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おまけ【ご褒美をあげる】
グンッ、と首元を引っ張られる感覚がしたと同時に前のめりになる身体。反射的に両手を前につくと、下がった頭を上げろと言わんばかりに、Collar に繋がれたLeash を引っ張られる。
「Look 」
甘く響くCommandが頭を支配していく。
必死に見つめた先の目は琥珀色の、愛しい人。
「Good boy 」
優しく、妖艶に微笑む愛 の目はどこかギラギラと欲望を見せている。それを見て思わず喉が鳴った。俺の反応に気づいてなのか、愛は目を細めそして笑みを深めた。
「Present 」
強い力で放たれたCommand に身体が震えた。
恐怖ではなく、それは歓喜だった。喜びで身体が震えている。愛はずっと、俺を真っ直ぐに見つめていて、その目はDomそのもの。鋭さを隠しきれないその目は、いつも俺の中のSub性を引きずり出していく。
シャツのボタンに手をかけ、一つずつそれを外していく。
もともとシャツ一枚だったせいかすぐに素肌が空気に触れ、僅かに羞恥を煽られる。
膝立ちになっていた俺は、シャツの両端を持って開き、愛の前に全てを晒した。もう既に固くなり先端からだらしなく先走りを垂らしているそれは、ピクピクと反応している。
「真白 」
羞恥心から目を合わせられないでいると呼ばれる名前。
その先に続く言葉に心臓がバクバクと期待で踊り始める。
「目を逸らすな」
その言葉に歓喜する日が来るとは思わなかった。
喜びで身体が震える日が来るとは思わかなった。
あの頃の俺には想像できなかった自分が、今ここにいる。
俺の首元で輝くCollarの先には、愛の手首に繋がったお揃いのLeash。
視線が合うと、瞬く間に俺は俺の愛しのDomに囚われる。
「おいで」
僅かにグッとLeashを引っ張られ身体が前へと進む。
「愛、」
俺は愛のズボンへと手をかけてそのチャックを下ろしていく。固くなっていたそれを見て、愛の表情を伺う。
「うん、いいよ。Lick 」
そのCommandを聞くや否や、俺の舌はツーっと愛の裏筋を這う。ピクリと反応を示すそれがうれしくて、先端を咥えて口の中で転がすように舐める。
「っ……」
吐息に混じって小さく漏れる愛の声。
(もっと、もっと気持ちよくなって……ちか、ちかっ……おれ、もっとうまくできるよ、だから、だからっ)
「んぐっ!?」
喉奥にゴツっと当たるように押し付けられると、苦しくって自然と涙が滲む。突然のことに動揺して思わず愛の太ももに置いていた手に力が入った。
「ん゙っ、ぐ、ぅ゙」
苦しさから逃れようとする俺を逃さない、とでも言うかのように愛の手が俺の頭をぐっと押さえ込む。
「ほら、喉奥ひらいて、っ……そう、いい子だね」
押さえ込む手の指が撫でるように優しく動く。
「ちゃんと鼻で息して、ほら」
ぐっ、とまた押さえ込む手に力が入る。先端が喉奥を擦る感覚が苦しさから徐々に快感へと変わっていくのを感じる。愛の手で書き換えられていく、俺の身体。
それがこんなにも心地良い。
「っ、……上手だよ、真白」
喉の奥、必死で愛を離さまいと自ら飲み込むように喉が鳴る。
(もっと、もっとほめて……おれがんばるから)
「ぁっ……やばいイく、真白、一旦離して、まし──……っ……!」
「うぐっ──っん゙ん゙〜っ」
(あたまのおく、が、ちかちか、する)
「ゲホッゲホッ!っは!ぁ、はっ……!」
解放されたと同時に咳き込むと、飲み込みきれなかった精子が口から垂れる。
「ぁ……っ!」
それに気づいた瞬間にはもう既に愛の唇が俺の口を塞いでいた。
「ん、っふ、ぁ……」
上顎を擦るように撫でる愛の舌の感触に、思わず身悶える。身体の奥が疼いて自然と腰が動く。
「喉奥、気持ちよかったの?離してって言ったのに」
喉仏をスリスリと撫でるように愛の指先が動く。
その官能的な刺激に、キスをしながら吐息が漏れる。
「ごめ、なさっ……ん、っ」
(気持ち、いい……)
「いーよ。でもちょっとお仕置き」
「んっ、ぁ……っ」
キスをしながらいつの間にか、俺は愛の膝の上に乗せられていた。少し見上げるように俺を見つめた愛の手は、お腹を這って上へと動く。ゾワゾワと湧き上がる熱情。身体は素直に反応していた。左手が胸まで来ると指先が乳首を掠める。
「ぁ……ん、」
焦らすように撫でられて、思わず甘い吐息が漏れる。
乱れた呼吸は熱く、空気に溶けていく。
「ひゃ……ぁ、ち、かっ」
反対の乳首を口に含まれて舌の上で転がされる。
時折舌先で焦らすように触られて、もどかしさに身体が自然と動く。
「腰、揺れてるよ」
「だ、っ、だって、はっぁ、……っひ、あっ」
突然、先端を手のひらで擦られる。ビリビリと身体を掛け巡る快感と、一瞬真っ白になる頭。
「ぁ、っう、ま、まって、それやば、っ」
「待たないよ」
「あ、や、やだぁ、ちか、っあ」
「やだ?」
「うそ、っ……ごめ、なさっ、ぅ、っあ」
「いっぱい溢れてるからぬるぬるだね。気持ちいい?」
「っ〜〜、き、きもちぃ、ちか、ちかっ」
「だめだよ、我慢しろ」
「ひ、ぁ、っや、ち、ちか」
(がまん、がまんしなきゃ、がまんっ)
頭がおかしくなりそうなほど強い快感が身体を支配する。
もう既にイきそうな身体を必死に抑え込む。
頭の中はもう既に愛でいっぱいだった。
(どうしよう、きもちいい、ちか、ちかっ、もっと、ほめて、おれ、がんばれる、っ)
「いい子だね」
耳元で囁かれた言葉に、我慢していたものがぶわっと身体の内側から湧き上がるのを感じた。
「ぁ、い、いくっ、ちか、い──っゔ」
イク間際、急に手を止めた愛は俺の根本をギュッと掴んだ。
「ぅぁ、……な、んで」
「イっていいなんて言ってないよ」
「ぁ……ご、ごめんなさ、」
「イきたい?」
「い、いきたい、ぁ……っいかせて、ちかのでいきたいっ」
「っ……あはっ、可愛すぎるよ真白」
愛の琥珀色の目がギラリと光る。
その目を見て、愛が興奮しているのがわかった。
「ご褒美、あげる」
甘く囁かれた言葉に頭が痺れた。
「Present 」
ベッドに横になった俺に、愛のCommandがかけられる。
仰向けで愛の前に晒したそれはヒクヒクと期待を露わにしていた。
「期待してるの?えっちだね、真白」
羞恥を煽られると同時に愛の指が中に入ってくる。
溢れる吐息は甘さを含んで空気を揺らす。
「はっ、ゃ、あっ、ん……」
「ははっ、甘い声……ん」
「あっ、まっ、て、んっ、あ……は、ぁ」
指を増やすと同時に愛は、興奮を隠しきれずにピクピクと反応するそれを口の中に含んだ。口の中の温かさと舌の動きで思わず腰が揺れる。
「まだ、っ、がまんしろ」
愛の言葉に湧き上がる快感を逃がすように興奮を抑え込む。けれど身体は素直で。
「も、むりぃ……っ、ちか、たすけ、たすけて」
涙が滲んで零れそうだった。
俺のを口に咥えながらこちらを見つめる愛を、俺は必死に見つめ返した。
「もう限界?」
「ん、たすけて、ちか……おれ、おれっ……っ」
「うん、頑張ったね。いい子だよ真白」
頭を撫でる愛の手はとても温かくて優しい。
(ちか、ちかっ、だいすき、ちか)
頭の奥がちかちかと痺れてふわふわとどこか夢心地になる。全ての感覚がふわふわとして、愛に触れるところ全部が、気持ちいい。
「入れるよ」
ゆっくりと、愛の硬くなった熱が中に入り込んでくる。
じっくりと中を確かめるように、形を覚えろと言わんばかりのその動きにゾクゾクと身体の芯が喜びで震えた。
「あっ、ぁ、はっ、……あっ、ぁ」
俺の身体を知り尽くしている愛は、良いところを確実に突いて、強い快楽を逃がそうとする俺の腰を掴んで引き戻す。
「後ろ向いて」
愛の言葉に抜けないように注意を払いながら、快感で震える身体に力を込め、後ろを向いた。
「Good boy 」
喜んだのも束の間。
さっきとは違い、奥を嬲るように、腰を動かす愛。
思わぬ快感に思考が追いつかない。
「ふ、ぁ、あっ!や!っ〜〜まって、おく、やだっ、ぁ」
「やだ?ほんとに?」
「あっ、ぁっ!こわ、こわいっ……おくっ、すご、ぁ、……っあたまふわ、ふわ、してっ……ん、ぁ、おかしく、なるっ」
「大丈夫。これまだ奥じゃないよ」
「ぇ……?ぁ、や、まっ、なにっ!あ゙っん゙、っ〜〜」
ぐぽっ、と身体の奥で音がした。中に入っていた愛の先端が、入ってはいけないような、奥をこじ開けて俺の中を暴く。チカチカと、目の前が光って、頭がショートしたような感覚を感じた。
「ぁ……?ゃ、、?ぇ……ぁっ……?」
チカチカと光る視界、理解の追いつかない頭。
耳の奥では俺の首と愛の手首に繋がれたチェーンの音だけが、鮮明に聞こえていた。
するり、と愛の指先が鼠径部の火傷跡をなぞって下腹部へと触れた。
「奥、入っちゃったね」
耳元で甘く囁いた愛の言葉を聞いた瞬間、理解した。
(ぁ……はいっちゃった……はいっちゃいけないとこ、いまっ、はいってる……っ)
ぐっ、と下腹部に触れていた指先に愛は力を込めた。
押し込めた指先は丁度、奥まで入っている場所の真上で。
「ゔぐっ……?ぁ、ぅ、な、に……?」
「ここ、入ってるのわかる?」
吐かない程度のギリギリの力加減で愛は俺の下腹部を押す。内側と外側からの圧でわけもわからない感覚が押し上がる。
「へぁ……?あっ、ぅ、ゃ、ぁっ……っ!あ゙ぁ゙っ〜〜」
ぐぽっと奥から抜ける感触。感じたこともないそれに頭が真っ白になる。
「奥、もっと気持ちよくなろうね」
「ぁ、ま、まっ──ぁ゙あ゙っ、〜〜っ!ぅ゙、……!っは、ん゙っ、ゃ、っ〜〜ぁ゙!」
ぐぽぐぽ、と愛は奥を開いては入って、引っ掛かりを抜いてを繰り返す。
違和感すらあったそれは次第に甘い快楽へと変貌を遂げていく。身体の芯から痺れて、湧き上がる快感が身体中を支配する。
「はっ、ぁ、っ……奥、すごい締め付け、……っ」
「ん゙っ、ぁ、っ……あ゙ぁっ!……っ゙」
「イきそう?っ……」
「も゙、むり、ぃ゙っ」
「いいよ、っ……おれも、……っも、イク……っ」
「ぁ、あ゙っ……ち、ちかっ゙……」
「……っ、Cum 」
「ん゙ぁぁあ゙っ゙〜〜……!!っ!」
真っ白な頭の中、チカチカと点滅する視界。呼吸の仕方も忘れるほど強い快感に支配され、俺の身体はビクビクと震えていた。
ズル、と俺の中から愛の熱が抜けていく。物悲しく感じるそれを、ぼーっとする頭で考えていた。
ふいに、愛の手が俺の首元のCollarを撫でる。
思わずその手を掴んで、俺は愛の手のひらにキスを落とした。
(ちか、おれのちか……おれの、愛しのDom……ちか、ちか)
「うん、いい子だね。真白」
俺に覆いかぶさるように、愛は反対の手で優しく頭を撫でる。そして無数のキスの雨を降らせた。
「ちか……」
「ん?」
ふわふわとする頭の中、俺は愛の琥珀色の目を見つめた。
甘く、優しい微笑みを浮かべる愛は小首を傾げている。
「愛してる」
(誰よりも、何よりも、俺は、愛だけのもの)
「俺もだよ。真白」
嬉しそうに、それでいて少し恥ずかしそうに笑った愛は、とても綺麗だ。
「愛してるよ」
囁かれた愛の言葉は、甘く深く、身体中を巡る。
二人の距離が近づく、唇が触れるまであと数センチ。
影が重なる瞬間、二人を繋ぐCollarとLeashのチェーンが、静かに音を立てた。
Fin.
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