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ノンケの先輩を堕とすためのミッション♡7

***  ローテーブルに置かれているお重を片付けながら、お父さんに声をかける。 「今日は先輩とのセッティング、ありがとうございました。ついでに、スマホの通話も切っておきますね」  僕がここを出た際に、どんな会話がなされるのかがどうしても気になり、お父さんのスマホを通話状態にして、盗聴させてもらった。  立派なデスクの上にちょこんと鎮座している、お父さんのスマホの通話をオフにする。 「おまえが気にするような変なことを、俺は言ってなかっただろう?」 「お父さんの言葉より、先輩の言葉が聞きたかったんです。僕と兄弟になりたくなかった先輩の拒否具合に、思わず笑っちゃいました」 「そうやって彼の嫌うことばかり言ってると、一緒に仕事をする際に、距離を置かれるんじゃないのか?」  そのセリフを聞いて、ひょいと肩を竦めてみせる。 「お父さんの息子ってだけで、社員の方々に距離をとられることには、もう慣れっこですけどね」 「普通に接してくれる島田くんを見習って、ほかの社員も同じようにしてくれるといいけどな」 「そんなの期待してません。僕はただ憧れの先輩と、一緒に仕事ができるだけで満足です」  お店に回収されるお重を風呂敷に包み直し、急いで小脇に抱えてから、きっちり一礼して部屋をあとにした。 (お父さんが僕の教育係に、島田先輩を指名してくれて、本当に良かった!)  朝の挨拶をするためだけに、先輩が現れる時間帯を狙って部署から脱出するのは、正直なところ容易じゃない。新人の僕が、同じ時間に部署から消えることを、教育係の林さんが疑問に思っているかもだけど。 「こういうときに『花園』という名字が、ちゃっかり役に立ったりするんだよね☆」  お父さんに呼ばれてとか、お父さんの用事でなんて言えば林さんはおろか、誰もなにも言えなくなる。  ゆえに今回の会食も「お父さんに呼ばれて」のひとことで、簡単に部署から抜け出すことができた。 (まぁ親の権威をここぞとばかりに使ってることで、部署では扱いにくい新人のレッテルを貼られてしまっているけれど)  合同プロジェクトがはじまったら、島田先輩のいらっしゃる第二営業部に出向することになるので、部署で貼られたレッテルなんて関係なくなる。 「あ~楽しみだなぁ。先輩からエッチなご指導を受けることができたら、もっともっと好きが濃くなってしまうこと、間違いなし!」  こうして僕は、合同プロジェクトが開始される日を、指折り数えて毎日を過ごしたのだった。

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