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第9話 神子召喚の儀式 ーラリー・トゥー・フェイブ第二皇子ー
私は神子の部屋から護衛を従えて、神子召喚の儀式を行っている祭壇へと足を運んだ。
10人の神官達が魔法陣を囲んで呪文を一生懸命唱えているが、祭壇の魔法陣はなんの反応も示さない。
「何をしているまだ召喚出来ないのか!」
儀式を監視していた大神官が、私の来訪に慌てて駆けつけて膝まづく。
「これはこれはラリー殿下、おみ足をお運びいただき申し訳ありません。残念がらまだ神子様は召喚されておりません」
「なぜ召喚出来ない」
「申し訳ありません。不眠不休でやっておりますが、魔法陣が全く反応しないのです」
「魔法陣の書き間違いをしてるのではないのか」
「恐れながら神官全員で確認しておりますので間違いはございません。もしかすると選ばれし12人が揃っていないから召喚が出来ないのかも知れません。イルーメ殿下がご存命であれば召喚が…はっ!」
「………」
「もっ、申し訳ありません。ラリー殿下」
「良い、儀式を続けよ」
「はい、畏まりました」
私の兄、イルーメ・ファイ・フェイブ 第一皇子は一番最後に現れた選ばれし12人の勇者の一人だった。
だが、4日前に死んだ。
兄上を可愛がり、体裁を気にした父は国王命令で『風邪で死んだ』と記録を改ざんしたけれど…この暑い季節に風邪とは無理がある。病名が思いつかなかったのだろう。
本当の死因は痴情のもつれで毒殺された。
だから兄上の名前を出すのは 憚 られるのだ。
大神官は選ばれし12人の勇者が一人欠けているから神子様を召喚できないといっているが…
選ばれし12人の勇者は公に報告がされていないだけで、すでに揃っているのだ。
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