしても引っ掛からないわけだ。
「あの剣に『アレク』と『闇神』としての俺を記憶されているとしたら、転移を使ってもそこで刺される可能性があったからな。狙いは俺の核だろうから、一度闇神の力を手放して闇神の認識を外させた。後はウェルナートでいなければならない状況…つまりあの剣さえ無くしてしまえばいい。」
「じゃあどうしてアレク様に戻って戦ったの?」
「勇者じゃない方のあっちの男は、聖母であるリシェを狙って来た。つまり奴は他の宇宙の至高神だ。神の力を以てしないと倒せない。だからどうしても闇神に戻る必要があった。」
「んー、あれ?何で個人認識を覚えられると駄目なんだっけ?」
「ああ、それが抜けたな。あの剣は、相手の認識を剣に覚えさせ、それだけを斬る。だから結界があろうが押し切られてしまう。かわせればいいが、ウェルナートで動けば『ウェルナート』としてはまだあの剣に対して認識されてない分低リスクで戦えた。」
「……。」
僕はポカーン状態だった。
聞いた事は一応理解出来た筈。
「り、リシェ?平気か?」
「何だかもう天才の真髄を見たよね。」
ギュッと抱き着きながら、やっぱり凄い人なんだなーって考えてたら、精神的にきつかったせいか、僕は気を失ってしまったようだった。
「すぐに救ってやれなくて悪かった。」
後に、神の力を放棄したりするのは反動を喰らってしまい、そのため大ダメージを喰ってたアレク様が回復に時間を要して、すぐに助けに来れなかったのが理由だったと聞かされた。
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