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第12話

 あの日から数日が経過して。  俺は藤咲宅から解放された。  次の日は腰が猛烈に痛くて、猛烈にだるくて辛かったけど。  哀しい哉。俺はしがないサラリーマンなので何事もなかったかのように出社した。    社内で藤咲とすれ違うたび。  俺の身体が疼いて仕方がなかった。  俺の身体は確実に藤咲を求めていて。  懇願したくてたまらなかった。  あの日から。  身体が確実におかしくなっているのが分かる。  藤咲がいなくても、藤咲を求めてしまう自分がいて。  藤咲を想いながら一人でシたこともあった。  なんでこんなにも恋しいのかが分からなくて。  分からないのに逢いたくて。  身体を触ってほしくて。  疼いて、仕方がなくて。  身体が────火照る。  今日も社内で何度か彼を見かけるたびにナカがキュンキュンして。  藤咲に突いてもらいたくて仕方がなかった。    今の俺は。  どんな顔をしてるんだろう。  平然とできているだろうか。  それとも。  あの時みたいに。  だらしない顔をしてるんだろうか。  ♪〜〜  内線電話が鳴ってハッと我に返り。急いで受話器を取る。 「はい、営業課の美波です」 『美波さん』  藤咲……ッ!?  ダメだ。  声を聞いただけでこんなにも興奮している自分がいるなんて。 「──どうした?」  気付かれないようにしなきゃ。  平常心。平常心。 『そんな顔してたら、バレちゃいますよ?』 「え……っ?」 『あと俺のこと見過ぎです。そんなに俺が欲しいんですか?』  欲しい。  欲しくてたまらない。    嗚呼。  言ってしまいたい。  二人きりなら言えるのに……。  ドキドキが止まらない。 『もうすぐお昼なんですけど、よかったら一緒にどうですか?と思って』  え?  思わず壁時計に目をむける。  ほんとだ。もうそんな時間になってたのか。  それすらも気付かなかっただなんて……。 『だから、あとちょっとの間だけ。──耐えてくださいね?』  そう言い残し、藤崎からの内線は切れた。  …………。  腕時計で時間を確認する。  お昼時間まで、あと少し。  あと少ししたら。  触ってもらえる?  弄ってもらえる?  突いてもらえる?  そんな妄想をしてる間に、時間はあっという間に過ぎ去っていて。  廊下が黄色い悲鳴で騒がしい。藤咲がくる合図。  ドキドキしてる。心臓が飛び出そうだ。 「美波さ〜〜ん!」  営業課の入り口に藤咲昌也がこちらに向かって手をブンブンと振っている。  ……嗚呼。  早く。  早く。  はやく。  俺を、メチャクチャにしてくれ。──昌也。

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