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第80話
「りん、っ、りん先輩っ」
「り、おっ、ぁ、んうっ」
技巧のない力だけのディープキスなのに、これ以上ないほど身体は歓喜と快感に震えている。乱雑にバスローブをはぎ取られてしまう。唇を合わせながら、理央の手はせわしなく動く。負けじと、理央のワイシャツをズボンから引き抜くと、理央が邪魔くさそうに、ネクタイをちぎれてしまうのではないかと思うほど力いっぱいに頭から抜いて、ワイシャツを脱ぎ捨てる。ぴったりと上半身の肌を合わせながら抱き合い、キスをした。だらだらと飲みきれない唾液が口からあふれていく。時たま、その唾液を理央が舐め上げて、口内に戻してくる。頬裏をぐりぐりと舌先でいじめられた後、歯茎に沿って反対側の頬裏を舐めつくされる。細胞ごと飲み込まれてしまうそうなキスに脳がどんどん混沌としていく。
「せんぱっ、ん、すき、好き…っ」
好きだと言いながらキスをする。どっちかにしてくれ、頭がぐらぐらする。保たない。瞳で訴えかけるのに、理央は溢れる愛を惜しみなく俺にぶつける。
素肌を辿って、背中をなぞった。筋肉が隆起しているたくましいそれは、しっとりと汗ばんでいる。俺の指先が身体をなぞる度に、大げさなほど理央の身体は跳ねる。その反応がいちいち愛おしくて、もっと気持ちよくなってほしいと思う。背骨のくぼみにそって下っていく。ベルトの隙間から指を指し入れる。そのまま、前にまわってきて、バックルに触れる。
「ぁ…、は…りお…」
理央が身体を起す。離れていった体温に手を伸ばすと、彼は急いでバックルを外して、下着ごとすべてを脱ぎ捨てた。ぶるんっ、と勢いよく彼の分身が現れて、目を見張ってしまう。今まで見た中で一番膨張し、先端から雫をこぼし、ぬらぬらと光っていた。血管すら浮かんでいるように見えた。凝視している俺を笑いもせず、理央はすぐさま、身体を倒して、唇を食んだ。
大きな手のひらが、俺の脇腹を撫でる。びく、と腹がへこみ、鼻から声が漏れる。その手は、ない胸を持ち上げるように上へとたくし上げられて、薄い胸を揉む。大した快感は得られないはずなのに、理央が俺にそうしていることを考えるだけで、腹の奥が熱くなる。
「んうっ」
親指が、尖りをかすめて、背中が仰け反ってしまった。もとから弱かったそこは、すっかり膨れ上がり色づいている。俺の反応を楽しむかのように、何度もそこを撫でてくる。
「や、あ…んっ、やら…っ」
顔を横に振って快感から逃げようとするのに、長い舌がそれを許してくれない。両足を閉じて、内腿を擦り合わせる。じり、と焦げ付くようだった。それに気づいたようで、片手で胸を愛撫しながら、もう片方の手で太腿を撫でてきた。往復するように撫でてから、下着の上からすっかり勃ちあがったそれを手のひらで包まれる。
「あ、んんっ、や、だめっ」
びくん、と身体が大きく跳ねてしまい、理央の腕に抱き着いた。それを機に、お互い絶え絶えの息を整える。内腿に挟んでしまった理央の腕に体温が高まっていく。
「りん先輩」
耳元で甘く囁かれて、ちゅ、と吸い付かれる。それだけでも、大きな快感に成り得てしまいそうで、ぎゅうと抱き着いて堪える。
「先輩…かわいい…」
「や、め…」
ちゅ、ちゅ、と耳や頬、顔中に淡くキスをされる。
「だから、ここ、触らせて」
ね、と、汗だくなとろけた笑みを見せられて、うなずくしかなくなってしまう。
そろ、と両足を開くと、理央がゆっくりと下着を降ろした。ふる、と勃起したそれが現れて羞恥にさらに顔に熱が集まる。
「嬉しい…先輩、きもちい?」
理央はそれを見てから、俺にさらに笑みを深めて聞く。ばか、と言い返したかったのに、茹で上がった頭は素直にうなずく。また顔を近づけてきた理央を少し押しやると、瞬きをしながら止まってくれる。
「理央のこと、散々待たせたから…その…」
膝を開き、手を伸ばす。足の付け根に沿って手を回し、出来るだけ気持ちいいところに触れないようにして、後孔に触れる。
「準備、したから…」
挿れて…
風呂場で、身を清め、ローションを仕込んだそこを少し開けば、とろ、と中からローションが溢れた。
「なっ…んで、そういうことするかなあ?」
理央が大きな声を上げて、不安に身体を縮ませ、見上げる。顔面を覆った彼は、ぶつぶつ何かをつぶやいていた。
「ご、ごめ…嫌だった…?」
やりすぎだっただろうか。
ここまでして、気持ち悪いと思われてしまったのだろうか。理央なら喜んでくれると思ったのに。
顔を覆っている手のひらに手をかけると、理央の真っ赤な顔が現れた。そして、じと、と俺を睨む。
「それ、俺がやりたかった…」
どうやら喜んでくれているのは確実なようで、ほ、と胸を撫でおろす。唇をあわせられ、舌が口内を一周して、あっさりと離れていった。
「すげえ嬉しいけど…次は俺がやるから、とっといてね?」
む、と唇を尖らせながら理央がつぶやいた。思わず、そんなことでふてくされてしまう恋人がかわいくて、ふふ、と笑う。すると、理央も頬を緩めた。
「あ~もうやばい…先輩とキスしているだけで、マジでイキそう…」
身体を起して、前髪をかき上げる理央は見たことない色気を醸し出していた。
「…一回、出しとく?」
そ、と理央の腹につきそうなほど反り返ったそれの先端を撫でると、理央が顔をしかめて、んっ、と喘ぐ。
「だめっ…、ふう…先輩のナカでイキたくて、ずっと我慢してたんだから」
理央は小さく微笑んで、ベッドサイドの引き出しから箱を取り出した。中には大量のコンドームは入っていて、一つとると理央は器用に自分のそれに、くるくると被せた。腹の奥が、さっきからきゅんきゅんと疼いてたまらない。我慢できなくて、後孔に指を一本入れてしまう。くちゅ、といやらしい音が響いて、理央がそこに気づく。
「こら、りん先輩」
「や…」
その手を握りしめられて、ベッドに縫い付けられてしまう。入口がひくひくと物足りなさに開閉を繰り返す。理央の指が、淵をそろりと撫でると、爪先まで強い電気が走る。
「んうっ、り、お…」
ぬ、と理央の指が一本入ってくる。すんなりと入るそれを、ぬくぬくと何度か出し入れする。初めての理央の指に、身体中が悦び、鳥肌を立てる。
「んっ、んん…」
「りん先輩…」
間近で顔を見られながら、理央は俺の反応をうかがうように指を増やす。いっそキスをしてくれればいいのに、俺のことをじっと見つめてくる、優しい声を出すのに、瞳が目の前の獲物を逃さないと言わんばかりの強い光を放っており、その獣じみたギラつきにさらに高まりを感じる。
二本の指がばらばらと動き出し、ある一点をかすめる。ぎゅう、と内腿で理央の身体を挟んで震える。そのいいところを見つけると、こしょこしょとくすぐるようにじれったく虐めてくる。
「んん、んあ…っ、や…りお…っ」
気づくと、もう一本増えたようで、三本の指が出し入れしながら、俺のいいところをさする。
「だ、め…やめ、…これ以上は、も…イッ…」
目をきつく閉じて、快感をなんとか耐えるが、理央はどんどん俺の身体を暴いていく。
だめ、イク…ッ!
そう思った瞬間に、ずる、と指が引き抜かれた。あと少しだったのに、と目を見張って、乱れた息のまま理央を見上げる。理央はもっと苦しそうな顔で俺を見下ろしていた。
それに切なく身体がうずく。
理央…。
心の中で彼への気持ちがあふれる。首を伸ばして、理央の唇に自分の唇を合わせる。理央は息絶え絶えに告げる。
「初めては…一緒に、イキたい…」
この機会を待ちに待っていたのは、理央だけではない。俺だって何度も自分が決めたことを後悔した。目の前に大好きな人がいて、一緒に交じりたいと思うのに、理性でなんとか抑える瞬間はたくさんあった。ようやく、今、その時が巡ってきたのだ。
「…っ、上手に、できるか、わかんないけど…」
今までたくさんのオメガを抱いてきたであろう理央を満足させてあげられるかはわからなかった。現に、数か月前には、海智とそういうムードになった。その時には、ベータの俺には全く反応してもらえなかったのだ。だから、何度も確認してしまいたくなる。理央のそれが萎えていないか。俺にちゃんと、興奮してくれているのか。ちゃんと俺を、欲してくれているのか。
重い溜め息が聞こえて視線を上げると、理央の汗がぽたりと頬に落ちてきた。
「どんだけ煽ってくんの、先輩…」
俺がどれだけ理性総動員で我慢してると思ってんの…
そう低くつぶやく理央は、身体を起して、俺の膝を自身の肩にかけた。すべてをさらけ出す格好に、血が沸騰するかのように恥ずかしくなるが、ぴとり、と後孔に熱が当てられて、身体が一気に緊張した。
「りん先輩…いくよ…」
はー、はー、と深く荒い呼吸をしながら、理央が見下ろしてくる。小さくうなずく。理央を迎え入れることしか今の俺にはできない。
にゅ、と先端が入ってきた。腹の奥が、意図していないのに、ナカに呼び込むようにうねっているのが自分でもわかってしまう。ず、とさらに、入ってきて、頭を飲み込む。
「あっ…ぁ…」
「っ…りん、せんぱ…」
理央の腕に手を伸ばすと、しっかりと指を絡めて握り返してくれる。両手をそうされて、ベッドに押し付けられると理央が唇を合わせてくる。理央の唇を舐めると、素直に舌を絡めてくれる。ちゅ、くちゅ、と水音を立てながら、優しくて濃厚なキスを味わっていると、熱い肉棒がしこりを撫でながら奥を目指す。ぎゅう、とナカで締め付けてしまうと、理央が苦し気に呻く。血管の形さえもナカで感じ取れてしまいそうなほど、ぴったりとはまっていて、どくどくと視界が揺れる気がする。動きを止めた理央の溶かされてしまいそうなほどに熱いペニスを、身体は悦んで絡みついていく。勝手に身体がぎゅうぎゅうとそれを締めあげて待ち焦がれたそれを歓迎している。
「や…っ、だめ…あ…、りお…や…」
「んっ、せんぱっ…」
どちらも動いていないのに、挿入されて、ぴったりとナカが合わさっているだけなのに、脳が揺さぶられるほどの強い快感が全身を駆け巡る。大きな熱い身体に押しつぶされるように抱きしめられ、全身が多幸感で震える。理央の呼吸が、体温が、湿度が、心音が、すべて肌を通して伝わってくる。
「あっ、あっ…だめ、イッ…イクッ…」
「りん、先輩…っ」
顔に張り付いていた髪の毛を理央が優しく払ってくれる。そのまま、ちゅ、と唇に吸い付かれた瞬間、びくびくっと身体が大きく跳ねて、理央の腹の下で白濁がにじむ。何度もナカを収縮させ、ほぼ同じタイミングで理央も絶頂を迎えたようだった。びくびく、と目の前の肩が何度も揺れた。絶頂の余韻が治まる頃まで、ナカにある理央はびゅうびゅうと精液を出していたようだった。アルファは射精がベータよりも長い。ぐ、と下唇を噛んでかたく目をつむり、快感に耐える恋人は、とてもセクシーだった。今度は俺が汗で張り付いた髪の毛をよけてやると、びく、と敏感になっている身体を跳ねさせた。
「せんぱ…俺、まだ…」
くす、と笑い、その唇にキスをした。
「いっぱい出していいよ」
自分でも知らない甘い囁き声が出て驚いたが、理央はさらに眦を染めて、腰をゆらゆらと動かし始めた。
「あっ、りお、まだ、っ」
ゴム越しのため、はっきりはわからないが、理央はまだ射精中の敏感な身体のはずだ。達したばかりの俺の身体だって、重だるく繊細に感じ取ってしまう。
「む、り…我慢、できな、い…」
「んんっ、あっ、あ…」
りゅりゅ、と抜けていき、寂しさにナカがきつく閉ざされると、ず、とゆっくり質量を持ったそれが入ってくる。ついでと言わんばかりに、ごり、としこりをたくましい亀頭が撫でていく。快感に仰け反ると、また抜けていく。ゆったりしたペースで同じように繰り返される快感の波に、喘ぎ、目の前の厚い身体に抱き着くしかできない。
「りん、先輩…好き…」
「んんっ、や、いわな、で…んうっ」
とちゅ、とちゅ、と味わうように肉棒が俺のナカを撫でていく。耳元で熱い吐息と共に、睦言を吹き込まれると、どこもかしこも痺れて気持ちがいい。
「無理…好きなんだもん…、りん先輩、好き…もっと、俺のこと、好きに、なって…」
「んん、んうっ、あっ、も…、ん…」
勝手に涙が溢れてしまう。ようやく理央とひとつになれたこと。理央が惜しみない愛を俺に降り注いでくれること。理央に出会えたこと。すべてが嬉しくて、とまらない。
「りお…すきっ…すき…んぅ」
淡く突かれる度に、焼き切れた理性によって、理央への気持ちが勝手に言葉になってこぼれてしまう。
「りお、すき…、りおは…すき…?」
ぐぐ、とさらに奥に入り込んできて、息をつめてしまう。腰の速度が上がり、驚いて理央を見ると、眉間に皺を寄せていた。
「好きに、きまって、んじゃん…っ」
ちゅ、ちゅ、と唇に吸い付きながら、言葉をつむいだ。それが嬉しくて、へにゃ、と顔の力がゆるんでしまう。
「あっ、りおっ、あ…っんう」
ナカをかき混ぜるように腰が回り、いろんなところが気持ち良くて胸が苦しい。とんとん、とリズムよく突いてくるのに合わせて、視界が揺れる。
「先輩…、好き…もう、俺を、りん先輩の、最後の男に、してね…」
きり、と下唇を甘噛みされて、ぞぞ、と背筋が電流が走る。ぎゅう、と抱き着いて、唇をついばむ。
「りおも、最後にして、俺以外、だめ、おれだけっ」
視界は理央の瞳でいっぱいになっていて、その瞳の奥がゆらりと揺れた。身体を起した理央が、俺の腰をつかんで、ピストンの速度を一気にあげる。ベッドがギシギシうるさく鳴る。
「やっ、あんっ、はやっ、りおっ、だめっ、あっ、んう、つよ、すぎっ、ああっ」
奥の入口に、理央の先端がキスをするようにつついてくる。ナカが理央を逃さないようにぎゅうぎゅう締め付けるのに、理央はにゅるにゅると逃げていってしまっては、追い立ててくる。その劣情の繰り返しで、ベッドの上で悶えるしかできない。
「りん先輩、りん先輩っ、好き、ほんと、好きっ」
「んっあっ、りおっ、おれ、も、あっ、あ、すきっ、んうっ」
ぷるぷると、俺のペニスは理央の与えられる振動によって上下に弾けるように揺れていた。その度に、ぴゅ、と透明な液体を少し飛ばす。後ろからは、じゅくじゅくと卑猥な水音が響き渡り、見上げると、眦を染めた理央の真剣な眼差しに射抜かれる。ぽた、と理央の汗が頬に落ちてくると、脳がただれるように蝕まれた。
「りお…イッ…ク…また、イッちゃ…」
「うん…俺も、…イク…」
「キス、キスして…」
肩に手を添えて、そうねだると、理央は口角をあげて、すぐに唇を塞いでくれる。れろれろと口内を蹂躙されて、たまらない。絶頂が近いと思った瞬間に、油断していたペニスを大きな手のひらが包み込み、上下に扱く。間の前がちかちかと白く光って、背筋を大きくそらしながら、勢いよく吐精する。身体を弛緩させていると、理央はまた激しく腰を打ちつけてきた。
敏感な身体でやめろと言いたいのに、理央が唇を解放してくれない。
「んっんんっ、ぁ、り、んぁ、んっんっ、っ~!」
鼻から吐息が抜けるばかりで、言葉が出ない。口を大きく開けようとすると、舌の側面をざらりと舐められて、ナカがきゅんと疼いて締め上げてしまい、より快感を拾ってしまう。強すぎる快感に目の前がぐるぐるしていると、ナカで暴発する感覚があった。キスをしながら、しばらく理央が身体を震わせながら腰を深く深く進めようとする。
抱き着いていた腕に力が入らず、ベッドにぱたりと落ちる。ようやく唇が解放されて、息を深く整えていると、理央は身体を起して、たぽん、とめいっぱいに膨らんだコンドームごと、一度後孔を抜いた。茫然と天井を見ている俺を他所に、理央は股間についていたゴムをしっかりと縛り、近くのゴミ箱へ放った。そして、新しいゴムを装着する。
「えっ…り、お…?」
熱が発散していく心地よさにうとうととしていたら、片足を担がれ、驚いて目線を降ろす。
「りん先輩…足りない…、もっと、ちょうだい…」
「り、ああっ!」
ずにゅ、と簡単に後孔を理央を受け入れてしまう。理央に担がれた足を上にして逃げるように身体を横に倒すと、ごり、と強く痺れるしこりに当たってしまう。体制を戻そうとするものの、ベッドの上にあった片足を理央が跨ぎ、身体で固定してしまい、足を閉じることも寝返りをうつことも叶わなくなってしまう。長い腕を伸ばして、赤く熟れた尖りをぴんぴん、と弄ぶように弾かれてしまい、身体はあっという間に高ぶってしまう。
「まだ、まだだよ…先輩…もっと、俺にちょうだい…」
全部ちょうだい…、と劣情でよどんだ瞳で理央は腰を打ちつけ始めてしまう。
「ま、まって、りおっ、いっか、い、あんっ、やすま、せ…ああっ」
りん先輩、好き…好き…と何度もつぶやきながら、愛撫する手も腰も、すっかり覚えてしまった俺のいいところを上手に攻め立ててしまう、手練れた年下を恨めしく睨みつける。それすらも嬉しいのか、うっとりと蕩けた笑みを見せて、理央は俺にキスをした。
ちゃり、と理央の首元から垂れたチェーンが小さく鳴った。そのチェーンには、お揃いのリングがかけられている。校則違反だと咎めて、泣きながら指から外して、ここに収まっていた。俺の胸元にも同じものが下げられている。理央がお守りだと言って送ってきたネックレスに指輪を通した。キスをしたときに、リング同士も触れ合う。
「りん先輩…ずっと、一緒にいて…」
「ん、りおっ、わか、たから、ぁ、や、まって、てばあ…っ」
快感はいきすぎるとつらいということを身をもって体感した、俺たちの初めての夜だった。
次の日、いつも通りに登校する予定だったにも関わらず、起き上がると腰が抜けて立ち上がることすらできなかった。顔を真っ赤にして理央を罵倒したが、理央は嬉しそうに微笑んでキスをしながら適当に謝ってくるだけだった。
せっかく解禁となった情事をさっそくお預けとされた理央は、朝から大泣きして大変だった。スタイルも顔もいい。誰からもモテるくせに、俺の前では平気でわんわん泣いて情けない姿も見せてくれる恋人をかわいいと思ってしまうのだから、俺も相当甘いと思う。そうやって、だらしない姿も情けない姿も見せ合えるから、俺は、心から理央を愛していると言えるのだろう。
俺にとって理央は、拗れた初恋を終わらせるために背中を押してくれた恩人でもあり、いつでも俺を慰め助けてくれたヒーローでもあり、そして何より、誰よりも俺を愛してくれる大好きでかけがえのないたった一人の恋人だ。ようやく結ばれた、俺の恋は、心も体もつながることができた。
ずっと曇ってばかりだった俺の恋は、理央に出会って、初めて晴天を見せた。
大泣きする理央に軽くキスをしてやると、ぱあっと晴れ模様に変わる。単純で愛しい恋人を結局許してしまうのだ。
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