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番外編②.初めての夜、二人の結末(終)

 フッと気が付くと、おれはカウンターで眠っていたらしい。クスクスとした密やかな笑い声で目が覚めて、顔を上げると隣の女性が別の人になっていて、その人もずいぶん親し気に、宇都木と楽しく会話をしているようだった。 (……何だよ)  宇都木の奴、自分がモテてるところを俺に見せたかったのかよ。そんなん態々見せてくれなくても、じゅうぶん実際知っているっての。思って目を細めて宇都木を睨むと、俺に気づいた宇都木が『お目覚めか』と声をかけてくる。 「もう上がりの時間だから、着替えてくる。ちょっと待っててくれ」 「ん、ああ……」  言って宇都木は女性客に挨拶して『宇都木くん、もう行っちゃうのぉ?』と宇都木をホストか何かと勘違いしているような客に踵を返して、カウンターの奥へと消えていった。三分もしないうちに私服に着替えた宇都木が出てきて、俺の腕を掴んで肩に担ごうとしてくるから、バシッとその手を払ってしまった。 「なんだよ透、酔ってるんだろ」 「や、そこまでじゃないって! 一人で歩けるし!!」 「そうか? じゃああとは、俺ん家で飲み直すか」 「えっ」 「マスター、お疲れさまです。お先に、」  周囲の目も気にせず、宇都木が俺の手を引いて俺を連れ去るから、さっきとは別の女性客も俺たちを見ては『なんだ、そーゆーこと』と何やら誤解と言うか納得してしまっている。なんで? 今何時だよ。響が心配するだろ。色々と言いたいことはあったけれど思うところがあって俺は黙って宇都木に引っ張られて、バーから歩いて十分の、比較的繁華街に近い宇都木の新しい1Kのアパートに連れ込まれてしまった。 「俺はビールでも飲むけど、お前は?」 「いや、その……水を」 「やっぱり酔ってるんだろ」 「ちょっとだけだよ」  宇都木の部屋は1Kの割にはそこそこ広くて、グレー基調に綺麗に整理整頓されていて、さすがイケメンってやつは部屋も綺麗だ。と、かつて独り暮らしだった時の俺の部屋と比べてしまう。でもどうして、宇都木は『じゃあ俺も』とかなんとか言って俺たちと一緒になって実家を出たんだろう。奴の実家は大学から近いし、可愛がっている犬もいるし、家を出る理由が思いつかない。とまで考えてハッとする。独り暮らしの家ならば、ああいう場所でバイトをして、いろんな女性と出会って、部屋に呼ぶことができるだろう。そういうことか……勝手に納得して舌打ちをすると、水を持ってきてくれた宇都木が『透?』と首を傾げた。 「なに不機嫌になってるんだ。俺がバイト先でモテてるのに嫉妬したか?」 「ちげーよ馬鹿! ってか、いや、」 「ん?」  テーブル前のベッドに座った俺の隣に、宇都木がビール缶を片手に座り込む。座った途端に手を重ねられて『っ!?』と吃驚して手を引っ込めて、すると宇都木がニヤニヤ俺の表情を観察してくるから居心地悪く、俺は薄い唇をとがらせる。 「お前、自分がモテてる現場を俺に見せて楽しいのかよ!」 「ふはっ、まあ……正直言って楽しいな」 「ああやって女の人を誑かして、この部屋に連れ込むために独り暮らしを始めたのか?」 「はあ? 何言ってるんだ」 「だってお前、お前には独り暮らしをする理由なんかなく、てぇっ!?」  ドンっと胸元を突かれたと思ったら、そのままベッドに仰向けに縫い付けられてしまって声を上げる。少し怒ったような目元で、でも口元は笑っている宇都木が俺を見下ろしていて、逃げようとしても良く鍛えている、喧嘩も強い宇都木の下からはぜんぜん逃げられなくて。 「勘違いしてないか、透」 「なっ……やめろよ! 俺は酔ってない!!」 「この俺が、好きでもない女を抱いてまわってると思ってるのかよ」 「えっ、それはだって、お前ってモテるし、」 「俺が独り暮らしを始めたのは、お前が響と一緒に住み始めたからだ」 「??? どうして今、響が出てくるんだ?」 「響のいる家じゃ、両親のいる実家じゃあ、いつか俺に堕ちてくるお前を好きに抱けないだろ?」 「はぁっ!? んっ、」  口付けが降りてくる。そんなに酔ってないし意識も混濁していない俺への、少しビールの味がするキス。っていうかコイツの言い分だと、つまりは俺を抱くために独り暮らしを始めたってことかよ!? 馬鹿じゃねーの!! 思っても宇都木の舌は上手に俺を堕として、口内を蹂躙して、ついでとばかりに俺のシャツをするする片手で捲って肌を晒させてくる。 「そういう勘違いをされるのはまあ癪だけど、そうやって女の子に嫉妬するお前は可愛いな?」 「おっ、おいヤメっ……うひゃっ」 「透は乳首が弱いもんな、たくさん可愛がってやる」 「ぃあっ、摘まんで引っ張るな、こらぁっ!?」 「じゃあグリグリするか?」 「ぅああっ、押しつぶすなぁっ!?」  舌を離して俺の顔中にキスしながら、宇都木は言葉通りしつこく乳首を弄って、そこを固く勃起させてくる。硬くなって勃ちあがった俺の両乳首をトントンと指の腹でノックしながら、いつのまにやら宇都木は上機嫌だ。 「良い反応……気持ち良いだろ」 「はぁっ……ま、っさか、どうして俺が、お前なんかのっ、ゃあ!?」 「素直にならないと、強くするぞ?」  ぎゅうっと先端を潰そうとするくらいに両方を強く摘ままれて抓られて、俺はビクビク、腰を浮かせて涎を垂らしそうになる。『はっ、』と息を吐いて腰を震わせて、涙目で宇都木を見上げて懇願する。 「もっ……勘弁っ。ちくび離せっ」 「どうしてだ? 痛いのかよ?」 「う゛っ♡ ちがっ、ちがううっっ♡ もっ、強くしたら、勃っちまうからぁ」 「ふふん、素直になれたな? ご褒美っ!」 「あぅっっ♡!?」  強く摘まんでいた乳首を指で弾かれると、ズボンの中の勃ち上がった性器から、ぴゅるっと先走りが零れて、下着が濡れた。それを見下ろして、フルフル震えて図体に似合わず子ウサギみたいに震えると、宇都木がそんな俺に舌なめずりをして笑う。 「下、脱がせるぞ」 「う、うう……」  このまままた、いつかの病室みたいにイかされるのであれば脱ぐことも仕方ない。思って大人しく下着とズボンを引っこ抜かれる。てか、なんで全部引っこ抜くんだよ!? 思って『あっ!?』と下穿きに伸ばした手を恋人繋ぎにされて、そこにキスされる。 「透。頭の上の引き出しから、ローション出して?」 「ローション!?」 「言っただろ。この部屋は、お前を抱くために借りてる」 「だっ!!?」  さっきも言われたけれど実際こういう格好で改めて言われると、俺もサァっと青くなってしまう。でも下半身の勃起は萎えることが無くて、だからまるでこれではそれを承諾しているようだと震える。俺がなかなか言った通りにしないから、焦れた宇都木は俺の上に手を伸ばし、引き出しから言った通りのローションのボトルを取り出した。ボトル。でかい。そんなに使うもんか? 男同士には詳しくないから疑問だけれど、そんな合間に俺の両脚は宇都木の肩に担がれてしまった。 「じゃあ、解すから大人しくな?」 「ひっ、ちょ、ま、待てって落ち着け!? 俺、尻の孔とか触ったこともないしっ」 「俺はお前の尻に、触った覚えがあるから大丈夫だ」 「ぎゃあっ! ぬるぬる!!?」 「そう色気のない声を上げるなよ」  脚を担がれたまま尻にローションを垂らされて、かとおもうと入り口にボトルの先っちょを宛がわれ、そのまま勢いよく、ローションを『ブチュッ』とナカに注がれた。 「ふぅっっ♡!!?」  これは逆流だ。出すところに入れられている。でもなぜか、俺の声には甘さがあって、そのまま取り急ぎって感じに俺のケツに突っ込んできた宇都木の指を、俺はぎゅうぎゅうと絞めつけてしまう。 「はぁっ……力、抜けよ」 「むりぃっ! うっ、宇都木、指抜けっ!?」 「嫌だね、今日こそお前を抱く。あのお嬢様部長への迷いも全部、俺とのセックスで断ち切らせる」 「ぶちょーはっ、いま、かんけいなっ、うぁっ♡」  ぐいぐいゴリゴリ、中を色んな風に無理やりに弄られて、でもその中、俺のナカの隆起を見つけた宇都木は興奮した様子でにやっと笑った。 「ココ、お前の良いトコ。俺は今でもやっぱり忘れてなかった」 「ひぃっっ、はっ♡ あ♡ うっ、うそっ♡ そこっ、変っっ!!?」  ゴリ、ゴリ、ゴリ……コリコリコリ。最初はゆっくり、段々小刻みに指を揺らしてそこを撫ぜられると、元々勃起していた性器がもっとパンパンに膨れ上がって先走りがぴゅるぴゅるだらしなくあふれ出るから俺は『!? っっ!!?』と大混乱だ。宇都木は俺に、それの名前を教えてくれる。 「前立腺、名前は知ってるだろ? お前を俺のモノにするスイッチ、」 「あっ、あっ、コリコリらめっ♡ コリコリっ、こりこりすりゅなっっ♡♡」 「そんなにイイか? でも、もうちょっと広げるから我慢な」 「ふぐっ!?」  一旦コリコリが終わったと思ったらもっと奥に指を突き刺されて、しかもどうやら宇都木は本数を増やした様子。やっぱりぎゅううと指を絞めて、俺は上半身をねじって強く、枕に抱きついてそれに耐える。 「はぁっ、はっ、はっ♡ あ、深いっっ♡♡ 宇都木、うづきぃ♡」 「……お前、こんなに簡単に身体を許していいのかよ。もっと抵抗したらどうだ?」 「っんなトコ弄られてっ♡ はぁっ♡ 力はいんないっっ♡♡」 「そうか、くれぐれもほかの男に、この中は触らせないようにな」 「ほかのどの男がっ、んなトコ触るかよぉっっ!!? ひくっっ、」  ジュポン。指が一気に二本引き抜かれては『はぁっ』と息を吐いて俺は落ち着こうとする。終わったか? と思いたいところだけれど、鈍い俺でもこの流れを体感しては次を予測できてしまう。思った通りに宇都木がズボンからギンギンに勃起したブツを取り出して、俺のケツに宛がってスリスリ擦って焦らしてくるから『うああっ♡』と変な声を上げてしまう。 「はぁっ、うづきぃっ♡ もっ、やめっっ……」 「そう言う顔は、やっぱトロットロなんだよなぁ?」 「おまっ、え……俺にソレ、挿れたりしたら絶対に許さない、許さないからなっ!?」 「それは挿れて欲しいってことか? 透、好きだ。なぁ、挿れても良いよな?」 「俺は好きじゃ、ない……! お前のことなんか、お前なんか、綺麗な女の子でも抱いてれば良いんだよっ!!」 「それ、嫉妬かよ。愛の告白と取っても良いよな透、入れるぞ、なあ透、もっとよく顔を見せてくれよ」 「ふわっ♡!?」  スリスリ焦らされながら、優しく頬を撫ぜられて、涙を浮かべた表情を晒してしまった。ドク、と俺の尻にあたっている宇都木のソレが脈打って、脈打ったと思ったら次の瞬間、熱い釘に打たれるような感覚に、俺の全身が襲われた。ズンッ! と、一気に、一気に根元まで、宇都木の野郎が俺に挿入したのだ。 「か……はっ!!?」 「アッ、つぅ……、透のナカ、こんなに狭くて、熱くて、滅茶苦茶イイ、」 「くっ、るし……♡ はっ、宇都木、うづきっ、もっ、良いだろ♡ 抜けよぉっっ!?」 「はっ、冗談! 今からお前を、もっと滅茶苦茶にするんだからなっっ!!」  ズルルッ! 一気に抜かれたと思ったら、ズチュン!!である。『はぁ゛っっ♡♡』と濁った甘い声を上げて、俺はシーツに爪を立ててから、そこをぎゅうッと握って耐える。 「とおる、透、好きだ透っ! ずっと、ずっと俺にはお前だけなんだっ」 「ひはっ、あっ、あっ、あんっ♡ あふっっ♡!?」  ぱちゅ、ぱちゅん! ぱちゅん! ぱちゅん!! 中をピストンされて、俺だって正直、正気じゃない。甘い声が上がるのは、気持ち良いからだ。どうして初めてで? いいや初めてじゃない。幼いころに、コレの疑似体験、宇都木に指までは入れられていたから。でもこんな、熱くて太くて固いものは初めてで、生き物みたいにビクビク脈打っているそれに、なんていうか俺はメロメロだ。断じて宇都木にメロメロなわけじゃない。俺は宇都木の硬い性器にメロメロにされているのだ。 「あっ、あっ、あっ、あっ」 「透っ、俺のこと、もっと呼べよっ!」 「んんっ♡ ふぇっっ? あっ、うづきっっ!?」 「そうっ、もっとだっっ、透!!」 「うづきっっ、うじゅきっっ♡♡ はへっっ、はぇっっ♡♡!?」  だらしなく舌を出しっぱなしで名前を呼んで、宇都木のピストンを受け入れていると、ぐいっとおれの脚をもっと上まで折り曲げて、無理やりに宇都木が俺にキスしてきた。舌が絡んで気持ち良いから、俺も思わずそれを絡めて遊んでしまう。 「んんぅっっ♡ んふっ♡ んんっ♡♡」 「はぁっ、透エロすぎっ♡ そんなエロい顔、ぜったい他の男には見せてやらねー!」 「んっ、んくっっ、んんっ♡ ぷはっ、宇都木、うづきもっとチュー♡♡」 「セックスしながらのキスが、お好き、かよっ?」 「うんっ♡ うんっっ♡♡ キス好きっ♡ 宇都木のチュー、大好きだぁっっ♡♡」 「んっ、ふうっ♡」 「ふっ、ふっ、ふぅっっ♡ んん゛っっ!!?」  お互い中々耐えた方だと思う。宇都木は俺にキスしながら、最後ドチュン! と、俺の最奥を激しく突いて、ゴムもしていないのにそのまま俺に、 「くっっ、」  どぷっ♡ びゅー♡ びゅるっ♡ 「はぁ゛っっ♡♡!!?」  そう、中出しをした。注がれる、男性の精を注がれて雌にされる初めての感覚に俺も『あっっ♡ あうぅっ』と腰を震わせたけれどまだ達するまでは行かなくて、それに気が付いた宇都木に前をゆるゆる弄られて(変な所で気の利くやつだ)、宇都木の少し後に俺も、宇都木をナカに宿したままで射精をした。 *** 「俺のキスが好き、までは聞いたけど」  脱力して尻を出したまま、ベッドにうつ伏せになっている俺の髪を宇都木が撫ぜてくる。耳元にまで顔をおろして、俺にハッキリ囁きかける。 「俺のこと、『好き』とまではまだ聞いてないぞ、透?」 「……そう思うなら、無理やりに抱くなよ、」 「無理やりって、どこが? お前だって最後はノリノリだったじゃん」 「挿れたりしたら、絶対許さないって俺は!!」 「それは一生、俺を覚えてるってことだろ。お前に俺を、刻み込めるんなら上等だ」 「馬鹿か、お前……おれ、おれはだって、だってあんなに気持ちいいなんて!!」 「『気持ちいい』? やっぱり良かったんだろ。俺たちって身体の相性が良いんだな」 「喧しいわ! 頼むから、少し休ませてくれ……」 「俺のこと『好き』って言ったら休ませてやる」 「ひぃっ!?」  精液を垂らしていた尻に、またズプッと指を突っ込まれて赤ら顔で振り返る。手を添えて、手首を掴んで止めようとしても、中を弄られると力が抜けてどうにもうまくいかない。 「中出し、良かっただろ? でも、腹を下す前に掻き出さないとなぁ」 「ふぇっ、あっ♡ やっ♡ ナカ、もっ、弄るなぁっっ!?」 「俺のこと、好きか?」 「やっ、なんでだよっ!? ふっ、ううっ♡ あんっ♡」 「好きって言ったら……止めてやろうかな」  そう言われて、正直また勃起しはじめていた俺だから、再び宇都木にイかされたくなくて、枕に顔を埋めながらくぐもった声で、 「好きだから、」  そう呟いたらぐいっと指をもっと深く突っ込まれて『ひゃうっ』と声を上げた。宇都木を振り返って顔を上げると、にやにや顔の宇都木のイケメンが意地悪に煌めいているのが見て取れた。 「聞こえねーなぁ?」 「くっ、ううっ♡ おまっ、嘘つけぇっっ!?」 「もっとハッキリ、目を見て言ってくれないと解らない」 「んなっ、はずいこと出来るかぁっっ!! ひんっ♡」 「あーあ、そっか。透はそうやって俺を焦らして、また俺の指でイきたいんだな?」 「あっ、あっ♡ あふっ♡ もっ、ナカいやだぁっっ♡♡」 「嘘つけ、こんなにグズグズで、また顔も蕩けてきて、」  ピロリロリン、ピロリロリン。 「ぎゃあっっ!!?」  俺のスマホであった。この情事を見られたかのような錯覚で色気のない声を上げて、そしたら宇都木が案外サッと指を抜いてくれた。俺のスマホの画面を勝手に眺めてからおれにそれをパスして言う。 「響だ、」 「ひっ、響!!」  慌てて俺はスマホを落としそうになって、なんとか落とさずベッドで起き上がって通話をオンにする。 「もしもしっ、どうした響!!?」 『お兄ちゃん、今どこ? 連絡もなしにこんな夜中まで出かけたままなんて珍しいから私、心配したんだよ』 「あっ、ごめん! ええと、今何時……あっ、一時!?」 『そうだよ、もう終電も終わってるし……お兄ちゃん、また酔ってるの?』 「いや、酔ってはいないんだけど……ってうわ!」  後ろから宇都木に抱きすくめられて、しかも耳元(電話口)に宇都木が声をかけてくるから俺は余計に焦る。 「響、心配するな。透は俺の部屋だぜ」 『!! 宇都木さん!? あっ、宇都木さんのバイト先から、そのままお兄ちゃんをお持ち帰りしたってことですか!!』 「まあそんなとこ。とにかく透は元気だから、今日は俺の部屋に泊まらせるよ」 『そんなっ!ついにお兄ちゃん、宇都木さんの魔の手に……』 「ひっ、響。兄ちゃんは、ハハ……大丈夫だって、うん」 『……良いの、お兄ちゃん。私も宇都木さんが独り暮らしを始めてからは、いつかこうなるって解ってた。お兄ちゃんだって宇都木さんのこと、好きなんでしょ?』 「えっ!?」 『だから部長さんにも応えられなかったんだよね、解ってる。でも……部長さんにもちゃんとハッキリしてあげてね』 「あ、ああ……うん?」 『じゃあ、今日はお休み。また明日、お兄ちゃん』 「う、うん???」  響からの通話が途切れる。宇都木はおかしくてたまらないといった感じに俺の肩口に顔を埋めてクツクツ笑って、混乱中の俺にやっと顔を上げたと思ったら、俺の耳にキスしてきた。 「響からの公認も得られたことだし、晴れて俺たちは両思いだなぁ透?」 「???」 「部長のことも、明日にでもハッキリさせてこい」 「……え、ええ!?」  そういうわけで、疑問だらけのまま宇都木の部屋で一晩寝かされた俺は、見事に外堀全域を宇都木に埋められてしまって、更に言うと次の日には部長と大学のカフェで二人、並んで座っている。 「解ってるわ、市原」 「……部長」  俺に呼び出された時点で暗い表情だった部長に、俺は眉を上げてまだ、何といったらいいのかもわからないのだ。 「宇都木くんと、想いが通じたんでしょう? あなたが彼を、元から憎からず思っていたことも解ってた」 「お、思いが通じたっていうか、無理やりに……いや」 「あーあ、次の映画はBLモノにしようかしら!!」 「いやいや、部長!!?」 「ふふっ、冗談よ。せいぜい安来に殺されないようにね」 「あっ」  そこで思い出す。『部長を振ったら殺す』と俺に言って血の涙を流していた安来先輩。思わず周りをキョロキョロして、そしたら柱の陰から俺たちを覗いている安来先輩のマッチョが見えて、俺がサァっとまた青ざめた所に宇都木がやってきて、安来先輩の肩を叩いた。 「?」  小首を傾げて二人の様子を見ていると、宇都木が何かを安来先輩に耳打ちした様子。とたん、ブルブル安来先輩が全身を震わせて、それから急に、号泣しながら俺と部長の元(というか部長の元)に駆けてきた。 「部長ー! 部長には俺が居ます!! 良ければ俺が部長をお慰めいたしますー!!」 「いや、それは結構よ」 「ぶちょーーーーう!!!?」 「フフッ、嘘ウソ。ありがとうね、安来。でも私って未練ったらしいから、暫くはそっとしておいて」 「部長……!!」  部長を振っておいてなんだけれど、俺から見たらこの二人、ベストカップルなんだけどなぁ。思っていると憎き宇都木がやってきて、へらへらしながら俺の手を取って、 「では部長、透は貰っていきますね」  そう言うから部長も苦笑いで、 「大事にしなさいよ。二度と市原のこと、手放さないようにね」  なんていうから『はい』と宇都木は頷いて、その場で俺の耳元に、皆の前なのにキスしてきたからカフェは、『キャー』『ぎゃああ!!』と(『宇都木くん頑張って』隊の)女子の喜びの黄色い声で一杯になったのであった。 (なんだ、これ? 何だこれ!? 俺は一回宇都木に無理やり抱かれただけなのに、どうして俺たちはみんなの公認になってるんだよ!!?)  実のところ、俺との噂を仄めかして大学中に流したのも宇都木本人で、昨日の内に部長に俺とのことをラインしたのも勿論宇都木で、長い時間をかけて響を説得したのも……そう、全部がいま俺の手を引いて一歩前を歩いている、宇都木の仕業であるのである。まだそのことを解っていない俺はただ赤面して引っ張られているけれど、この後徐々に事の顛末を知ってしまっては、少し未来の俺は、もう恋人になった宇都木にキレ散らかして不貞腐れるのであった。 『リマインド・リコレクション~映研青春物語~』本当に終わり。

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