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クロスオーバー【ウサギ+バンビ】1
【いじわる社長の愛玩バンビ 48話より抜粋】
「じゃあ、副店長の必殺技でお客様の方が泣いてる場合は?」
「それは感涙だからむしろサービスの一環だろ。サービス業はエンタメ、即ちプロレス」
たぶんちがう。
万里は心の中でツッコミを入れたが、桜峰が同じ感想を抱くわけもない。
「うーん…俺も何か技を持ってた方がいいですかね…?」
「なんか……湊はそのままでいいんじゃないか。無自覚のアウトなサービスが提供されそうで副店長としては不安だ」
「アウトなサービス?って何ですか?」
「……そのままのお前が好きだぞ、湊」
桜峰は首を傾げているが、みなまで言われずとも万里には『アウトなサービス』が何か分かった。エッチなやつだ。
***
朝食の際、ふっと昨晩の望月と鈴鹿との会話を思い出した湊は、物知りな竜次郎ならばわかるかもしれないと、聞いてみることにした。
「ねえ竜次郎。『アウトなサービス』ってなんだと思う?」
「は?…んな突然聞かれてもな…その『アウト』は前後の会話によって変わってくるんじゃねえか?」
「実は昨日お店でかくかくしかじか」
望月とのやりとりを説明すると、竜次郎はなぜか突然怒り出した。
「はああ!?その、副店長とかいう奴はあれだろ、お前狙いだろ」
「突然どうしたの?絶対違うと思うけど…」
「いや、絶対ェそうだ!その『アウトなサービス』は俺以外にするのは絶対に不可なやつだからな!」
「竜次郎以外駄目なサービス…………あ、エッチなことかな」
「そうだ。そんな発想が出てくること自体お前をそんな目で見てるって証拠だろ」
「ええ…?副店長が?そんな雰囲気感じたこともないよ」
「それはお前が気付いてないだけだ」
「うーん…。でも副店長はいい人だから」
「…お前がいい人じゃないって判断する人間を俺は見たことがねえ」
「そ、そうかな…。あ、そうだ。副店長はちょっと竜次郎と似てるところがあってね、頼りになるっていうか、お兄さんみたいな感じっていうか……竜次郎?お仕事?」
湊の言葉の途中で竜次郎はスマホを手にした。
仕事が入ったのかと問うが、答えを聞いて湊は驚く。
「神導に電話する」
「え?今の話の流れで?」
「お前が仕事辞めたくねえってんなら俺も同じ場所で働く。お前を不埒者から守るためにな」
「えっ……、えぇっ!?」
湊は『竜次郎に似ているから信頼できるので安心して欲しい』と伝えたつもりだったが、『自分に似ているのなら湊の射程範囲内ということになる』と逆に竜次郎の不安を煽ってしまったのであった。
無論、電話口の神導は、
『馬鹿なの?不採用』
の二言で切って捨てた。
おしまい。
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