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転生先はまさかの平安時代
異世界転生なんて小説か漫画の話しで現実にあり得ないと思っていた。
まさか我が身に起きるとはこれっぽっちも思わなかった。
電車が来るのを待っていたら、後ろからどんと強く押され、ホームに落とされた。死を覚悟したけど、目覚めたら知らない世界にいた。
寂しくなかったのは白鬼丸がいてくれたから。一人じゃなかったから。白鬼丸は熊みたいに大きい犬だけど普段は人型で生活している。白鬼丸と出会ったのは四年前。十二歳の時だ。
育ててくれた祖父母の葬儀の日。一人で泣いていたら、ふらりと迷いこんできた小さな男の子とふと目が合った。真冬なのにその子は白い着物を着て赤い帯をしていた。靴は履いてなくて裸足だった。
「どうしたの?迷子?」
「ぼくが見えるの?」
「うん。あ、でも、なんで見えるのかは分からないの」
「そうなんだ」
きゅるる~~ぐぐぐ~~
男の子のお腹が派手に鳴った。
「お腹が空いているんだね。お握りがあるから待ってて」
台所に急いで取りに行った。
土間にちょこっと座り、足をぶらぶらさせながら、男の子は両手でお握りを掴みものすごい勢いで食べ始めた。
「東京にお母さんがいてね、前は年に四回は帰ってきてくれたんだけど、去年からは全然帰ってこないんだ。じいちゃんとばあちゃんに聞いたら好きな人が出来て、再婚して、来年には赤ちゃんが生まれるんだって。なんでこんな話ししているんだろう」
男の子にぺたぺたと頬を触れられて。初めて泣いていることに気付いた。
夕闇が迫る町を眼下にのぞみながら、男の子を背中におんぶして家の裏山をひたすら登った。
母の再婚相手が明日迎えにくる。東京に移り住む。もう二度とこの光景を見ることはない。泣き疲れてお腹がいっぱいになりすやすやと眠る男の子。こんな小さな体でも懸命に生きているんだもの。僕も東京で頑張らないと。一日でも早く母さんと、母さんの新しい家族に慣れて、三学期だけだけど転校先の小学校でも友達をたくさん作りたい。
そんな僕のささやかな夢は呆気なく現実に打ちのめされた。
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