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がんばれ!ルビアちゃん
「ルビアさん」
「見つけたルビアちゃん」
「待ってルビアちゃーん」
ドスドスと足音を立てて、タックルしてこようとするのはラグビー部の筋骨隆々な部員たち。
「む、無理…!」
ルビアと呼ばれ、ラグビー部員たちから逃げているのは、TシャツとGパンスニーカー、という出で立ちのふつーの男子大学生に見える。
しかし、なぜ彼がラグビー部員に赤裸々に迫られているかというと。
「ルビアちゃん、一回だけでいいからヤラせて!」
「オレはインキュバスだって!女しかだめなの!」
「どっちでもいいから!」
自ら名乗っているからである。
大きなキャンパス。この大学は女子学生もいるが、このやり取りを冷めた目で見ていて、被弾しないよう避けて通っている。
「サイテー」
「キモ」
「セクハラで訴えようかな…」
「内海教授に相談する?」
きゃーと学内一人気の若手助教授の内海氏と話すネタを仕入れて楽しそうである。
ルビアはそんな彼女達を横目で見ながら、視界にすら入れてもらえない悲しさに打ちひしががれながら、猛者たちからひたすら逃げた。
ここの大学生はみんな頭がいい人たちって聞いたけど、インキュバスとサキュバスの違いもわからないなんて…!
日本の未来とか任せていいの?
オレもう明日から海外に行く!
日本の未来というカテゴリーに悪魔の種類は含まれない。
大船に乗ったつもりで彼らに任せて大丈夫であるが、ルビアは真剣だ。
構内の外れにある小さな森。
ここまでくれば猛者たちも追ってくまい。
ルビアは逃げ足だけは早いのだ。
「やっと撒いた…」
森の出入口は小さな丘になっている。
ルビアは木の陰に座り、やっと人心地ついた。
グウゥとお腹が鳴る。
人間界に来ることはや一週間。
全く人間の精気を食べていない。
女性には視界にすら入れてもらえないが、男性には迫られている。
インキュバスなので、男性の精気を食べても腹は膨れない。それを食べろ食べろとすすめられる。もはや拷問に近い。
体力温存のため、ゴロンと横になる。
トパス樣…。
まだ怒っているかな。
昔はトパスの宮殿で淫行の限りを尽くしていた。
あの頃は、精気も満ちていたのだが。
今はこんなに痩せてしまった。
見下ろす体は、筋肉の塊。
胸は柔らかい筋肉に覆われ、腹筋は割れ、尻肉は盛り上がった小尻。
伸びやかな足も、しなやかな筋肉がついている。
その上にはベビーフェイスで福笑いが成功した端正なお顔。
ある日、蛇がやってきて、"トパス様に恩を返したいなら鉱山の宝石を採取するといい"と囁いた。
愚かなルビアは、トパス様の喜ぶ顔が見たくて、宮殿から出ることを禁止されているのを忘れて外に出てしまったのだ…。
「なにしてんの」
「あっ!」
「今度は何部?」
「山田くん…」
手には虫かごと虫網。夏休みの小学生みたいだが、彼は長身でもっさりした冴えない大学生の山田くんである。
「またラグビー部に迫られてたんか?昨日は野球部だったよな」
「う、うん…野球部は日本シリーズ観てるから大丈夫だと思ったんだけど…」
だいたい、野球部とラグビー部と柔道部あたりがローテーションを組んで、ルビアの尻を狙いにくる。シフトでも組んでるの?
「山田くんはどうしてここに?」
「これ。研究材料」
かざした虫かごの中にはびっしりバッタが入っていて、所狭しとぴょんぴょんしている。
山田くんは農学部を専攻しているので、バッタを採取するのはいいのだが…。
「ぎゃー」
「アンタ、悪魔なのにバッタが怖いの?」
「こ、怖くない。悪魔じゃなくてインキュバスだし」
いや、怖い。というか虫は苦手だ。
さらに数の暴力にやられてダメージは甚大だ。
「へえ」
山田くんは虫かごのフタを開けようとする。
「ま、待って山田くん!なにする気?!」
「なんやろなぁ」
「待って待って考え直して!」
どうしようかなーと虫かごを振ったり、ルビアの目の前に翳して悲鳴をあげさせたりして遊ぶ山田くん。
完全に楽しんでいる。
インキュバスをいたぶるなんて鬼畜の所行である。山田くんは絶対、地獄に堕ちるとおもう。
ルビアは、虫の中でもとくにバッタが苦手だ。
魔界にいたときに、アドバンというバッタの悪魔に尻尾を噛られたことがあり、もはやアレルギーの域なのだ。
「お願い!なんでもゆう事聞くからぁ!」
「えっ、ほんま?」
虫かごを振るのをピタリと止める山田くん。
ルビアは、ちょっと早まったかな?と冷や汗をかいた。
「じゃあヤラせて?」
やっぱりねーーーーー!
「山田くん男にしか見えないけど」
「正解やで、まあ善は急げというから」
山田くんがルビアの手をグイグイ引いて森の中へ歩いていく。
「オレ、インキュバスなんだってぇ」
連れて来られたのは、森の中心にある大木の前だった。そこに体を押し付けられる。
「んっ」
唇を塞がれたとおもう間もなく舌がスルリと入ってきた。長い舌がルビアの舌を絡め取る。
Tシャツの上から胸を揉みしだかれる。
「服の上からでも揉み心地ええなあアンタ」
「なっ…だめ、オレ女じゃないってぇ」
「ええ?でもなあ」
山田くんはルビアの抵抗をのらくらと躱しながら、Tシャツを捲る。
柔らかい筋肉で盛り上がった胸に、淡いピンク色の肉芽が、ルビアの呼吸に合わせて上下に揺れる。
「うまそ」
「えっ、ああぁん、…だめ、だめぇ…」
山田くんが大きな口を開いて、ルビアの胸に齧り付いた。
舌を出して執拗に小さな肉芽を可愛がり、音をたてて吸い上げた。
「い…っ、そんな…したらっ、取れちゃうよぅ…」
「アンタほんとにインキュバスか?…あー…チンコいってぇ…」
小さな欠片のような乳首は、しつこく吸い付かれ、腫れ上がり、赤い果実のようになっていた。
山田くんがズボンを緩めて取り出したそれは、ルビアには怖いくらいに感じるほど上を向いていて。
「あ…」
精気だ。
ふらふら手を伸ばす。
「あ?なに、触ってくれんの?」
膝をついて、山田くんの勃ち上がった性器に吸い寄せられるように、舌を出して舐めしゃぶった。
「うわ、やべ…」
口の中で、生き物のようにビクビク動いている。
先走りをなめ取る。
「おいしぃ…」
「…エロいなぁ」
男の精気で腹は膨れないはずなのに、山田くんの性器から溢れる先走り液は甘くて美味しい。
空腹に染み渡っていく。
精液だったらどんな味がするのだろう…?
射精を促すため、熱心に口に含む。
全体を舐めていき、先端を舌で抉っていくと、山田くんが吐精した。
待ち望んでいたのもに、口を大きく開けて迎え入れる。
「あまぁい」
精気を口の中でゆっくり味わう。
美味しい。
「もっと欲しい…」
吐精したあとも元気な山田くんに頬ずりしながら強請る。
「アンタさあ…」
山田くんは、ルビアを立たせて、お尻を突き出すような格好で木の幹に押し付ける。
「あれっ、精気は?…わっ」
「今度はこっち」
Gパンと下着を下ろされると、仕舞っていた尻尾がぴょんと出でくる。
「わ」
先っぽが少し欠けた長い尻尾が揺れて、山田くんの足に絡みつく。
山田くんは構わず、ルビアの引き締まった双丘の挟間に指を滑らせた。
「濡れてるで」
「えっ」
「舐めてるだけで興奮したん?さすがサキュバス」
「インキュバス!」
お尻を触ってみる。確かに濡れていて、粘液が糸を引いた。わけがわからない。
「オレ男なのに…」
「どっちでもええわ、こんだけ濡れとったらすぐ入るやろ」
山田くんの指をあっさりのみ込んだ。
「すげ…」
「ああぁん、なにこれぇ…んっ…ん…んぁ…!」
グチュグチュと音がするほど中をかき回される。
「あ、これやな」
「ふぁっ…あっ!」
山田くんが探り当てたところがどこなのかわからないけど、とにかく押される度に、触られてもいない前から射精感が駆け上がってくる。
気持ちいい。
いいけど、欲しいのは指じゃない。
お腹の奥が疼く。
精気を取り込みたいと波打つ。
「指だめぇ…、も…、もう…」
腰がもどかしいほどにゆらゆら震えて、知らず山田くんを誘う。
尻尾は強請りがましく、山田くんの足に絡みつき柔らかく締め付ける。
指が抜けていくのを無意識に追いかけていく。
「かわいいなあ…でも」
ルビアの揺れる腰を掴んで、山田くんが狙いを定める。
「アンタは、こっちだろっ」
「ああぁ…っ!これぇ…ああっ……ああぁ…ん…」
山田くんが腰を動かすごとに、グチュグチュ淫らな音が森に響く。
さっき指で押された気持ちいい場所を今度は固くて張り出したもので擦られる。
「あんっ」
「アンタ…っ、ほんとに女を抱いてたん?」
「してたぁぁんっ!…んっ!……んっ」
「もう、ムリやろっ」
抉るような動きに変わり、ルビアのものか山田くんのものかわからない粘液が塗り込められてたまらない。
山田くんのものを噛みしめようとするが、無理やり振りほどかれ、また押し込められる。
終わりが近い。
「山田くんっ…も、……だしてぇ…ココに、だしてぇ…っ!」
「…くっ」
山田くんの放った精気が腹に染み渡り、やっとルビアは飢えから開放された。
ルビアは久しぶりの満腹感から丘に大の字で寝転んでいた。空が青い。
隣に座っている山田くんの指が、Tシャツの上からぐにぐに乳首を摘んで遊んでいる。
「もういいでしょ…」
お腹いっぱいになったばかりなのに、変な気分になってきたら困る。
「今度はさあ」
「ん、なに」
「母乳とか出るようにしといてな」
そう言う山田くんは、今日イチの笑顔。
いやいや、魔法使いじゃないから。
人間の欲深さ…おそろしい…。
むりむり。
おわり。
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