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第14話
夜。
『ごめんなさいね、うちの湊音が』
「いえ……きっと湊音さん心配してくれてのことだと思います」
來の元に李仁から電話が来た。「うちの」という言葉に少し来はチクリと心に来る。
以前までセフレで身体の関係を持っていたのに平気な顔して会うし、電話もしてくる。
やはり李仁は湊音の相手であって自分は身体だけの関係だったんだ、それを思い知らされる。
『湊音も元高校教師じゃない、生徒の歳に近い子が将来ぼんやりで決まってないとついついお節介したくなっちゃうと思うのよ。許してやってね』
「いえ、ああして言ってくれなかったら……ずっと僕は止まったままでしたから」
そう話しているのは也夜と選んだソファーにかけて、である。
二人で座るはずだったソファーに一人。
時に仲間や友人、李仁や湊音、大輝もいたがこうして一人で過ごす時もだいぶ慣れてきた。
一人が怖くて誰かを呼んでいた。
「湊音さんも、今まで僕に言いたかったと思うんですけどもうそろそろ一年ですし、心配してくれていたんだなって」
『何言ってるの、ずっと心配してたわよ。湊音以外にも私も大輝もみんなも……あなたの今後のことを心配してる』
「……」
『まぁ死にはしないでしょ、とは思ってたけど』
重い話から少し李仁が話をずらした。來はつい笑ってしまった。
「死ぬことはないです、確かに」
『そうよね』
「……忘れて、僕は1から頑張ります。みんながこうして僕のことを僕の将来のことを心配してくださって。也夜の家族からも離れろと言われたのも……僕のことを考えて、ですよね」
『かもね。いつ也夜が目を覚ますか。でもわからないものね。もしかしたら明日、いや来年、再来年、十年、何十年……』
「そんなに」
『冗談じゃないわよ』
何年、何十年後……自分はいくつになるのか。30も超えて40歳近くになっている。
「……」
『もし十年後目覚めて……來がただ闇雲に美容師だけをやっていても也夜は嬉しくないと思う。お店を経営したり後輩たちを指導したりしてさらに高みに登ったあなたの姿を見たら喜ぶと思うわよ』
李仁の声は甘くて優しい声。ベッドの上でも耳元で囁かれ何度も彼の中に堕ちていったか。
電話で聞くその声に來は不覚にも反応してしまった。久しぶりに。
日中会った時はそんなことがなかったのに、どうしてなんだと來は鼓動が増して気づいたらズボンを脱ぎ、ショーツを脱ぎ触っていた。
『ごめんごめん、私まで説教垂れてしまうわ。じゃあ今日はゆっくり休んで』
李仁が電話を切ろうとする。
「李仁……さんっ」
『なに? 來……』
來はソファーに横たわり、自分のを触りながら電話を繋ぐ。
「まだ、電話を切らないでくださいっ……」
李仁は最初なんのことかと思ったが、來の息の荒さに何かを勘付いた。
『もう、わかったわ……』
電話口で笑う李仁の声に來はもう我慢ができなかった。
「ああっ……」
このソファーは家具屋で也夜と二人で座り、色と素材もこだわった。忙しくても休みのときに一緒に横に座ってくつろぐのならちゃんと決めて買おうと。
ソファーとベッドは特にこだわった。
なのに今では也夜以外の男と交わり、愛を重ね沈んでいく。
そして果てて息を切れ切れにし、仰向けで天井を見つめる。
「……はぁ」
ため息をついて目を瞑った。
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