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第5話・恋心。(10)

「意識下でアルテミスが言ったんだ。俺もその言葉が信じられなくて、さっき魔力を探ったんだが、アルテミスの言うとおりだった。奴らが暴れている」 「そんな……」  ユーインは信じられないと首を振る。  けれど、先ほど現れたベルセフォネの言葉が頭を過ぎった。 『何かが這い上がってくる不穏な空気を感じる』  果たして彼女が感じたものはコレと繋がっているのだろうか。 「ユーイン?」  考え事をしていたユーインはエイドリアンに呼ばれて顔を上げると、エイドリアンの顔がすぐ目の前にあった。  親指の腹でそっと下瞼を撫でられ、ユーインの呼吸が一瞬止まる。それと同時に心臓が大きく跳ねた。 「腫れているな、泣いたのか?」  それはあまりにも優しい触り方だったから――。  訊ねた彼の耳障りの好い低音が胸に響く。  ユーインの顔に熱が灯る。 「顔も赤いな……」  顔が赤い理由がまさか好きな人に触れられているからとは言えず、口ごもった。 「身体はもう大丈夫なのか?」 (貴方が大切な血液を分け与えてくれたから――)  ユーインは息が詰まりそうになりながらもゆっくりと頷いて見せた。 「必ずベネットを見つけてみせる」  そう。  だからこそ、そのためにも――。 「ぼくも行きます」  ユーインは真相を知るため、後ろ髪を引かれる思いで立ち上がる。エイドリアン同様に悪魔退治の身支度に取り掛かった。

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