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第16話

 今、俺は王都の大通りのパン屋さんを出たところだ。紙袋からは、縦に長いパンが覗いている。勿論、カビははえていない。他にも、フカフカのバターロールやクロワッサンも購入したし、売っていたジャムの瓶も買った。ただユイフェルは、俺からしか味を感じないらしく、俺の方が甘いといつも言う。なお、俺には誰も、俺には気を止めない。  実際、俺はユイフェルには甘いかもしれない。なにせ、俺以上にユイフェルが俺を溺愛していて、甘く甘く接してくれるから、俺もついつい甘くなってしまうのだ。俺からすれば、ユイフェルの方が、ずっと甘い。それは、ジャムよりもずっと。  夏の風に髪を撫でられながら、俺は帰路を急ぐ。 これが、俺の幸せな日々の、幕開けとなった。  ―― 了 ――

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