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第24話 記憶の断片

ラリーに負わされた身体の傷を綺麗に手当してもらったのは良かったけど… 立て続けに男二人に抱かれて気力と体力はボロボロだ。 傷は治せても、使った体力は戻せないらしい。 身体がだるくて仕方ない。 寝ている間に風呂に入れられたようで身体は綺麗になっていた。 部屋も綺麗に元通りになって異臭もない。 俺の目が開いたら安心したようにエイプが 「今日は体をゆっくり休めて下さい」 と言って出ていった。 誰のせいでこんなに疲れてると思ってるんだよ。 こんなのおかしい! 女にモテまくっていた俺が男に抱かれるなんて!! ………最悪だ………… それなのに……………… 男に抱かれてあんあん💗泣いて喜んでいるなんておかしすぎるだろ! どうなっちまったんだよ俺はっ!! こんなの現実じゃない! 俺の人生にこんな事あっていいわけない! こんなドッキリあっていいわけない! 「え…ドッキリ?…」 今更ながら気づく……これは ドッキリなんかじゃない。 「…?………夢か?…」 いや、夢じゃないっ!! 夢ならもっとふわふわしている。 悔しいけれど、ここは現実で俺は変な世界に来ているんだ。 「神子様、どこかお加減がよくないのですか?」 「彼奴等のせいで、良いわけ無いだろっ!!」 傍に寄ってきたこの女はエイプの弟子だ。 キリッとして男っぽい感じがして仕事がいかにも出来そうだが、色気が全く感じられない茶髪の女だ。 「私は仕事で付き添えないし、男は信用できないので、女性のエルを付けます」 と、エイプがこの女を見張りに置いてった。 くそ、男は信用できないって…なんだよそれ。 女に護衛されるなんて情けなくてムカつく。 「あっちにいけ」 「失礼しました」 くそくそっ!! 俺が一体何したってんだよ。 学校で常に皆の中心的な存在で教師にも一目置かれるほど俺は優秀なんだぞ。 それがなんでこんな女と一緒に閉じ込められてんだよ。 なんで…俺だけがこんな酷い目に…あわなくちゃ… 『呪ったかいがあったわ』 ?! 頭の中に声が聞こえ、急に記憶が蘇った。 「あああああああああっ!!」 「神子様、大丈夫ですか?!」 そうかっ、そうかっ!! あの勘違い女、あの女の仕業で、俺はここに来ているのか? くそったれ!! 絶対に元の世界に戻ってあの女を八つ裂きにしてやる。 戻るにはどうすれば良いんだ、どうやれば戻れるんだ。 『助けてくれ』 『仕方ないな』 記憶の断片がまた蘇る。 ! そうだ坂井! 坂井公彦がいたはずだ! アイツはどこにいる? 一緒にここに来ているはずだ。 この部屋に一緒に連れて来られなかったのは… アイツが地味すぎて、神子に相応しくないから置いていかれたに違いない。 あの陰キャは、どう見ても神様に選ばれた使者って顔じゃないからな。 「ふふふ…」 「…神子様?」 良いことを思いついたぞ。   坂井を見つけて、ここに連れて来て助けてやろうじゃないか。 きっとアイツは この世界で苦労しているだろうし、一人で心細いはずだ。 生活の面倒を見てやる変わりに、アイツに俺の身代わりをやらせればいい。 俺の身体と比べたらアイツはヒョロヒョロしてて女っぽいから『本当の神子』だと言えば皆信じるだろう。 一人不安になって生活に困っている坂井は簡単に頷くに決まってる。 なんたってアイツは俺の下僕だからな。 俺はここでのんびりと贅沢三昧してやる。 「くくくく、ははははははっ!!」 「神子様、大丈夫ですか?」 「ああ大丈夫だ。凄く気分がいい。なんだか体力も戻ってきたみたいだ」 「本当ですか?それは安心しました」 「おい、お前、名前はなんて言ったっけ?」 「エルと申します」 「そうか、エル。裸になってこっちに来い。」 「えっ?!」 「聞こえなかったのか?エル、裸になってこっちに来い」 「それは…出来ません。私は…私には思いを寄せ…」 「いいから来い。ここで今一番偉いのは俺だろう。俺の言うことを聞け。みんなに無礼を働いたと言うぞ」 「…あ…あの…っ…は…い…」 震えて泣くエルをベッドに招き入れた。

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