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③
「どしたの、急に…」
智久さんの許可も無しに、中へ入れちゃってもいいのかなと迷ったけど…。玄関先で出来るような話じゃないかもだしと、仕方なく和樹を部屋へと招いて。
何処か居心地の悪さに、オレは自ら切り出す。
や、和樹とはちゃんと話したいとは思ってたよ?
散々苦しめちゃったし、謝んなきゃなって…。
けど、いきなりだったしさ。
黙って逃げてったコイツが今更なんでって、ちょっと気持ち追い付かなくて。
なんだか混乱してるみたいだ、オレ…。
「もしかしたらと思って…さ。そしたら、お前を見つけたから…」
答える和樹は、懐かしそうに部屋を見渡す。
なんでもクリスマス後に一度、このアパートに来たらしくて。その時偶然にも、オレがこの部屋に入ってくのを見かけたのだと。
その時は声を掛ける勇気が、なかったらしいけど…。
「あんな風に、お前を傷つけちゃったからさ…」
ゴメンと頭を下げる和樹に。
オレはなんて応えたらいいか判らず、言葉に詰まった。
「雪緒はずっと、俺を信じて待っててくれたのにな…」
「和樹…」
憔悴する和樹は、なんだか知らないヤツみたいで。妙にざわつく胸を、オレはこっそり抑えつける。
「俺、ほんとバカだよな…」
オレが実家に帰ってからしばらくして。
和樹はその時良くしてくれた女の子と、浮気したのだと打ち明けた。
原因は勿論、オレが追い詰めちゃったから…だけど。
それからは、オレが連絡する度に罪悪感が募り。
精神的にも限界だった和樹は、逃げるようにしてアパートを引き払ったんだそうだ。
「まさか雪緒が、まだここにいてくれたなんて…」
「それはっ────」
確かに、あのクリスマスの夜。
このアパートに来た時はまだ、和樹に未練があったから…だけど。
今ここにいる理由は、既に変わってて。
言い淀むオレは、キョロキョロと視線をさ迷わせる。
だって和樹の物言いだと、勘違いしてるっていうか。まるでまだオレが…
「なのに俺は……ほんと、ゴメン…」
「和樹…」
違うよ和樹、あれはお互いに弱かっただけで。
お前だけが悪いんじゃない。
結局こんなになっちゃったけどさ?
だからこそ得られたものがあるし、今は────
「ゆきお…」
「…和樹?」
そう伝えようと口を開きかけたけど。
和樹の目が、オレをじっと射抜いてきて止まる。
その視線がやけに熱っぽいい気がして…
あり得ないと思いつつも、嫌な予感がしたオレは。身動きが取れなくなってしまった。
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