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第77話(最終話)それから・・・。
「うわ・・・。ルテの服・・・ぶかぶか。」
ボルテが手渡した上からすっぽりと被るタイプの服は、小柄なフィガロの指先、太腿を覆
い隠した。体格の差を確認する様に、フィガロは両手を顔の前にかざしながら、ボルテを見た。
「う”っ・・!」
ボルテが小さく呻きながら、胸を押さえた。
「ルテ!? やっぱり、どこか怪我とか・・・?」
伺い見上げるフィガロの胸元は、無防備にもボルテからは丸見えであった。
「うぐっ・・・。」
「・・・ルテ?本当に大丈夫か???」
心配そうにフィガロの黒くしなやかな尾がボルテの腕にすり寄る。
「う、うん・・・大丈夫。それよりも、フィー・・・会いたかった。」
グイッとフィガロの腕を引き寄せそのまま腕の中へと抱き込むと、フィガロの黒い耳がボルテの顎先を擽った。その事に、ボルテの腕に思わず力が籠る。
「うわっ・・・る、ルテ。ちょ・・ちょっと、苦しいよ?」
「あ・・・ゴメン。」
慌てて力を抜くと、フィガロの両手がそっとボルテの背に回された。
「・・ルテ、ボクも、会いたかった。」
そっとフィガロが囁けば、ゆっくりと何方ともなく二人の顔が近づき、唇が重な・・・・る前に、ドンドンとボルテの控室の扉が叩かれ、声がかけられる。
「まだ、どなたかこちらに残っていらっしゃいますか!? そろそろ、清掃の時間となりますので、ご退出をお願いいたします。」
「「・・・。」」
扉の向こうで足音が遠のいていく。
二人の唇は、今度こそゆっくりと重なった。
サウザの中央から少し外れた場所。
各地域の料理がリーズナブルに楽しめる食事処。
テーブルに突っ伏したままの、男の手には残り少なくなったジョッキが握られていた。
「はぁぁ・・・。」
「ちょっと、もういい加減にしろよ。」
「そーだよ!ネロウ兄さん、何がそんなに気に入らないのよ!?」
両サイドに座るロマとトネリから掛けられる声に、ネロウは残っていたジョッキの中身を飲み干す。
「だってよぉ・・・。」
空のジョッキを両手で弄びながら、ネロウの耳がへたる。
「そうだぜ、一体なにが気に入らねーんだよ? 兄さんの出した条件だって、クリアしたじゃねーかよ。 」
コロシアムでの様子を思い出しながら、トネリ達が頷けばネロウはお代わりを頼んだのだった。
「フィガロを守れる男になれ!!」
それは、可愛がっていた弟の兄離れが寂しかっただけのネロウが勢いで言っただけの言葉だった。
アニマは獣人の住む世界。
ノーザ、イース、ウエス、サウザの四大陸に異世界より転移してきた者が落ちてくる時
魔獣大量発生が起き、転移者を筆頭に魔獣討伐を行っていた。
それも、遥か昔の事となった。
ある時代の統治者の側には、常に寄り添う一人の獣人の姿があった。
その獣人は、忌み嫌わ差別の対象とされる「黒」を纏う「猫」獣人だった。
だが、その差別意識は四大陸でも強い獣質を持つ統治者によって変わっていった。
唯一の番として、自身の半身として。
時に厳しく、時に優しく、その統治者は牙を向き爪を立てた。
そうして、結ばれた友好締結によって、転移者頼みだった魔獣討伐は大きく変化していき、転移者を魔獣討伐へと駆り出す事は無くなっていった。
いつしか、異世界より転移してくる者の数も減り、今ではお伽話の一つの様に、アニマで根強い人気の時代の統治者と番の話、「幸運の招き猫」と共に語られるだけとなったのだった。
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