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四十四 シャワーに掻き消えて

「ん……、ふ……」  吐息を吐き出して、唇が離れる。視線が絡み合い、また唇が触れあう。離れたくなくて、離したくなくて、何度も唇を重ねあう。 「っ、ん……ぁ、航平……ん」 「っ……は、吉、永……」  ちゅ、ちゅく。と音を鳴らして、唇を啄んだ。シャワーの音が響く。二人ともびしょ濡れのまま、抱き締めあう。服が水を吸って重くなる。 「ぁ……、ん……」  ようやく唇を離したときには、吉永の唇は赤く腫れ上がっていた。俺の唇も、ジンジンと痺れている。 「っ……ハァ……っ……」  吉永が顔を赤くして、身体をもぞもぞと動かした。気まずそうな顔をする吉永を見下ろせば、先ほど反応を見せていた性器が、下着の上からもはっきりわかるほどに誇張していた。水に濡れているせいで、よりくっきりと浮き出ている。俺の視線に気づいたか、吉永は顔を背けながら目線だけは俺の方を見た。 「吉永、俺も……」  そう言って、脚に自身を押し当てる。びく、と身体を震わせ、切なげな表情をする吉永に、首筋に顔を埋めて唇を這わせた。 「あ……」  手を下着の方に伸ばし、撫で上げる。下着越しに触れると、びくんと小さく震えた。濡れた下着を脱がせようと手をかける。濡れているせいで、上手く出来ない。もどかしさに、息を吐く。 「ん、っ……航平……、っ……」  下着をずらし、誇張した性器に触れる。今にもはちきれそうだ。吉永はハァと息を吐いて、俺の方へと手を伸ばす。スーツのボタンを外し、スラックスに手を伸ばした。俺の方もだいぶ濡れたので、脱がしずらそうだ。それでも何とか下着まで手を伸ばし、半勃ちの性器を取り出して見せる。  互いに無言のまま、性器を擦り合わせる。ぐちぐちと音を立てながら粘液を混ぜ合わせ、固く反り立った性器を何度も擦りつけた。身体を密着させ、息を荒らげながら唇を重ねる。  やがてビクビクと身体を震わせ、精を放つ。 「あ、あっ……!」 「っ……」  どろりとした粘液が、手の中に放たれた。精液はそのまま、排水溝へと流れていく。  ドクドクと、心臓が脈打つ。さざ波のように欲望がゆるやかに引いていくのを感じながら、吉永の唇をもう一度塞いだ。軽く啄むようにキスを繰り返し、湿った髪を撫でる。シャワーのせいで、大分身体が冷えていた。 「いい加減、冷えたな」 「ん。しかも、服着たままだし。お前なんか、スーツだし」  顔を寄せて、クスクスと笑い合う。レバーを捻ってお湯にきりかえると、冷えていたせいでやけに熱く感じた。 「ん……」  もう一度キスをして、身体を引き寄せる。もっと、この肌を味わいたい。その気持ちは、多分同じだ。 「……俺の部屋行こう。そっちのが近いし」  俺の部屋は四階だが、吉永の部屋は五階だ。抱き合うのはいつも吉永の部屋ばかりで、俺の部屋に誘ったことはなかった。吉永が少し驚いた顔をする。 「――う、ん。うん」  何か感じるものがあったのか、そう言って吉永は俺の胸に額を擦りつける。  吉永を立たせ、シャワー室から出る。二人ともずぶ濡れなせいで、廊下に水滴がいくつも零れ落ちた。

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