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出会い
ドンドンドンドンっ
扉を叩かれる音が聞こえるがオレの意識は遠かった
バンっ
蹴りつける音とともにヤツは現れ、ビクッと体が揺れたが身体が動かない。
空腹もあるが…たぶん間もなくアレがくる。
3ヶ月ごとに襲ってくるあの現象がまたやってくる。
その時期の間は薬を飲み、ただひたすらにじっと静かに部屋に籠り、布団を被って耐える
いつもそうして凌いできたのに
今回の周期ではいつもと違う事態がこいつらによって起きた。
霞む視界に見えたのは金ピカのネクタイピンを付けて金のカフスボタンを付けたスーツ姿の男と後ろに従える2人のごろつき。
そいつらは靴のまま部屋の中へとあがりこんだ
「萌葱 あずさ…耳を揃えて借金返済してもらおうか?」
冷たく地を這うような低音ボイスが室内に響き、凍てつくような鋭い視線を感じたがオレは開いた通帳を握りしめ空腹にひっくり返ったままでいた
通帳残高…259円ー
床には数々の督促状とアパート解約通告書が散らばりまさに地獄のような状況だ
その状況をさらに悪くするかのように借金取りが現れた。
しかし、どうもいつもとは様子が違う
チンピラとは違う雰囲気が漂ようソイツは部屋を物色し、オレの前でしゃがみこむとオレの尻ポケットから財布を出し、中からなけなしの10000円を引っ張り出した
「ま…待って。それ、取られたらオレ」
「ならば…体を売れ」
「そんな…っ」
立つ瀬がないとはこの状況だろう
オレは騙された。
友人と思っていたやつの借金の保証人にされてしまいあっという間に破産してしまった
「それがないと…抑制剤も買えないっ。まずいんだよ!もうすぐ、発情期がくるっ。仕事に行けなくなったら返す金を稼ぐこともできやしない!」
「なるほど…Ωか?それは好都合だ。おまえは初物か?」
「え?」
「経験はあるのか?と聞いている」
「無いよ。いつもは抑制剤で抑えてる!」
「それは…なんとも愚かだ。その歳で性の悦びも知らないとは」
「あんたには関係ないっ」
「俺には大有りだ。初物ならそれなりに箔がつく。値を吊り上げられるだろう」
「ふざけん……な…ぁ、っ…まず…ぃ。抑制剤ないのに…」
「う…この香りは」
目の前の男は肘で顔を覆い、香りを嗅がないように身構えた
「すっげぇ、甘い香りだ…」
「こいつからだ…」
ごろつきの目の色が変わり、男は大声をあげた
「てめーらっっ、控えてろ!」
「う…うすっ」
「ヒートか?」
「うるさい…っ抑制剤があればこんなのはなんでもない…っ財布返してっ」
あずさは立ち上がり、男から財布を奪い中から一錠の薬をとり噛んだ
「最後のひとつがあってよかった…。あれ?…おかしい…治まらない?なんで…こんなことは今まで無かったのに?」
体が疼く…目の前の男が欲しい
訳が分からない
会ったばかりだというのにドクンドクンと心臓が跳ね、胎内が男を呼んでいるようだ
抑えたいのに抑えられない。それどころかますます気持ちが迫り上がってくる
(孕みたい…この男の精を注がれたい)
頭の中がソレしか考えられないほどに欲が優っていた
目の前の男もまた香りに誘因され、葛藤していた。
「萌葱あずさ。やむを得ない…この香りを撒き散らしたままでは話もできやしない。βのやつらですら反応するほどに強いフェロモンを放っていることに気がついているか?今は自制心がやつらにもあるが痺れを切らす前に抱くぞ」
「なっ…なんでっ」
「おまえもそのままでは辛いだろう」
「飲んだから!薬が効けばすぐに治まる」
「無理だ。目の前に極上のαがいて反応しないわけがないだろう。喜べ。俺がはじめての雄であることに」
「αだって?ふざけんなっ。オレはおまえなんかに抱かれる気なんてないっ」
「しかし股間が疼くのでは?勃ちあがり、雄が欲しいと淫らに孔がひくつき…ナカから雫が溢れ落ちている。違うか?」
「そ…それは」
反論できない。まさにその通りの状況に陥っていた。
「でも…ここじゃ…壁が薄くて…」
「生娘か?おまえは。仕方ない…今はこれだけしておこう。少しはマシになるはずだ」
がっと手が伸びてきて後頭部を掴まれると、唇に生暖かいものを感じた。
驚き口を開けると舌が入り込み、口内を舐めまわされ、思わぬことに体の力が抜けていき、力無くあずさはその場に座り込んだ。
たったそれだけのことなのに満たされる気持ちになりうっとりした表情をあずさは浮かべて遠くを見ていた。
「おまえら、、お姫さまを車に載せろ。恥ずかしがっておいだ。家に連れ帰る」
「は?わっ…ちょ」
ガタイのいい1人のごろつきに抱き上げられ僕は部屋から連れ出され、車へと運びこまれた
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