1 / 13

第1話 再会

彼と再開したのは、偶然だった。 「真里夜か?」 「・・・舘岡?」 偶々出た週末のパーティーで、昔の男 舘岡と再会してから、昔の様に肌を重ねるのに、時間は掛からなかった。 「ん!! ああ、ちょ・・・まって・・・。」 「こっちは、そうは言ってないけど?」 雪崩れ込む様に入ったホテルの一室。 着ていた互いのスーツは、ベットまでの間に脱ぎ捨てられていた。 初めてのキスもセックスもこの男とだった。 自分に圧し掛かる舘岡に、昔の面影を見つけ、思わず中を弄っていた男を締め付ける。 「なぁ、真里夜。オレと付き合わないか?」 「え? 付き合うって・・・。」 互いに何度か、果てた後。 気怠い身体を抱き寄せ、真里夜の髪に舘岡は鼻を埋めながらそう、囁いてた。 昔から、真里夜の少し癖のある髪に舘岡は触れ、匂いを嗅ぐのだった。 汗を流してない時でも、お構いなしに嗅がれるのは恥ずかしかったが、舘岡のその癖も、舘岡の汗の匂いも真里夜も嫌いではなかった。 だから、一度も嫌がる事はしなかった。 ふにふにと、耳朶を弄りながら舘岡が真里夜に確認する。 「今日、誘いに乗ったって事は、フリーなんだろ?」 「・・・・・。」 そう、今日この男と再会したのは、結婚相手を探す為だった。 医学と科学の発達により、性別問わず妊娠が可能になったこの時代、性別はもはや関係無く。真里夜は、家業のメリットになる相手を第一に相手を選んでいた。 否、選ばれていたのだった。 真里夜は、大学を卒業後、系列会社で経験を積み、父の後継者として仕事を覚えるか、妊活期間に入る予定だった。 その為、家業にメリットのある相手が次々と候補に上がったが、今だに真里夜は婚約者が決まらなかった。 「・・・真里夜、家の為に無理しなくても良いんだぞ?」 「父さん、無理なんかしてないよ。」 「そうか・・・。なら、これも持って行くと良い。」 手渡された一通の招待状と、新居のカードキー。 まさか、その新居で最後の候補者だった男が、真里夜が出張から帰る日に、用意された新居の寝室で、従弟のユウタと激しく絡み有っているとは思わなかったけど・・・。 最初の婚約者候補は、紹介された翌日に、ユウタの部屋から出てくるのを日課のランニングにでた時に見てしまったし、その次の婚約者候補には、ユウタと3Pをしないかと誘ってきた時は、なんとも言えない気持ちになったけど・・・。 「ああ、またか」とも思った。 従弟のユウタは、分家の血筋で、真里夜より1つ年が下で、昔から一族で集まると真里夜に引っ付いては、真里夜の持っている物を欲しがった。 真里夜の家は、古くから人材を育成し、弱きに手を差し伸べて来た。今は、教育、医療と行った分野で、加賀グループはトップシェアを誇っていた。そんな家の本家跡取りが、真里夜だった。 真里夜は幼き頃から、「多くを持つ物は、持たぬ物へ分け与えよ」と言われ育ってきた。 幼い頃は、その言葉に理不尽さを覚えてもいたが、それ以上に、従弟のユウタは周りを味方に付けるのが上手な子供だった。 「僕も、真里くんの持ってるのが良い!」 「僕も、真里くんと一緒が良い!」 最初は、お菓子や玩具。 大人も、真里夜より愛嬌があり、甘え上手なユウタに甘く。 「真里夜には、別の物を上げるから」と、真里夜が手にしていた物をユウタへ渡したのだった。 それは、人でもそうだった。 ユウタが真里夜と同じ高校に進学を決めたのと同時に、真里夜の実家で一緒に暮らす事になった頃 わざわざ真里夜のクラスに来ては強請ったのだった。 「僕も一緒に遊びに行きたい!」 「僕も一緒に勉強する!」 気が付くと、友人は自分達に懐いてくるユウタと遊ぶ様になり、真里夜の友人はユウタの友人になったのだった。 だから、自分の婚約者候補達が、ユウタの婚約者候補になっても真里夜はなんとも思わなくなっていた。 家の為の相手であれ、自分の婚約者と正式になれば、その相手だけを大事にするつもりだったが、大体がそうなる前に、ユウタと肉体関係になっていた。 流石に、身内と関係のある相手とは無理だと、親に告げると反対された事は一度も無かった。 それでも、懲りずに、真里夜は婚約者候補を紹介して貰ったのだった。 カードキーと共に渡された招待状も、その一つだった。 医療関係の企業、病院、製薬会社の、独身者向けの交流パーティー。 中身は、なんの変哲もない、企業婚活パーティー。 婚約者候補が居た、先日迄は参加するつもりは無かったが・・・ ユウタの婚約者候補となったのを見たその日に、出席の返事を出し、部屋の荷物をまとめてホテルに身を寄せた。 そのホテルのベットの上で、唯一の友人で、元恋人だった男の腕に真里夜は抱かれていた。

ともだちにシェアしよう!