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第1話

 夏休みが終わっても暑さはすぐには収まらない。 学校が始まってみんなと顔を合わせると、どことなく垢抜けていたり、逆に黒くなっていたりと様々だが、クロと研磨は毎日一緒にいたので、その差も分からないほど頓着なかった。 「それ、いつまでやるの?」 「ぇ? ちょっと切りのいいトコまで」 「それはいつなのかな。俺、さっきから三十分は待ってると思うんだけど」 「ごめん。もうちょっとだから」 「分かった。俺が寝ない程度にしてくれよ。そろそろ限界だ」 「うん」  それからまた十分経って。ようやく研磨の画面依存が終わった。 毎朝毎晩こんな感じでゲームをされると、ちょっと嫉妬をしたくなるものだ。 それでも彼をバレーに誘った手前、彼のしたいことを削っている時間にもなるので強く出られないところがあった。  そもそもこの時間。部活でもない、ただの自習になっているのは、担任が急な用事で一時間の空きが出来てしまったせいだった。でも三十分プラス十分と言うことは残りは十分と言うことになる。それでも我慢しているのはクロの堪忍袋がいかに研磨に対して甘いかと言うのも伺える。こういう待ちの姿勢を取る時、クロは後々のことを考慮していた。 待てば待つほど相手の罪悪感が増す。だから研磨が甘えてくるのも多くなるのを心待ちにしているのだ。  クラスメイトが研磨にゲームの状況を聞いてくる。それに耳を傾けながら彼を見つめているクロの目は果てしなく甘々だった。そしてそれに気づいた研磨がとたんに苦虫を潰したような顔になるのも毎度のことで、ついそれを見越すのも毎度のことだった。 〇 「終わった。何?」 「いや、もうすぐ文化祭に向けての校内会議があるんだけど、今年はどうするかな…と思って」 「なんでそれ、俺に聞くわけ」 「だって部員だろ?」 「そうだけど」 「一番近くにいるから一番に聞くのは間違いか?」 「いや、間違いじゃないけど……」  なんで聞く? と言う顔をされてクロの口元が緩む。 「今年はさ、茶屋とかどうだろうと思ってるわけよ」 「茶屋?」 「そうそう。峠の茶屋みたいなコンセプトでさ、売り子さんには町娘の着物を着て接客していただくというのは……かわいいと思わないか?」 「……人にもよると思うけど」 「研磨はかわいいと思う。だからそれだけで客は寄ってくると思うし、夜久もかわいくなると思う」 「それって去年と同じメンバーで押し切りたいって言ってるように思うけど」 「そんなことはないよ。今年は俺たちだってちゃんと町娘の恰好するし」 「……」 「嘘じゃないから」  今年は着物の用意が出来るからと言うことで、もう夏休みの間に勝手に手配してしまったらしい。だから有無を言わせない感じで言われてしまった研磨は「毎度お馴染みだね」と口を尖らせた。 「いいじゃん。きっとかわいくなるから」 「……そうだね」  勝手にしろよとそっぽを向くところがまたかわいい。 「部活のみんなに伝えてから会議に行くつもりだから」 「じゃあ今日クロは部活遅れてくるってこと?」 「そうなるな。練習よろしく」 「分かった」 ● 「へぇ。今年は峠の茶屋なんだ」 「ああ。ちょうど着物借りられるからな」 「しかし研磨や夜久ならともかく、俺たちの分まであるとは」 「たまたまだよ。たまたま」  ふふふんっと得意げな顔をするクロだが、その実夏休み中必死になって借りられるところを探していたのだった。 レンタル落ちの処分市と言うのがあって、それを演劇部と半々で購入したのだ。 演劇部はその後使える権利が発生し、バレー部は今回限りの使用と言う約束。ウインウインの関係でうまくことが運んだのだ。 そして見栄を貼ったクロが話していた実物が手に入る日。バレー部は全員でその着物セットを取りに出かけた。 「重っ」 「着物てこんなに重かったっけ……?」 「一着じゃないからなっ。枚数重なるとまあ……こんなものか」  強がりを言ってみたが、重いものは重い。予定よりも多くの物をもらえたためにひとりひとりが抱える荷物が多くなっていた。クロは着物が重いんじゃない。他の帯とかが重いに違いないのだと思うことにして研磨を振り返った。 「大丈夫か?」 「大丈夫じゃないよ。こんなの絶対無理だからっ。俺、こんなの着ないからねっ」 「いやいや、それはちょっと待ってよ……」  すべては研磨のために……と言う言葉を飲み込んで部室まで帰る。 〇 「よっこらしょっと」  全員チョロいと思っていたせいか、顔が疲れているし、口がへの字だ。 「これ……ほんとに着るのか?」 「俺はやだな」 「俺も」 「俺も」とみんなが言い出す。それを聞いていた夜久が「俺は着るっ!」と胸を張って言ったので、すぐさまリエーフも反応した。 「俺も着ますっ!」 「じゃあ着ますよ」 「じゃあ俺も」 「俺も」と場が持ち直す。  結局着物が重いからと裏地を取り除くことになったはいいのだが、それは各自と言うことで、みんな自分の着物を持って帰ることになった。 クロが言ったのは一言「破かないように!」だけだ。 「イエッサー!」  みんなと言うことはクロと研磨も同じわけで、ふたりは仲良く着物を抱きかかえて帰路に着いたのだった。 ● 「これ、本当に裏取れるのか?」 「やってみないと分からないよ。ちょっと待ってて。母さんに聞いてくるから」 「ぁ、うん」  ずるずると着物を引きずりながら研磨が部屋から消えていく。しばらくすると二人分の着物を抱えてきた研磨は難しい顔をしていた。 「聞かれたんだけど」 「何を?」 「これ、取ったらもう誰も元に戻せないんじやないの? それでいいの? って」 「そ、れは……」  演劇部の連中に聞いてみないと分からない。 慌てて連絡してみると、「そのまま現状維持で」と言われてしまったので、またまた今度は部員全員に連絡してどうにかなった。 「これじゃあ持って帰り損じゃん!」 「ごめんごめん」 「もうっ!」  着物を床に置いた研磨は、「これ、どうやって畳むの?」と尋ねてきた。 「詳しくは分からん」 「あーーー。明日はシワシワになって戻ってくるかもよ」 「……だな」 「適当でいいよね」 「まあ、俺も知らないしな。グチャグチャじゃなければ許す。ぁ、でも……」 「でも?」 「……その前に見たい、かな」 「何を?」 「研磨の着物姿」 「ぇ……」  何考えてるか分かる……。研磨はそんな顔をしてクロを見上げた。 「やらしぃ……」 「なっ……にが!?」 「そんなこと考えてこれ、手に入れたんだ」 「ぇっ……ぁ……まぁ……。見たいだろ? 普通」 「違うでしょ。ただ脱がしたいんじゃない?」 「うっ……ん、まぁ……。まあな……」 「だからやらしぃ……」 「ぅ……ぅーん」  立ち上がった研磨はクロと向かい合うと、その首に手を回して抱きついた。 「!」 「誘ったよね?」 「まぁ……」 否定はしない。 「する?」 「……したい、かな」 「着物、脱がしたい?」 「ああ」 「中身は誰でもいいんじゃないの?」 「中身?」 「それ、俺じゃなくても着物着てるヤツなら誰でもいいんじゃないの?」 「冗談言うな」 「俺がいい?」 「当たり前だろ」 「俺じゃなきゃ駄目?」 「言わせるな」 「聞きたいから言ってるんだよ」 「……研磨の着物姿が見たい」 「それから?」 「脱がせて……突き上げて、喘がせて、満足させたい」 「……満点。待ってて、今着替えてくるから」  着物を手にした研磨が部屋を出ていく。そして数分後、着物姿になった研磨が部屋に戻ってきた。 「……どう?」  女物の着物はさすがに恥ずかしいな……と言いながらも、自分で着たから綺麗に着れてない……と不服そうな顔をして見せる。紺色のベースに色取り取りの小花が咲き乱れる可愛らしい着物に赤い帯。それは少女のようでもあり、可愛らしさが増していた。 「する?」 「ああ」 「俺、可愛い?」 「可愛い」 「食べちゃいたいくらい?」 「ああ」 「食べる?」 「食べる」 「おいでって言って」 「おいで」  ポンポンっと膝を叩くと、ふふふっとほくそ笑んだ研磨が寄ってくる。そしてその膝に乗ると首に手を回して頬を寄せてきた。 「かわいいよ」 「それ、誉め言葉じゃないよ」 「誉め言葉だよ。研磨はかわいい」 「……それ、俺以外の奴に言ったら怒るからね」 「言わないから大丈夫」  チュッとその頬にキスするとギュッと引き寄せる。唇と唇を重ねて相手を床に押し倒すと、その着物姿に目を細める。 「やっぱり似合う」 「だからそれ、言わないでって」 「分かった分かった」  言いながら着物の合わせに手を忍び込ませると「あれ?」と首を捻る。 「パンツ、もう脱いだ」 「研磨君それはもう……満点だね」 「そう?」 「そうそう」  着物の中の太ももを触りながら、その矛先を尻へと向ける。柔らかくて暖かいソコを確かめてから股間へと顔を埋めるとまだ萎えたソレを口に含み味わい楽しむ。 「んっ……ん……」 「一発出していいぞ」 「ぅんっ……」  そのほうが負担がなくていいと思う。 時間をかけるつもりはないが、それでも意思表示をしてくれる研磨は貴重なのでじんわりと味わう。成長具合が自分とは違う。引き締まっているのにか細さを残す体はいつも無理をさせていると思う。だけどちゃんとついて来てくれる心強さも感じている。 「ぁっ……ぁぁぁ……んっ。んっ……んっ……んっ……。クロっ……も……だめっ……。出るっ……ぅぅっ」  言われてキュッと根本を甘噛みすると抑えていたモノが勢いよく口内に放出される。クロはそれを受け入れて口を拭きながら顔を上げた。そして飲み残しておいたソレを掌に吐き出すとそっと研磨の双丘の奥に埋めていった。 「ぁっ……ぁ……ぁ」 「いい声。キスしたいな」 「やっ……ぁっ……ぁ……ぁぁ……んっ」 「モノをしゃぶった唇は嫌い?」 「きらいっ……! セルフフェラ嫌っ……ぁっ」 「間接でしょ、間接。そんなに嫌がらなくてもいいじゃん……。じゃ、尻に集中するよ」 「ばかっ……もぅ……。もぅ……来ていいよっ……」 「ぇ、あ……そう? じゃあ、入っちゃおうかな」 「また茶化す……」 「はいはい。すみませんね。そうでもしてないとね、俺まだ自分のモノ触れてもいませんから我慢が効かないのよ」 「ばかっ」  それからクロは余分な口は叩かずにひたすら研磨を満足させるために腰を振った。自分が満足するよりも相手を満足させるほうが楽しいし嬉しいクロだった。 〇 「着物の俺を抱いた気分はどう」 「正直姫の恰好をさせれば良かったと思ってる」 「今だって帯どうするんだか分かんなかったのに、姫なんて難し過ぎるだろっ」 「うん」 「あー、あれか。あ~れ~ってヤツやりたいとか?」 「研磨がいいって言うならやりたいっ」 「やだ」 「ほらね」 「この状態見て、またしたいなんてよく言うよね」  今まで抱かれていた身を起こすと逆にクロに覆い被さる。研磨の姿ははだけた着物に帯だけが腰に纏わりついているだけの恰好だった。 「まぁ、研磨君ったらハレンチ」 「あー、尻から誰かさんの精液が漏れちゃいそう」 「じゃあ栓しないとな」 「もういい。今日はもうやらないからっ」 「えーー」 「それより早く脱ぎたいっ。汚しちゃうそうで怖い」 「それもそうだな。汚したらマジヤバいな」 「そうそう」  冗談にも精液で汚しました、なんて言えやしない。 言えやしないし、もしついてしまったら洗わないといけないから自分たちじゃ手がつけられない。 クロは下から研磨の両肩をしっかりと掴むと真剣な顔で相手に言った。 「我慢。漏らさないように」 「だったら中で出さないで。特にこんな恰好の時には」 「ごめん」 ● 「で、夜久君の持ち帰った着物は最初から汚れていたと?」 「ああ。だから今クリーニングに出してる」 「返ってくるのは?」 「一週間後だな」 「ふーん。まあ、綺麗になるならいいとは思うけど、本当に最初から?」 「ああ、最初からだ」  何度聞いても最初から汚れていたと譲らない夜久にソワソワするリエーフ。それを横目で見ながらクスクス笑う研磨にクロはコホンッと咳払いをすると他の部員に言い放った。 「みんなも持ち帰った着物が汚れていたらクリーニング出してもいいぞ。ただし自腹だけどな」 「……俺、汚れてなかったっす」 「俺のも確か汚れてなかったから、クリーニング出さなくていいっすか?」 「自分が良ければそれで良し!」 「自腹キツイっすからね」 「俺はもし汚れててもそのまま着るっ!」 「まあ、全体的に薄汚れてる感は否めないけどな」 「許容範囲内だ」 「だな」 「だな」  皆が口々にそう言って自腹を免れようとしていた。  今年の文化祭も楽しくなりそうだ。 終わり タイトル「文化祭は峠の茶屋で」

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