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第38話 続・王子様のやんごとなき事情

 レイヴァーンは、分かっていない振りをしていたけれど、本当はしっかりと見ていたのだろう。  アレックスと同じように、ロイの足を持ち上げて、深いところまで入り込めるように角度を変えた。腹筋が強いのか、空いた片手でロイの腹を撫で回している。 「魔法陣出てきたね」  マイセルが楽しそうにロイの腹を眺めてきた。 「漏れてんの?」  笑いながらそんなことを言うから、レイヴァーンは軽く睨みつけた。 「お前は少し黙れ」 「だって、ずっと待たされて退屈なんだよ。お預けが長いんだもん」  マイセルはイタズラな目をして、レイヴァーンに言うけれど、そんなのに絆されるレイヴァーンではなかった。そもそも、レイヴァーンに抱かれる気がないと宣言してきたような王子だ。庇護欲もなにもかきたてられないというものだ。 「そこ、ダメ、ダメだってばぁ」  レイヴァーンはマイセルに気が向いてしまっていた。そのせいでロイの様子を確認せずに突き上げ続けてしまったから、ロイは奥の奥をつつかれすぎて耐えられない状態にされていた。何とか掴まる場所はレイヴァーンの腕なのだけど、足が宙に浮いてしまっているから、不安定で仕方がなかった。  どこかに力を入れたいロイは、また首を捻って唇が当たった皮膚を噛んだ。 「いたっ…まったく噛みグセがあるのか」  レイヴァーンは仕方がないという顔をしながらも、ロイを一度持ち上げて、自分の方を向かせた。向かい合う形でロイを座らせると、ロイを抱き抱えてゆっくりとロイの中に入り直した。 「あっ、あっ、あぁぁ……っん」  レイヴァーンの体に、巻きついているロイの足に力が入った。ロイの手が回る範囲でしがみついたから、爪を立てるようになって、しかも今度はレイヴァーンの首筋に歯を立ててきた。 「こら、噛みグセをやめろ」  レイヴァーンはそう言って、ロイの頭を掴んで上を向かせた。上手く声が出せないロイは、今度はレイヴァーンの顎に噛みつきそうだ。 「私はロマンチストなんだよ」  レイヴァーンは顎を目掛けて口を動かしたロイの軌道を修正する。そうすることで、唇を合わせたのだけど、ロイは噛みたいのかレイヴァーンの下唇をかんできた。甘噛みだけど、食むのと吸うのを同時におこなってくるから、ロマンチックではない。 「少し落ち着け」 「んぁ、だって、お腹……熱いの、にっ」  魔力を放出しないように、根元を止められているせいで、ロイはずっと熱が溜まっている。そのどうにもならない熱を何とかしたくてもがいているのだ。 「魔力の結合が始まれば落ち着くはずだ」 「じゃあ早くしてよ!」  ロイがそんな訴えをしたものだから、マイセルが喜んだ。 「え、いいの?俺嬉しいな」  マイセルはそう言うと、ロイの体に手を回した。強引にレイヴァーンごとベッドの上を移動させようとした。 「おいっ」  片手で二人分を支えていたレイヴァーンは、マイセルを睨みつけた。 「だって、この子の希望を叶えてあげたいじゃん」  笑い方が王子らしくない。そんな下卑た笑がよくできるものだと関心してしまったけれど、マイセルの言っている事は無茶苦茶だ。 「もっと、奥に来て」  ロイの腰に手を当てながら、レイヴァーンごとベッドの中央に引きずった。そうして、ロイの背中をシーツに押し付ける。 「ひゃっ」  倒された衝撃で、中のものがロイの腹の裏にぶつかった。その刺激でまた、ロイの胎内がヒクヒクと動く。 「ちょ、っと、待て」  奥歯を噛み締めるように耐えると、レイヴァーンはマイセルを睨みつける。レイヴァーンに睨まれても、マイセルは全く動じなかった。 「ほら、俺は婚約者だよ?仲良く分け合おうよ」  そんなことを言って、レイヴァーンに微笑むけれど、分け合う内容は全く可愛くもないし、微笑ましくもない。どちらかと言えば、分け合うことではない。 「ほら、ロイ」  仰向けになっているロイの頭に手を添えて、横を向かせた。角度を合わせて、ロイの負担にならないようにすれば、さらに肩まで動かして、上半身だけ横を向かせているような体勢になった。  ロイの顎に手を添えて、緩く口を開かせれば、そのまま自身のモノを咥えこませた。本人がずっと我慢していたと言うだけに、先端からは雫が垂れ始めていた。  その雫が口内にこぼれ落ちれば、ロイの味覚が刺激された。上質の魔力を伴っているから、本来の味とは掛け離れた味になる。もちろん、そんな風に感じ取れるのは、ロイぐらいなものだろう。普通なら、腹に中に入ってから、自分の魔力に吸収するタイミングで魔力の質が確認できるのだ。それなのに、ロイは匂いや味で質が分かってしまう。そんな職業はないけれど、魔力のソムリエのようなものだ。 「っん……っあん……」  ロイが味わおうと大きく口を開けたところで、奥まで一気に咥えこませた。ロイの小さな口に、自分のモノが入ったことで、マイセルの気分は向上した。やはり、どうしたって王子として育ってきたために、征服欲は捨てられないと言うことだ。 「すっげぇ」  王子らしくない言い方をして、唇を舌で舐める様子は、欲に満ちたゲスな男の顔でしかなかった。侍従は黙ってそのようすを確認して、少し離れたところに立つテオドールに合図を送る。  テオドールは数歩歩み寄って、ロイの腹を確認した。結合を示す魔法陣がその数を増してきている。 「お二人共、一気に注いでください。結合が進んでいます」  テオドールは、いつの間にかに小さな本を手にしていた。それとロイの腹をチラチラと見比べているようだ。 「全く、情緒がないな」  呆れた顔をしつつも、レイヴァーンは腰の動きを早めた。繋がっているから、それに合わせてロイの体が揺れる。 「ロマンや情緒は、別の日にするものです。一対三ですよ。人数がおかしいと思わないのですか」  テオドールが呆れたように言うと、マイセルが笑った。 「俺はこう言うの結構好きだけど?この子時々甘噛みすっけど、それがまたいい刺激。おまけに婚約者様は色っぽい顔するし」  マイセルはそう言いながら、手を伸ばしてレイヴァーンの頭を掴んだ。そのまま後頭部を押さえて、引き寄せる。 「なっ、なにを…」  ロイの腰を掴んでいたから、レイヴァーンはマイセルのこの行動に対処できない。そのまま顔が近づいて、唇を合わせる羽目になった。閉じる暇がなかったから、レイヴァーンの口のなかには、遠慮なくマイセルの舌が入り込んできた。驚いたままのレイヴァーンの口内は、そのままマイセルの侵入を許して、しかも逃げ場のない舌をすぐにとらえる。 「………ふっ…ん……ん」  舌を絡め取られて強く吸われると、自分の口の中に、飲み込めない唾液が溜まる。それさえもマイセルは吸い取って喉を鳴らして飲み込んだ。 「なっ」  あまりのことにレイヴァーンが言葉をなくしていると、マイセルが舌舐めずりをして笑ってみせた。 「魔力を混ぜ合わせた方がいいんだろ」 「………っく」 「それに、俺たち婚約者じゃん」  そう言って、マイセルはレイヴァーンの唇を舐めた。  そんなことをしていても、マイセルの手はロイの髪を撫でていて、小刻みに腰を動かしていたから、刺激はじゅうぶんだった。なにより、ロイがマイセルの魔力を欲しがって、吸い付いていたのだ。 「エロくていいね、この子」  そう言いながら、腰を大きく動かした。ロイの喉奥の柔らかいところに先端を擦り付け、頭を押さえた。 「お腹いっぱい味わうんだよ」  それをみながら、レイヴァーンも終わりに近い動きをした。喉奥に出されて苦しかったのか、ロイの胎内の収縮が一段と増したのだ。他のことに気を取られてしまい、レイヴァーンも堪らずロイの胎内で解放した。 「レイヴァーン様、もう少し奥が良かったですね」  無表情にテオドールが言えば、こんなことになった原因のマイセルが笑った。 「えっ、やっぱり早漏?」 「ふざけるな。誰のせいだと…」  レイヴァーンが文句を言おうとしたとき、間にアレックスが入ってきた。 「結合が急速に進んでいる」  アレックスが見つめるロイの腹には、小さな魔法陣が結合を示しては消えていく。マイセルは慌てて編み上げたゆりかごを取り出した。それをテオドールが確認する。 「よく編めていますね。意外です」 「マイセル様は、こう見えて器用なんです」 「こう見えてとはなんだ」  マイセルはムッとしながらも、ゆりかごをロイの横に置いた。 「魔法陣が出なくなりましたね。結合が完了したようです」  テオドールがそう言うと、レイヴァーンとアレックスが目線だけでやり取りをした。そうして、アレックスがロイの腹に手を伸ばした。  ロイの薄い腹は、先ほどまでとは違った形に膨らんでいた。その膨らみにアレックスの指先が触れると、その手には虹色に輝く核が握られていた。 「ここに」  マイセルがゆりかごの蓋を開けると、アレックスは核をそっと中に入れた。蓋を閉じると、ベッドにずっと張り付いていた魔用紙をレイヴァーンが剥がして、ゆりかごの蓋に貼り付けた。  すると、魔用紙が光を放ち魔法陣が印を結び消えていった。 「約束は無事履行されました」  テオドールはそう言うと、メガネを外した。 「え?それなんだったの?」  マイセルが驚いていると、テオドールは真面目くさった顔で答えた。 「もちろん、あなた方の行為をしっかりと見届けるためです。ゲスな意味ではありませんよ。ログを取るための魔道具です」  そう言うと、ポケットから封筒を取り出してそこにメガネを入れた。 「記録はすぐに確認されます。明日には王都からのむかえと共に、城に戻ります。マイセル様はゆりかごとともに、離宮にはいることになりますね」 「わかっている」  マイセルはそう言うと、胡座をかいてゆりかごを膝に乗せた。そうして抱きかかえるように胸をのせた。 「では、おやすみなさいませ」  テオドールがそう言うと、ようやく部屋の灯りが消えた。

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