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雪解けに舞う恋桜①
side.Yukio
『一緒に暮らそう』
当たり前のように告げられた台詞が嬉しかった。ずっとそうなったらいいなって…思ってたから。
いざ付き合うってなっても、オレは地元でバイトしてたし。母ちゃんや弟の事もまだ心配だったから。
結局は今までと変わらず、遠距離…ってほどじゃないから中距離恋愛かな?
そんな感じで月に数回、オレが智久さんの家に泊まりに行く形が続いてたんだ。
正直、恋しかったよ。
オレこんなだけど、チョー独占欲強いし…。
元恋人の事もあったからさ。
会えないのと距離感への不安で、本音はいっぱいいっぱいだったかんね…。
けど智久さんは、ちゃんと察してくれるから。
会えば必ず、甘えさせてくれたけども。
欲張ればもっと傍にいられたらなって…思ってたんだ。
だからさ、智久さんが一緒に住もうって…
このアパートから引っ越しして、新しい部屋を借りようって言ってくれた時はさ。
オレ嬉しすぎて、メチャクチャ泣いちゃったっけ…。
だって智久さんも、おんなじコト考えてくれてたんだなって。寂しいのはオレだけじゃないだって思ったらさ。
スゴく充たされるっていうか、片想いじゃないんだって実感出来たから…
もう幸せ過ぎてヤバいくらいだよ。
「意外と物件のチラシってあるんだな…」
買い出しついでに、店頭なんかに置いてあった賃貸物件の小冊子を、目についたヤツ片っ端から全部手にして。ほくほく顔で帰路を行く。
一緒に住むと決めてから、程なくして地元を出てきたオレは。智久さんのアパートに同棲…って言っていいのかな?
まあ、そういう事になってて。
今は新妻みたいに家事をしながら。引っ越し先と仕事を探してんだよね。
リクルート雑誌見てたら、智久さんが『俺の嫁になればいいだろ』って冗談じゃなく、割りと本気で言ってくれたのはチョー嬉しかったけど…。
それはさすがに甘え過ぎだしと、気持ちだけ受け取っておいた。
「あ…ここいいなぁ~。」
通りすがりの、不動産に貼り出してあった物件のチラシも携帯で撮ったりして。
ニヤついてしまうほっぺたを、グリグリと伸ばす。
だってさ~ホント結婚するみたいじゃん?
新居で暮らすだなんてさ~。なんか色々と想像しちゃうから…つい顔に出ちゃうんだよねぇ。
(智久さんのベッドでかいし、寝室は広めで…)
お風呂も広くてトイレと別々じゃなきゃなって、智久さん言ってたっけ。
今住んでるアパートは、広めのワンルームだけど。
ユニットバスだから、お風呂エッチしにくいんだもんね…智久さんガタイ良いし。
それでもエッチの後は絶対一緒に入って、イチャイチャしちゃうからなぁ…って、あ~…想像してたらヘンな気分になってきちゃったじゃんね!
(はふ~…幸せ過ぎて怖いぜ~)
買い出しで寄った八百屋のオバチャンにも、ニヤニヤしてて突っ込まれたし。あんまノロケてると後が怖いんだよね。
智久さんはオレのこと、スッゴク大事にしてくれてる。オレが前の恋愛でトラウマになってんのを知ってるから。
智久さんの男前な性格もあるけども。あの人にはホント、救われてんだよね…。
(だから、あのアパートは特別なんだよな…)
初めて本気で好きになった相手…元恋人の和樹が住んでた部屋であり。アイツに散々抱かれもした場所では、あったけども…。
アイツがオレから逃げるよう引っ越してしまった後に、偶然住んでた智久さん。
出会えた理由も、オレが未練たらしくアパート前に居座ってたからであって…。情けない話なんだけどね。
それでも智久さんが、行きずりのオレを見捨てず受け入れてくれたおかげだから…。
今は和樹との思い出じゃなくて。
智久さんありきでの“特別”に…変わってるんだ。
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