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第1話

モデル仲間から借りた一本のAV、それが彼の人生を大きく変えるなんて…この時は思ってなかった。 パッケージには「巨乳童顔アイドルの裏のお仕事」というタイトルとシャツ一枚しか身につけていない少女のようなAV女優が大胆に胸を寄せているポーズをとっている。 元々彼は童顔で巨乳が好きだったからモデル仲間に勧められて単純に興味が湧いた。 …そう、童顔で巨乳が好きなんだ。 「あっ、あん…あん」 「はぁっ、くっ」 自慰する手が止まらない… 最悪だ、こんなの初めて… AVの女の声が煩わしく感じるなんて… 彼が異常に興奮していたのはAV女優ではなく、女優に絡む男優だった。 美しく、キリッとした瞳にクールな顔立ち…決して可愛い系ではないし…そもそも男だし、ゲイじゃないし… なのに、人生の中で初めてこんなに興奮した。 そろそろイきそうだと横に置いてあったティッシュを数枚掴みその中に精液を吐き出した。 女優メインなのは分かってるが、時々見える男優の尻に目が行ってしまいフィニッシュを迎えた。 パッケージを見て、スタッフのところを見た。 正直今まで男優なんてこれっぽっちも興味なかったから名前載ってないかな?と思いながら目を滑らせる。 「…九条(くじょう)(そら)」 名前を見つけてAV女優みたいな可愛い名前、と笑った。 本名か、それとも芸名? 彼の事がだんだんと知りたくなっていった。 本人はまだ気付いていない、それが恋の始まりだったという事に… ……… 「よっ!茜っち!昨日貸したAVどうだった?」 「ん?…うん、良かったよ」 彼の名前は(きし)(あかね)…昨日の男優の事が言えないほどの女の名前だが、これには悲しい理由があった。 母がとても女の子が欲しくて、女の子の名前しか考えてなかった。 そして男が生まれ、気分でも女の子にしたいと訳のわからない事を言っていたらしい母はそのまま女の子の名前を付けた。 そのせいで年少期は顔が美少女だった事もありからかわれた…喧嘩は強かったから叩きのめしたけど… 中学に上がる頃には顔は美男子になり、女子にちやほやされていた。 そのせいで上級生に目をつけられ…叩きのめした。 高校に上がる頃には髪を金髪にして不良となっていた。 誰も逆らう奴はいなくなり、そして親バカの母によりモデルオーディションに勝手に応募してしまった。 そして高校を卒業した今となっては、モデルを本業にドラマにも出るほどの人気モデルになった。 今日はファッション雑誌の撮影で来ていて一緒に撮る同じ事務所のAVを貸してくれた友人と椅子に座って出番を待っている。 「あの女優のAVまだ持ってるから貸してあげようか?」 「うーん、いいや…今月いろいろとスケジュールがパンパンで見る時間ないし」 「えー、忙しい時ほどスカッとした方がいいと思うんだけど」 茜はあの女優が見たいんじゃなくて男優の方が見たい…なんて言えるわけもなく苦笑いしながら呼ばれたから席を立つ。 今日の撮影はとても色気が出てて良いと褒められた。 ずっと彼の事考えていたからかな? ……… 夜になり、暗い夜道を歩いていた。 毎回コンビニ弁当だと栄養偏るから外食しようかな? そう思っていて、ふと足を止めた。 茜の目の前にはレンタルビデオ屋があった。 変装用のマスクとサングラスをしてるから岸茜だと気付かれはしないだろう。 昨日ネットで九条空の出演AVを探していた。 結構出てる人気AV男優らしく、女性に人気があった。 …女もAV見るのかと軽くショックを受けたが、まぁそれはどうでもいい。 何だか初めてAVを借りる時みたいに妙に緊張しながらAVコーナーに入る。 見た目は男優が映ってるパッケージはないから分からないが、検索したスマホの画面を見ながら探す。 そして見つけた。 「コスプレ物か…」 教師と生徒の禁断の関係…パッケージにはそう書かれていた。 裏を見ると、九条空は教師役みたいでスーツがカッコよくてちょっと反応してしまった。 即借りようと決意した、いつもは女優で決めるのに今日は女優に目が行かなかった。 合計三枚のAVを借りて満足しながら店を出た。 全部九条空が出てるAVだが、店員は当たり前だが気付いていない。 早く帰って見たいが、丁度腹が減ってきたから近くのレストランに行く事にした。 大人の雰囲気で落ち着いていて、酒も美味しいし気に入っていた。 ただ、こんな夜遅くは来た事なくていつも昼飯に寄る時とは雰囲気がとても良くなっている。 夕飯をこの店で食べるのも良いかもな。 ワインとがっつりステーキが食いたい気分だと頼み待つ。 チラッと横を見るとさっき借りた九条空のAV…あぁ、楽しみだな…と顔がニヤける。 「それで今度の企画なんだけど」 廊下を挟んだ隣の席は打ち合わせ中らしい。 夜遅いし客が2.3人しかいないからよく聞こえる。 チラッと隣を見るとキャップの帽子を被ってる同じ歳くらいだが顔は見えない青年と中年の小太りの男が会話していた。 帽子の青年は企画書らしき紙を見ていた。 「この前もやったから大丈夫だよね?3P」

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