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第57話

優人さんに自分の思っていた事を伝えられたあの日から数ヶ月が経った 綺麗に咲いていた桜が散り、夏を感じ始める暑さにベランダから空を見上げれば雲ひとつない青空が広がっていた 「もう夏も近いなぁ、、、」 なんて呟けば 「海にお祭り、やりたい事行きたいとこ決めないとな」 後ろからそんな声が聞こえた 振り返れば優人さんが微笑みながら立っていた 「おはよう、なつ」 「おはよう、休みなんだからもう少し寝てたらよかったのに、、、」 「なつと過ごせるのに寝てるなんてもったいない事出来ないよ」 そう言って俺の手を取り部屋の中へ入れれば軽く抱きしめられた 「なつからなんかいい匂いがする、、、」 「朝ごはん用にパンケーキ焼いたんだ、食べる?」 「うん」 優人さんのまだ少しだけ眠気を感じるその返事にクスッと笑いながら、まだ抱きしめ続けている腕から抜け出しキッチンへと向かう そんな俺の後を追いながらやってきた優人さんは冷蔵庫から牛乳を取りだし用意を手伝ってくれた 甘さ控えめのパンケーキに目玉焼きとベーコンにサラダ 上手く盛り付けられた事に満足してテーブルに運べば嬉しそうに見つめる優人さん 「凄く美味しそう、朝からありがとね」 「どういたしまして!」 今日一日をどう過ごそうか話しながら食べ終えれば、俺の皿を手に取り「片付けは俺がするから、なつは準備しておいで」そう優しく言ってくれた 「いいの?」 「美味しい朝食を用意してくれたからね、これくらいさせて」 「ありがとう」 お礼を言えばにこっと笑いながら額に落とされたキス その行動に嬉しく思いながら部屋へと向かい準備を始める 行き先は先月できたばかりの水族館 大きい水槽が見所でオープンした時には、新たなお出かけスポットとして何度かテレビで紹介されていたのを思い出す その中で、嬉しそうにインタビューを受けていた恋人同士の姿も思い出し、その場所にこれから優人さんといける喜びで思わず顔が綻べばかけられた声 「楽しみ?水族館」 「んえっ!?、、、あっ、」 見られていたことに気付き恥ずかしさで変な声が出ればクスクスと笑いながら近づいてくる足音 恥ずかしさで顔を隠せば、後ろに感じる優人さんの気配 そのまま後ろから俺を抱きしめ「俺も楽しみ。」そう耳元で囁けばスっと離れ着替え始めた そんな優人さんを見つめれば合わさった視線 「どうしたの?着替え、手伝おうか?」 楽しそうに聞いてくる優人さんに「大丈夫です!!」と勢いよく言えば「ざんねん、、」なんてイタズラな笑みをみせる その姿にドキッとしながらも素早く着替えを済ませた 少し離れた場所にある水族館へは車で向かう事になった 久しぶりに見る優人さんの運転姿にときめきながらついたその場所には、様々な魚の置物やお花が咲いていてたくさんの人で賑わっていた チケットを購入し、中へ入れば中、小様々な水槽の中で泳ぐ魚に思わず夢中になりながら足を進めれば見えてきた大きな水槽 中にはジンベイザメの大きなものからスーパーで見かけるものまで様々で その凄さに圧倒されていれば感じた視線 横を見れば優人さんが俺の事を見ていて 「なんで俺を見てるんですか、、、」 「ずっとキラキラした目で楽しむなつが可愛くて。」 「さかな、見てください、、、」 そう言えばそっと繋がれた左手 「嬉しいんだよ、なつとこうして過ごせるのが。さらに色んな表情を見せるようになって、どんな瞬間でも逃したくないの。」 そう言うと見せてきた携帯の画面 そこには夢中で水槽を見る俺の姿が写っていて、、、 「撮ってたの!?」 驚きと恥ずかしさで思わず声を上げてしまう 慌てて口を抑え優人さんを見ればその顔は嬉しそうで幸せそうで、、、 そんな顔を見てしまえば "消して" なんて言えなくて だから、、、 「俺も優人さんの写真欲しい、、、」 そう言えば「一緒に撮ろっか!」そう言って俺の肩を抱き水槽を背景に撮ってくれた すぐに送ってくれた写真を見つめる 優人さんと番になってからこれまで何枚も写真を撮ってきたけど、見る度にやっぱりどこか相応しくないんじゃないかと思う自分を拭いきれていなかった だけど、今日は違う 優人さんの隣で笑う自分の姿に素直に心が喜んでいた それは毎日、言葉で行動で俺に気持ちを伝えてくれる優人さんがいてくれたからで 俺じゃないとダメだと伝えてくれたからで 「優人さん、、、」 「んー?」 「俺ね、今、凄く幸せ。ありがとう、大好きだよ。」 抑えきれない想いを声に出せばビックリしながらもふわっと笑いながら「俺も幸せだよ、大好き。」そう言ってくれた その表情が愛おしくて 俺はそっとカメラに収めた

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