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微笑む顔の下で(9)
「和、そろそろ帰ろうか。今日はどこか寄り道して行く?」
「徹の奢り?」
「え? 俺が奢らないと寄り道してくれないの?」
「……まぁ別に奢りじゃあなくてもいいけど」
和という人間をもっと知りたい。他にどんな可愛いところがあるのだろう。どこまで俺を信じて、気を許してくれるようになるのだろう。
「和、新しくできたパフェ屋さんに行く?」
「あ? 徹と俺で? バカじゃあねぇの。キモすぎんだろ」
「でも和さ、帰る時にいつもボードに書かれているメニューをじっと見てるよな? 本当は甘党で、パフェ好きだろ?」
「なっ!」
頬を真っ赤に染め、いつもは睨むようにして細められているその目が大きく見開いた。
一緒に開かれた口からは八重歯が覗き、戸惑った勢いからかシャッと俺の腕を引っかいた。どういう否定の仕方だよと笑えば、今度は鞄を俺の背中へと叩きつけてくる。
「すっごい痛いからパフェは和の奢りだな」
「俺は別に、パフェとか、好きじゃあ、ねぇし!」
「はいはい、またそんな嘘ついちゃって」
「嘘じゃあねぇ! そもそもお前もパフェ好きじゃなきゃあ、わざわざ俺となんか行かねぇだろ? お前のパフェ好きに俺を巻き込むな!」
とどめを刺すかのように俺を蹴り上げようとした和の足から逃げ、背後へと回った。後ろから抱きつき耳元にフッと息を吹きかければ、ぞわぞわしたのか大人しくなった。
「じゃあ俺がパフェ好きで食べたいから付き合ってくれる?」
「……どうしてもって言うんなら」
「嫌なのに俺の好きなことに付き合ってくれるなんて、和は可愛いだけじゃあなくて優しいんだね」
「……っ、」
完全に照れた様子で大人しくなった和は、唇を噛みしめると、手の甲で頬を隠した。「時々、徹は意地悪言うよな」なんて、可愛い言葉をゴニョゴニョ言いながらまた俺を刺激してくる。目的が変わってしまった。こんな姿を見せられてしまえば、誰だって他の奴には見せたくないと、そんな気持ちになるだろう。この和は俺だけが知っていたい。
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