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10.「久々の」*真奈

「――――……」    目が覚めると、部屋は暗かった。俊輔は、隣には居なかった。  ……寝ちゃってたんだ、オレ……。まだ喋ってるのかな……。  歯を磨いた後、俊輔と凌馬さんに寝ていいと言われて、ベッドに来た。  ずっと二人の声がなんとなく聞こえていた。ドアが閉まっているから、話してる内容までは分からないけど、たまに笑い声が聞こえたりして、仲、良いんだなあと思いながら……いつのまにか寝てたんだっけ……。  なんかオレ。  凌馬さんとは話せるって、変なの……。  あの人も、ほんとなら、オレが関わる感じの相手じゃないと思うんだけど。  めちゃくちゃ強そうだし、パッと見はすごく怖そうだし、なんか住む世界が違う感じ……。  でも、こないだ助けてくれた時の、頼れる感じがもう、心の中にすとんと残ってて。  ……ちょっと好きなのかもしれない。  あの人が、今の、族のリーダー……。てことは。  ……オレ、ほんとなら、あの人に会いに行ったんだよね、あの時。  あの人はきっと、オレをこんな風に、自分のとこには置かなかっただろうから。あの日、もう少し遅く行って、俊輔に会わず、凌馬さんと話せてたら、オレはここには居ないんだろうなあ。普通に生きてたかなぁ……。  ………………そこまで考えて、ため息を、ついた。  でもオレ。  その凌馬さんに、逃がしてやるって、言われたのに。  ……ここに戻るって、決めたんだ。  ………………あれって、何でなんだっけ……?? 「…………」  逃がしてくれるって、言ったのに、戻ってきたんだから、あの逃げる前に、ほぼ無理無理連れてこられた時とは、少し話が違くなってるってことも、分かってる。  ……自分の意志で、ここに、戻った。  …………あのまま、俊輔と、別れたくなかった、から……?  何でかなあ、オレ。  ……わりと、ひどいことしか、されてなかったような気もするのに。  自分が謎すぎて、よく分からない。  その時、部屋のドアが開く音がして、俊輔が入ってきた。   「……あ」  腕をついて起きあがると、俊輔がこちらに目を向けた。 「起きてたのか?」  「今、目が覚めて……凌馬さんは……?」 「少し前に帰った」 「そっか……」 「帰る時覗いてたけど、お前寝てたから、声かけないで帰った」 「うん……」  頷いて、時計を見上げたら、二十三時過ぎ。  俊輔が、ベッドの端に腰かける。    「……お前、凌馬の事好きか?」 「……え?」    聞かれた言葉に思い切り首を傾げながら、俊輔を見上げると。  じっと、見つめられた。    「……好き? って……助けてくれたし……好きといえば好きだけど……」  好きだけど……なんだろう? その質問。 「……俊輔……?」 「また、呼ぶから」 「……うん……」  ……それは別に、いいけど。  ……俊輔が呼ぶなら、それでも良いし…… 良いんだけど……??  なんだか変な感じの質問に、少し眉を顰めつつ、俊輔を見つめ返していると。  隣に入ってきた俊輔に、額に触れられる。 「熱はないな……今、具合、悪いか?」 「……? 大丈夫」 「……少し、付き合え」 「え。……あ」  肩を抱かれて引き寄せられる。久々のシチュエーションに一瞬固まったけど。  そのまま、ゆっくりと、唇が、重なってきて。  オレは、ふ、と。  瞳を、伏せていた。

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