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26.「非現実」*真奈

 ……何でオレ、こんな所にいるんだろう。  非現実的な目の前の世界に、ただ呆然としていた。    俊輔の作ったという、族の、集会。  俊輔はもう族の頭は降りているらしいけど。  あの二か月前の時、もうすでに頭ではなくて、俊輔は今の頭に会いに行ってたところだったらしくて。  そこらへんは、言葉の端々で、なんとなくは、知っていた。  今日の夕方、西条さんから早めの食事を進められて、何でだろうとは思っていたんだけど……。  珍しく早く帰ってきた俊輔が、族の集会に出かけると宣言。  ……いってらっしゃい、と思ってたら。  とりあえずこれを着とけ、と言われて、白の半そでTシャツに黒のジーンズ、それからジャケット。 「暑いのに何でジャケット?……ていうか、何でオレが着るの?」  そう聞いたら。 「バイク乗るから転倒した時用に長袖。……何で着るかって、お前も行くからに決まってるだろ」  ――――……嘘だよね……。  ここに来て二か月余り。やっと外に出られると思ったら。  暴走族の集会……?? うそでしょ……。  渋るオレに、着させてほしいのかと迫り。  仕方なく服を着たけれど、まだ渋ってるオレの腕を掴んで外まで。結局、断れずにバイクに乗せられて、ここまで来てしまった。  少し郊外のファミレスの大きな駐車場。そこにずらりと、個性的なバイクが並んでいた。そのど真ん中に俊輔が入り込んでいって停まる。  うわー、なんだここの皆の格好もバイクも、ヤバいよー。なんでオレこんなところにー!  俊輔がバイクを止めてヘルメットを外すと辺りがワッと沸いた。男も女も、どうやら族の連中には大人気らしい。その歓迎ぶりで分かった。 「俊輔さん!」  女の子達の歓声もすぐに聞こえてきた。  ……何でこんな奴が良いんだ。とは、言わない。  こんだけルックス良けりゃ女の子にはそりゃもてるだろうし。  妙にカリスマ性があるだろうという事も、あの屋敷で暮らしていればなんとなく分かるし。  それでも納得いかないのは…… それは、だって、仕方ないと思う。  オレにとって俊輔は、最高意味の分からない人だし。 「このまま、ここに居ろ。すぐ戻る」  俊輔はオレを降ろしてから自分もバイクを降りると、ヘルメットを外したばかりのオレにそう言い残し、ファミレスに入っていった。  つーか……。  こんなトコに残していくなよう、馬鹿俊輔!! 連れてけよ! もう……!!  元族長。それもいまだに強く強く支持されているらしい俊輔が、自分のバイクに乗せて連れてきた、場違いな見知らぬ男。  オレって、絶対そう見られてるに違いない。  好奇心のような、羨望のような、何とも言えない奇妙な視線にさらされながら、思わず心の中で、俊輔に早く帰って来いと願ってしまう。  俊輔に捕らわれて以来、初めてそんな風に願った事にすぐに自分で気が付いて、オレはため息を付いた。  その時。 「よお」  そんな声と共に、ぽんと肩が後ろからたたかれた。  俊輔はまだあのファミレスの中で、出てきていない。だから俊輔じゃない。だとしたら、こんな所に知り合いは居ない。そもそもこの声を、オレは知らない。  ――――……誰?  一瞬でそこまで考えて振り返り、そこに立っている人物を見るけれど、案の上記憶のかけらにも無い顔。  背は俊輔より少しだけ高いかな。かなりがっちりした筋肉質な身体を包むのは、黒の特効服。  一瞬熊を思い浮かべたけれど、熊と呼ぶには二枚目すぎて、どう言ったらいいか、しばし考える。  カッコよくはあると思うけれど、だからこそ余計にものすごい迫力があった。

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