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1:追放
弓使い(アーチャー)の人口は少ない。
理由は簡単だ。不人気だからである。
「は……?おい、リチャード。今、なんて言った?」
「だから、何度も言わせるなよ。……パーティを抜けてくれって言ったんだ」
そんなワケで、弓使いである俺は、現在。絶賛勇者パーティから追放されようとしているところである。ちなみに、リーダーである勇者リチャードは、俺の幼馴染である。
え、ナニコレ。地獄?
「いや、俺も言いたくはねぇよ。言いたくねぇさ、こんな事はな。でも、そろそろ皆の間でも不満が出てるんだわ。だからさ?リーダーとして言わないワケにはいかないんだわ。俺も辛い立ち位置なワケよ」
いーや、ウソつけ。ほんとに辛いと思ってるヤツは、わざわざメンバー全員が見てる前でそんな事言わねぇわ。
しかも、この場所どこだと思う?街で一番盛り上がっている冒険者の酒場だからね。そのせいで、仲間以外の冒険者達からもめちゃくちゃ好奇の目で見られているという。……はい、地獄だね!?
「そういう、俺の病むに止まれぬ立場。お前なら分かってくれるよな?テル」
「……あ、あぁ」
テル、と言ってニコリと微笑む酷く顔の造形の良い幼馴染の姿に、俺は喉を詰まらせながら返事をする。同時に、背負った弓がギシリと音を立てた。
「俺達もそろそろレベルが上がってきたしさ、そろそろ大本命の魔王城に行きたいワケよ?でも、魔王城は強敵だらけだ。もちろん、俺達が倒そうとしている魔王なんて、これまでの敵の非じゃない。だとしたら、パーティ内の少しの綻びすらも命取りになる。パーティのリーダーとして、それは絶対にあっちゃならない事だ」
「……まぁ、そうだな」
つまり、そのパーティ内の綻びが〝俺〟と言いたいのだろうが。それより、ちょっと待て!?
さっき「辛い立ち位置」とか「病むに止まれぬ立場」とか言ってたくせになんだよ。めっちゃ顔ニヤニヤしてんじゃねぇか!無駄に顔が良いせいで、そういう下衆っぽい笑みも形になっちまうからいいよなぁ!?
でも、顔はさすがにもう少し頑張って作ってくれ!十八歳でもそのくらいは出来るだろ!?リーダーなんだからさ!
と、俺は目の前に立つ、精悍な顔つきの若い剣士に向かって言いそうになるのをグッと堪えた。もう、ここまできたら何を言っても無駄だからだ。
「だからさ、テル?」
すると、目の前の若い剣士がポンと俺の肩に手を置いた。
パーティメンバーからの冷たい視線、そして更には酒場に集まる多くの冒険者達からの好奇の視線。それらを一心に受けながら俺は「勇者パーティから追放されそうになっている弓使い」から、晴れて――。
「パーティ、抜けてくれないか?」
「公衆の面前で、勇者パーティから追放された弓使い」になったのであった。
はい、ここ地獄決定!
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