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楽園 63

キヨハラが背後から激しく突き上げたのも、おぼえてはいる。 突き上げられる度に叫んだのも。 どこで射精したのかは分からない。 でも後ろを突かれるどこかで射精していた。 そして、その後、射精してないのにイかされたのも覚えている。 キヨハラがタクミの名前を叫びながらタクミの中で達したのも。 その後、今度は向かいかったまま抱き合ってして、キスしながら何度もイカされて。 気持ちいいか と何度も聞かれて 気持ちいい と何度も答えて 出していいか と何度も聞かれて 出して と何度も言って 愛してる可愛い好きだ 気持ちいい 愛してる 可愛い そう壊れたように囁かれたのだった。 キヨハラは狂ったようにタクミを欲しがった。 もう出ない、と言っているのにペニスを泣くほどしゃぶられたし、これは自分のモノだと乳首を舐められるかじられた。 そこで何度もイケることさえ教えられてしまった。 「オレの恋人がバカみたいだ、変態だ」 タクミは抗議した。 だけどキヨハラはそんなにバカみたいでも綺麗で格好良くて。 夢中でタクミの股間に顔を埋めている時ですら、信じられないくらい綺麗で、やらしくて。 上目遣いでみつめられ、しゃぶられた。 タクミは「出ない!!出ないのに!!」と喚きながら、それでもキヨハラの口の中に出したのだ。 タクミはキヨハラに欲しがられる度に感じてしまった。 綺麗なキヨハラに咥えられて。 キヨハラに胸をしゃぶられて。 エロい気持ちにならないわけがなくて。 キヨハラの綺麗な顔。 もう一度挿れさせて、と、いやらしい表情で言われたなら、精液を零すタクミの穴の方がひくついて。 欲しがっているのを言葉以上に教えてしまう。 もう一度が何度続いても。 挿れられたなら、もう感じてしまって。 自分から動くことまで覚えてしまった。 奥を突かれるのが気持ち良すぎたし、指で教えられた所を擦られるのもたまらなかった。 タクミだって。 キヨハラを欲しがったのだ。 でも、全部タクミの中に出したい、とキヨハラのは舐めさせても飲ませてもくれなかったけれど。 叫びあい、欲しがりあい、求めあった。 キヨハラの新しい部屋が、キヨハラ以外は数人しか住んでいない物件なのは良かった。 隣りに誰かいたらなら聴こえてしまっていただろうから。 数年後建て壊しのため、住人に立ち退きを頼んでいる最中のマンションなのだ。 数人がなかなか納得しないので、その人達が出ていくまでの条件で格安で入らせてもらっているのだ。 獣みたいに叫びあい求めあっていたから、さすがに隣近所がいないのは良かった。 でも。 こんなのは。 当分ダメだとタクミは思った。 そう、声の問題じゃなくて。 こんなの。 バカになる。 タクミはセックスが怖いと、思った。 あまりにも良すぎた。 何度も何度も頭が白く焼ききれた。 ヒクヒク身体は痙攣していた。 その後、布団も引かずに床でタクミとセックスしてしまったと落ち込んでいたのはキヨハラだった。 そして、風呂にドロドロになったタクミを抱えて連れていった。 そこでタクミの後ろから精液をかきだしたりしている内に、また2人とも我慢出来なくなって、風呂でもしてしまった。 何度もキヨハラを受け入れた場所は、もうキヨハラの形を完璧に覚えていることを実感した。 「もう絶対ダメだぞ・・」 「ああ、絶対ダメだ」 お互い言い合って。 でも。 バスタブの中でまたしてしまった。 キスして、抱き合って、繋がって。 繋がれることを知ってしまった。 こんなに近くにいられることを。 その欲求はあまりにも強くて。 で、笑った。 笑いあった。 指の1本も動かせなくなるほど疲れていたけど。 そのまま後、何とか布団を敷いて抱き合って眠った。 タクミは。 キヨハラの体温と寝息を感じて。 安心して眠った。 目が覚めたのは冷たいものが顔に落ちたからだ。 キヨハラが寝ながら泣いていた。 ああ、逃げられてないのだ。 夢の中でもまだ、キヨハラはあの家に囚われている。 タクミはキヨハラの頭を抱えた。 そして囁く。 夢の中のキヨハラに 「オレがいるよ、ここにいるよ」 タクミの声は届くだろうか。 泣いていたキヨハラが笑った気がした。 「お前のためなら何でもしてやる」 タクミは言った。 本気だった。 何だってどんなことだって。 そうしてやりたかった。 キヨハラを抱きしめた。 タクミを満たせるのはキヨハラだけ。 キヨハラじゃないとダメだった。 「愛してるよ」 タクミは夢の中へ届けるために言う。 そこがどこだろうと、キヨハラは一人ではない。 タクミが一人にしない。 キヨハラがゆっくり目を開ける。 美しい目からまだ涙は流れていた。 でも。 キヨハラは笑っていた。 タクミを見つめて。 救われたように。 「愛してる」 タクミは教えてやる。 それを何度何度も何度も教える。 それしかないからこそ。 「愛してくれ」 キヨハラが言った。 心からの望みなのだとわかる。 タクミに愛されることだけが。 ああ。 幸せだ。 そう思ってしまう。 世界がどんなに広くても、タクミもキヨハラも2人だけで閉じ込められているのだ。 それがどんなに幸せなのか。 「愛してる。オレだけのだ」 タクミが言う。 キヨハラは幸せそうに笑う。 そう。 ここは。 自分達で選んで閉じ込められた、2人だけの楽園なのだ。 おわり

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