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愛しているのに......③

理人さんとのデート当日。 いつもはホテル街で待ち合わせをするが、今日はお互いの会社から近い駅方面で落ち合った。  徹史はこの日の為に初めて新調した三つ揃いの紺色のスーツに、水玉で朱色のネクタイを合わせて、少しでも理人さんと並んで恥ずかしくないように、身なりから気合を入れた。  ホテルの上階にある夜景が映えるレストランに到着してコートを脱ぐと、早々にスーツがいつもと違うことを突っ込まれたが適当にはぐらかしてやり過ごしす。  理人さんは自分の身体以外には興味がないと思っていただけに、徹史の服装など逐一気にしてなどいないと思っていた。 思わぬところで彼に気づいて貰えて嬉しくなり、心の中でガッツポーズをする。我ながらかなり奮発して新調した甲斐があった。  しかし、身なりで背伸びをしていても、実際に畏まった食事が初めての徹史は終始緊張していた。予習はしてきたものの所作の自信はない。  一方でテーブルの向かいに座る理人さんは、運ばれたコース料理をナイフとフォークを使って慣れた手つきで口へと運んでいたので経験の差を見せつけられる。 「お前を見ていると、背伸びしている感出ていて面白いよな」 「背伸びしてる感って……。去年まで大学生だったんですから仕方がないじゃないですか……」  明らかに揶揄われていると分かる言動に躍起になるが、不思議と嫌な感じがしないのは初めて彼とベッドの上以外で真面に会話ができている高揚感からだった。      窓際の席で街を一望できる夜景と高価なディナー、それに目の前には好きな人。 理人さんと関係を結んでからこんな日が来るとは半年前の自分は思わなかっただろう。 「ムキになるなって。俺からしたら初々しくて新鮮だなって思っただけだよ」  徹史が普段見ている彼とは違う、表情の柔らかさを感じた。

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