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この世で一番ほしいプレゼント♡番外編 運命の人13
「おまえの主、アンドレア・デ・プレザンスに嘘をつくというのか?」
苛立ちをやり過ごしたかったが、感情が昂り過ぎて、怒気のこもった声で告げてしまった。そんな俺の気持ちを無視するように、カールは顔をあげない。
「カール、お願いだ。おまえの本当の気持ちを聞かせてくれ」
「私の気持ちはただひとつ。貴方様を伯爵家に相応しい当主にすることでございます」
「どんな顔でそれを言ってるのか、わかってるのか?」
両肩に置いた手でカールの躰を揺すってみたが、顔を見せないようにするためか、首をもたげる。徹底的に拒否する姿勢を崩さない彼に、文句を言おうとしたら。
「私も本日は疲れました。大変申し訳ございませんが、お先に失礼いたします」
深く頭を下げて一礼し、両肩に置いた俺の手を無理やり引き剥がして、寝室から出て行ってしまった。
「嘘だろ、おい……」
両想いだから、絶対に拒否されることはないという自信があった。俺の告白を聞いて、うれし涙の一つくらい見られると思っていたのに。
「俺の作ったシフォンケーキを膝に置き、顔を突き合わせて、仲良く食べる夢まで壊しやがって!」
一緒に蠟燭を吹き消した後に、俺の手からアイツがシフォンケーキを食べる。「アンドレア様が作ったとは思えないくらいに、とても美味しいです」なんて言われて、俺は照れるんだ。そして――。
『俺のプレゼントであるカールを、これから食べたいんだけど、いいか?』って言った俺に、カールは恥ずかしそうな顔で、シャツのボタンをみずから外して。
「美味しくお召し上がりください」
「とかなんとか言えよ、俺の誕生日だったんだぞ。昨日の話だけどな!」
そう今日は、カールの誕生日。だからこそ腹を立てて、逃げてしまってはいけない。
隠していた紅茶のシフォンケーキを取り出し、力任せに蝋燭を五本突き刺して、寝室をあとにした。湧き上がる怒りが靴音になって出てしまっているが、こればかりはどうしようもない。
階段を駆け下りた先にある、目当ての人物が住まう部屋の前に到着。迷うことなく、扉を拳で殴りつけた。
「カール、いるんだろ? ここを開けてくれ!」
しつこく扉を殴ってやったら、強張った顔のカールが中から出てきた。
「アンドレア様、今は夜中ですよ。まわりの迷惑を考えて行動していただきたく、お願いいたします!」
「おまえが俺に迷惑なことをした結果が、これだ! 中に入れろ!」
大声を出した俺を制するためか、声を殺して忠告したカール。怒った顔の執事様を押しのけ、強引に突入する。扉を閉めた音のあとに、室内灯がつけられた。
(以前ここに来たのは、いつだっただろうか。代わり映えしない部屋だな)
「次期当主が夜分遅くに、使用人の部屋に来るものではありません」
まじまじと室内のあちこちに視線を飛ばす俺に、カールはふたたび注意した。
「しょうがないだろ。おまえの誕生日を、どうしても祝いたかったんだ」
本当は笑って手渡したいのに、素直じゃない自分が出てしまう。不機嫌丸出しで、皿に乗せられた紅茶のシフォンケーキを、カールの手に押しつけた。俺の態度が気に食わないのか、困った様相を見せつけ、それを受取ろうとしない。
仕方なく皿を引っ込め、質素な机に優しく置いた。なにもない机に置かれたシフォンケーキは、まるで俺の心のよう。好きな相手に拒否された挙句に触れてもらえず、ずっとひとりきりなところがソックリだと思った。
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