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第3話 理央&創一編~理央視点~
俺は、松永理央。
高校一年生である。
今、目の前で、好きな人がさらわれてしまった。
というか、連れ出されてしまった状態。
びっくりしすぎて、言葉も出なかった。
俺の好きな人は、高嶋右京先輩。
そして、連れ出したのは、同級生の神崎忍だった。
あーあ。
これで、失恋確定かな?
そう思って、俺が、一人になり、大きなため息をついた時であった。
後ろで、クスクスッと笑う声がした。
えっ?
俺が、後ろを振り返ると、そこにいたのは、何と、『爽やか王子様』だった。
爽やか王子様こと矢野創一、同じく、高校一年生。
超イケメンで、学年トップの秀才、おまけにスポーツ万能ときてる。
数多くの女子、おまけに、男子にもモテモテのコイツは、『難攻不落の王子様』とも呼ばれていた。
次々と告白する人がいるが、一度もオッケーしたことがないらしい。
しかし、なぜ、その爽やか王子様が、こんなところに……。
だが、それよりも……。
えっ?
ヤッ、ヤバい。
もしかして、一部始終、見られていた?
俺は、羞恥の思いで、今も笑う相手を見つめていた。
「松永くんは、何というか、珍獣で可愛いですね。ペットにしたいぐらいです。」
はっ?
俺が可愛い?
それに、珍獣扱い?
俺の心の中では、はてなマークが飛び交う。
しかし、次にその爽やか王子様が言った言葉には、正直のところ、俺は驚いた。
「ねぇ、松永くん。もし、良かったら、僕とお付き合いしませんか?」
はっ?
今、爽やか王子様は、何て言ったんだ?
確かに、
『僕とお付き合いしませんか?』
って言ったよな?
コイツの思考回路は、どうなっているんだ?
長身の上に、強面の俺は、お世辞にも可愛い……とは言えない。
生徒たち、しかも、教師たちからも、恐れられる俺の唯一の心の拠り所は、高嶋先輩だけだった。
高嶋先輩は、とても優しい人だった。
だから……、好きになってしまった。
意を決して、告白もしたが、断られた。
だけど、俺のワガママで、話し相手になってもらっていたのだ。
「ねぇ、松永くん。僕の話、聞いてました?」
ちょっとイラついた感じの声で、爽やか王子様様、いや、矢野は、話しかけてきた。
「えっ?あぁ、聞いてたよ。」
「じゃあ、返事は?」
「えっ?返事って?」
「だから、告白の返事です。」
「…ちょっ、ちょっと待ってって。お前、意味分かっている?俺は男で、しかも、こんなんで……。」
「もちろん、分かっていて、告白しました。」
ハッキリ言ってくれるよな、コイツ。
「もう一度、聞きます。返事は?」
矢野が、何とも有無を言わさない言葉に、今度は、俺のほうが笑っていた。
「何が、そんなに可笑しいんですか?」
「だって……。お前さ、あまりにも、趣味が悪すぎて、物好きだからさ……。」
「そんなことありませんよ。松永くんは、普通にカッコイイと思います。」
大真面目に、そう返答する矢野に、俺の返事は、もう決まっていた。
「うん。分かった。俺たち、付き合おうか。」
後で、矢野から聞いた話だが、実は、初めて俺を見た時から一目惚れしたというものだった。
そして、俺と話すきっかけを探していたらしいとのこと。
たまたま、あの日、一人になった俺を見かけ、チャンスとばかりに、声をかけたのだ。
恋はあばたもえくぼ…とは、よく言ったものだが、俺と矢野の付き合いは、こうして始まった。
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