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【番外編】武蔵※

「大丈夫か?ノエ?」 「だ…いじょ…ぶ、あっ、や、ああん…」 ノエと付き合い始めた。 この上なくハッピーな日々を過ごしているが、普段の生活では『無神経だ』と相変わらず言われ、ツーンとされることがある。 その理由のひとつとして、人前でノエを抱き上げたり、キスをしてしまうからだろう。頭を撫でたり、髪にキスをするのもやっぱり二人きりの時じゃないと、怒られてしまう。せいぜい許してくれるのは、誰もいない夜の道で手を繋ぐことくらいだ。 武蔵は人の目など特に気にしないので、ところ構わずノエにキスをしてしまう。ノエの横顔を見ていると、チュッとその柔らかい頬にキスをしたくなるんだからしょうがない。 だけどノエはそれが恥ずかしいようである。武蔵もノエに嫌われたくないため、人前では派手なスキンシップはしないようにと、気をつけていた。 だが…ノエは二人きりになると、普段のツンツンモードからギュイーンと180度変わり、武蔵にデレデレと甘えモードになる。 更には、ベッドの中だと激甘え全開で攻めてくる。ベッドで武蔵がキスをし始めるとノエは甘え始め、頭をグリグリと肩に押し付けてきたりする。 誰がこの状況を想像出来るというのかっ!こんなに可愛くてどうしてくれるのかっ!なんなんだこのギャップはっ!と、武蔵は鼻の下を伸ばしながら考えていた。 ノエと付き合い始めてすぐ同棲をした。予定では、武蔵が新しく引っ越しした家に数ヶ月後ノエが越してくるはずだったが、二人の生活スタイルでは同棲する方が何かと便利である。なので即同棲した理由は、そんなシンプルなものであった。 休日になると二人でノエの実家に行き、部屋を片付け、キッチンで武蔵が料理を作る。仕事の日は新しい引っ越し先から二人で出勤し、また二人で同じ家に帰る。ノエの実家の取り壊しが始まるまでは、二人共この生活スタイルを続けることになるだろう。 しかしあの家のキッチンが無くなるのは、ちょっと寂しいなと武蔵は思っている。 ノエの祖母が使っていたキッチンは、使い勝手が良く、料理に集中できる作りになっている。 それに、へそくりを隠すことが出来るように、キッチンには隠し場所が多くあり、武蔵にとっては新鮮であり、面白いと感じる場所であった。 ノエの祖母が残してあるレシピやメモなどが、キッチンから沢山見つかっている。それらを読んでいると面白くて、時間を忘れてしまうほどだった。 恐らく、ノエの祖母はキッチンを自室のひとつとして考えていたようだと思う。楽しいことも、嬉しいことも、悲しいことも、悩むことも、あのキッチンで祖母は考えていたんだろうなぁと、武蔵は思っている。 隠し味やノエの食の好みなども、祖母からのメモが教えてくれていた。だから武蔵は、メモを読みながら、あのキッチンで祖母のレシピ通りに料理を作り、ノエを喜ばすのが好きだった。 そんなノエの実家を見て感じたのは、ノエは祖母から大切に育てられていたということ。 丁寧な暮らし方や、大切にする物の順序など、武蔵がノエを好ましいと思うことは、祖母の教えがあったからだと感じている。 だから、同棲を始めたこの家のキッチンに、ノエと祖母の写真を置き、毎朝『今日もノエをよろしくお願いします』とか『ノエが味噌汁を喜んでくれました』とか、武蔵は心の中で写真の祖母に話しかけていた。 そんな忙しいようでもあるがリズムが整っている二人の同棲生活は楽しい。 他人と暮らすのは初めてであるが、ノエとはずっと前から一緒に暮らしていたように、しっくりときていて順調である。 年末に痛めていたノエの足の怪我が治った頃、武蔵は『身も心も貰いますよ』とノエに伝え『うん』という返事をもらっていた。 そこで、今最大の悩みが出てきた。 ふう… 自分では、特に性欲が強い方だと思わなかったが、今は止めるのが難しい。ノエのことを抱き潰してしまうんじゃないかと思うほど自分の性欲が強くて怖くなる。だけど、ノエに甘えられると止められない。 武蔵は葛藤していた。 誰か教えてくれ! ツンデレの取り扱いを! 心の中ではそう叫び、自分の強い性欲に悩んでいるのだが、気持ちも身体も腰も止まらない。もう何度目かわからないほどノエとのセックスにのめり込んでいる。このままではノエの身体を壊してしまいそうだ。 「ノエ?苦しくないか?」 「や、や、…もっと動いて?武蔵さん、ギュッてして?ああん、離れちゃヤダぁ…」 ほら…な。 ノエは普段とのギャップが激しいんだ。 普段の生活ではツンツンとしていても、ノエは基本的に素直だ。それが武蔵にはわかっているからノエのことが愛おしくて、可愛くてたまんない。 だけど、セックス中はツンツンが影を潜め、デレッデレに変わってしまうんだ。 「…ノエ、ちょっと緩めてくれる?すぐイキそうになっちゃうから」 「ヤダぁ…できない…離れないで?武蔵さん?もっとして?」 「ダメだよ…早漏になっちゃうだろ?カッコ悪いからさ…もうちょっとノエの中にいさせてくれよ」 「そんなことない!武蔵さんはカッコいいもん。ヤダ、好き好き…」 顔を見れば高揚していて、潤んだ目で見つめられ熱烈な告白を受けている。そんなこと言われたら興奮して股間が爆発するっつうの!と、武蔵は腰をぐりぐりと強く押し付けた。 ノエの足を抱え直し、武蔵は腰を奥に押し込めると、グチョグチョというしっとりと水が滴る音から、肌と肌を叩きつけるパンパンという乾いた激しい音に変わる。 ノエがこんなにエロいとは想像つかなかった。セックスの最中は恥ずかしくないようで、エロいこともおねだりでもなんでも言ってくれる。おかげで武蔵のペニスはずっと勃起したままで痛いほどだった。 腰が止まらない武蔵のラストスパートが加速する。ノエの腰を掴み宙に浮くくらい持ち上げたまま激しく奥深くを突いていく。少し強引にしてしまうがノエは満足しているようで、もっともっとと、求めてくる。 「辛かったら…言えよ」 「はぁぁ、ああ、んんっああ、気持ちいい…武蔵さん、イクぅ…やああん」 ノエは身体をビクビクとさせ絶頂し、精子を出さずにイッているようだ。最近は、2回目以降こんな感じでイクことが多い。本人はこのイキかたをすると、気持ちがいいのが長く続くと言っていた。それを知り、また、そのいやらしい姿を見ると武蔵の興奮度はMAXになる。 「ああ、俺も…イキそう。中に出していい?あっ、、やべっ。イク…うっ、、」 ドンドンと射精するタイミングに合わせて腰をノエの奥に叩きつけた。ぬるぬるとしているノエの奥深くに精液をぶち撒いている。 気持ちが良くて、ビュビュッと出ている精子を最後まで絞り出し、グリグリと腰を押し付けた。 「ノエ?大丈夫か?今、体拭くもの持ってくるから、ちょっと待ってて、」 「ヤダ、行っちゃやだ。抜かないで、もうちょっとこのままでいて?」 「うーん、中に出しちゃったからダメだよ。じゃあ風呂一緒に入るか?今、入れてくるから、な?」 チュッチュッと頬にキスをして、ノエに言い聞かせている。相当イチャついてるのはわかっているが、誰も見てないからいいだろう。 「ふふふ…奥にジワァッと武蔵さんのが広がっていくのがわかる」 エロい…。 セックス後のノエも相当いやらしい。 中出しした精液が広がっていくと、恥ずかしそうに言う。そんなこと言われるとまた武蔵の下半身は元気にムクムクと育ってきてしまう。何度も射精しているのに精子が尽きることがなく、毎回大量にドクドクと出し続けているなんてっ!こんな快感は人生初である。 このままキスをして抱きしめて、また前戯を始めて…と、繰り返してしまいたくなるのを、グッと我慢し、何とかノエを宥めてバスルームに湯を張ってきた。 大きなバスルームがある賃貸を選んで正解だ。毎回心底そう思っている。 「抱っこして連れて行くから、一緒に風呂入ろうな」 「うん…好き、武蔵さん、好き」 ベッドでコテンと身体を横にし、武蔵を見つめて笑っているノエは相当可愛い。絶頂した後だから、ふわふわとしているのだろう。 頭を撫でてキスをする。潤んでいる唇にキスをするとチュッと音が立った。 「ノエ…俺、ヤバいよな。嫌だったらちゃんと言えよ?俺さ、かなりお前にのめり込んでるんだよ。お前のこと好きで好きでたまんないんだぜ。それなのにさぁ、そんなに可愛いことされるとさぁ…ノエのこと壊しそうで心配、」 「違うもん、俺の方が好きだってば。それに壊れないから大丈夫だよ?」 なっ? 全世界の人に知って欲しい。 俺のノエはこんな甘え方をするんです。 実は甘えん坊なんですよってこと。 ノエを抱き寄せ、チュッと髪にキスをした後、顔や頬、唇に首筋とキスをする場所を移す。するとノエも応えてくれる。 で、こうなって盛り上がってくるとその後言われることがある。『入れて?』ってノエはすぐに言うんだ。 マジで俺は何かの試練を与えられているのか?ノエの甘えがエンドレス…と、武蔵の脳内葛藤も止まらない。 「…ん、ふぅ、武蔵さん?ねぇ、」 「ダメ。風呂に入るから」 ノエからの言葉を遮り、鼻にちょんとキスをした。本当にこのままだと快楽に流されてしまい、何度もノエを求めることになる。本気でノエを抱き潰してしまいそうだ。 ツンツンとした態度のノエに好きだと言われ、そこから意識し始めたのは確かだ。 その後、ツーンとした態度を面白がっては、休日になるといつも一緒に過ごそうと、誘っていた。 一緒に過ごすと分かり始める。その他大勢の中にいるノエと、二人きりの時のノエは大違いであること。今どきの若者だと思っていたが、ノエはちょっと違っていた。 効率ばかりを求めて無駄を省く今どきのタイプではなく、多くの人が無駄だと思うことでも大切にすることがあり、それがとても武蔵には好ましかった。 それに古風である。日々の生活の中で時間をかけたり、向き合うことが武蔵と同じものであったり、同じ感覚を持っている。それは武蔵が自身の基盤としているものであったりする。 そんなノエの素顔を知れば知るほど、武蔵の想いは膨らんでいく。だから会う度に『俺と付き合う気になった?』と聞いて武蔵から告白をしていた。だけど、ノエに伝わらなかったのか、いつも断られ振られていたんだ。 「さあ、風呂入ろうぜ。ほら、いい?」 「うん、」 ノエを抱き上げてバスルームまで向かう。途中、ノエが武蔵の身体にスリスリと頬を寄せて「好き…」と呟くのを聞き、武蔵はバスルームに行く間も足が止まってしまった。 ヤバい。恋人が可愛すぎる… ノエのこの行動は無意識だ。 無意識がすぎる… これって罪なんじゃねぇの? 本日2回セックスをしているので、バスルームでノエの後ろから武蔵の精液を掻き出す。この行為も素直にノエはやらせてくれる。やってる最中、ムラムラするのは内緒にしておいている。言葉に出して言うと、また性欲が加速しそうだからだ。 湯の中でノエを膝の上に座らせると、こてんと頭を自然と武蔵の肩にもたらせてきた。普段のツーンとしたモードからは考えられない。無意識ってすげぇと、武蔵はデレモード中のノエの行動に胸を熱くする。 「ノエ、大丈夫か?疲れたろ。俺の性欲ヤバいよな、もうちょっと抑えるように努力します」 「ヤダ…抑えなくていい。もっとして欲しいもん。俺だって性欲あるよ?」 「いやいや、ノエと俺の性欲なんてケタが違うよ?俺の性欲なんて本当はバケモンみたいで知ったら引くよ?これでも頑張って抑えてるんだけど、今より理性無くしたらヤバいって」 「でもさぁ、俺だって武蔵さんにしてもらいたいのは本当だよ?武蔵さんは見た目よりガッシリとしてるからさ…腕は逞しいし…それにほら、ここ…この胸板とか、好き。この身体に抱かれてるって思うと、ドキドキしちゃうもん」 ノエに身体を撫でられる。湯の中で熱ってるのか、ノエは「はぁ…」とため息をつき、いつもよりうっとりとした色っぽい顔をしていた。 その顔をガン見してしまう。今、キスをしたら、このまま押し倒してしまうだろうなと、武蔵は考える。 そんなノエの姿を見て考えていると、下半身に熱が集中し、武蔵の懲りないペニスが勃起し始めていた。 「ほら〜またぁ〜。ノエがそうやって俺のことを甘やかすからだよ?本気で止まんないんだって。こうやっててもさ、また勃ってきそうだしさ。俺、本当どうしたの?」 理性を集めて明るく答える。ちょっと強引に、無理矢理やってしまいそうな気持ちを抑えるのが必死だから、ジョークに変え、 あはははと声を上げて二人で笑う。バスルームの中に声が響いていた。 「いいの!それでも。武蔵さんにされるの好き。それにさ、こんなカッコいい人が彼氏だなんて、まだ信じられない」 そう言い、ノエがぎゅっと抱きついてきた。何をしていても鼻の下が伸びきってしまう。武蔵もノエのことをぎゅーっと抱きしめ、首筋にきつくキスをした。キスをすると赤く跡がつくノエの肌は好きだ。 「ノエ、そんなに俺のこと甘やかすと、どうなるかしらねぇぞ?」 武蔵の下半身はムクムクと大きくなってきて完全に勃起していた。なにかっつうと、すぐに勃起してしまうなんて、中学生かよっ!と思うくらいだ。 「本当だよ?武蔵さんは優しいし、カッコいいし、頼もしいもん。セックスだって…いつも力強くって気持ちいいし。いっぱいしたい…もっと強引にして?」 強引なセックスをしてしまった。そう反省してたのに、ノエはその強引なところが好きだという。 初めは優しくしようと自分に言い聞かせてきた。だけど、回数を重ねるうちにセックスは激しくなっていく。後ろからのしかかり、ノエの腰を掴み奥深くまで何度もゴリゴリとペニスを打ちつけたりしていた。 動物が交尾するようなスタイルに、ノエは興奮するようで、何度も『後ろからして、お願い、強く抱いて』とおねだりされてしまう。 そんなこと言われると、自分が野獣にでもなったかのようにノエの身体が浮く程掴み上げて、ガツガツと腰を送り込んでしまう。ペニスの根元までぐりぐりと押し込んで、熱い性液をノエの中に大量に放ってしまうんだ。 しかも、ノエはゴムを付けたがらないから武蔵は毎回ノエの中、奥深くで射精している。中で出すとそれだけで興奮度MAXになるから、もう一回、あと一回とセックスがループして止まらなくなる。すると、セックスが過激になってきて、前から後ろから、時には立ちバック、バスルーム…と所構わずにやり始めてしまうことになる。 そう思い出し、また野獣のようにやり始めてしまいそうになるのを、武蔵は必死で堪えた。 ノエとのセックスはいくらでも出来てしまう。武蔵は下半身に血が集まるのも、腰が動き出してしまいそうになるのも必死で抑えているのに、ノエの方はそんな武蔵の揺れる気持ちはお構いなしのようだ。 「ふふふ」とノエは、ご機嫌に湯の中でも、デレデレと甘え始め武蔵に抱きついている。このデレモードのノエは最強である。気を許すと、ふっと吸い寄せられ、口内を弄るような濃厚なキスをしてしまうんだよな…と、武蔵はノエの唇を見てさっきまでの行為を思い出していた。 ダメだ…ダメだっ! こんなんじゃダメだ! 俺はノエを甘やかして優しくしたいんだと、思い直し、無理矢理話題を変えた。 「えっと…明日はさ、どこを片付ける?おばあちゃんの部屋はもう大丈夫だろ?」 明日は二人揃って休日である。ノエの実家の片付けをして二人で泊まってくるつもりだ。 「うん、おばあちゃんの部屋の写真はもう全部こっちに運んだし…後はもうそんなに片付けは残ってないよ」 ノエの祖母のコレクションである写真は、全て武蔵と同棲を始めているこの家に運んである。どれを持っていこうかなと悩んでいたノエに「全部持ってくればいい」と武蔵は伝えていた。 なのでこの家の、ひと部屋は武蔵の本と、ノエの祖母の写真が詰まった部屋になっている。写真は全て持ってこれてよかった。小さい頃からのノエを、祖母から引き継いでもらうことが出来たと、武蔵は思っている。 「そっか…じゃあ、俺はキッチンを片付けようかな。それからさ、お父さんに会えるのいつ?そろそろ挨拶しないとさ」 「えーっ、なんか恥ずかしいよ。別に会わなくてもいいかなって…電話では伝えてあるんだしさ」 武蔵はずっと気になっていた。ノエの父親に直接会って挨拶をまだしていない。それなのに既に一緒に暮らし始めている。筋を通してないことが気になってたまらない。 だけど、ノエにこの話をすると恥ずかしがってしまう。 「明日、あっちの家に行くだろ?そこで会えないかな。もしくはどこかまで俺たちが行ってもいいし。とにかく、これから先、ノエのことを大切にしますって会って伝えないと。電話じゃなくてさ」 電話では既に話をしていた。付き合うことになり、一緒に暮らしますと。ノエの父親は驚いていたけど、それでも『よろしくお願いします』と言われ、認めてくれている。だけど、きちんと顔を合わせて挨拶するのが必要だと武蔵は思っている。 「うん…わかった。武蔵さん?大切にしてくれて本当にありがとう」 こくんと頷いているノエにチュッとまたキスをした。よかった、やっと本気で父親と会わせてくれる決心がついてくれたようだ。 「それとさ、とりあえずこの家に引っ越してきたばっかりだけど、いつか二人であの家みたいなところに住もうな。でかい平屋の家を建ててさ、キッチンもおばあちゃんと同じように造りたいなって、俺は思ってるんだ」 「ええっ!そんなこと考えてるの?」 武蔵の肩にもたれかかっていたノエが、驚いたように顔を上げた。ザッパっと、風呂の湯が揺れている。 「そうだよ。俺さ、家なんて寝る場所だけあればいいってタイプだったんだけど、今はノエと一緒に快適に過ごしていきたいって思うようになったんだ。それはさ、あの家…ノエの実家がすごく居心地よかったからなんだよね。だからあの家を再現して建てたいなって…そんでお前と一緒に暮らしていきたいなって思ってるんだ」 『人生は食事と愛だ』とは、武蔵が尊敬しているリストランテ「フィエロ」のオーナーシェフの言葉である。 今まではその言葉を聞くと「ふーん、まぁそうだよなぁ」くらい、薄く納得してたけど、食事と愛が人生っていうのが、ノエと一緒にいる今ではよくわかるようになった。 ノエの実家のキッチンに愛が溢れているのも、その言葉通りだと思う。ノエは祖母から食事と愛をたくさん貰っていたと強く感じる。 「武蔵さん、本当にかっこいい…」 「ええっ?今の話のどこにそう思うことあるんだ?」 「…ほら、また無神経なこと言う。かっこいいのがわかんないの?」 ツーンとしたモードのノエが出てきてしまいそうになる。だから、まだデレデレでいてくれと、武蔵は湯の中でもう一度ノエを抱え直した。 「…好きだよ、ノエ。愛してる」 ノエの唇にクチュッと濃厚なキスをする。 口内を弄るようにキスをすると、ノエの少し短い舌が絡みついてきた。気持ちがよくて、何度もノエの舌を吸い上げると、ノエも角度を変えてキスをしてきてくれる。ノエの唇も柔らかくて気持ちがいい。 「明日、何食べたい?」 「うーんと…あっ、お稲荷さんがいい」 「おっ、おばあちゃんのお稲荷さんだな?よし、中身はゴマにするか。後で写真を見直しておこうっと」 明日は休日だ。 二人で久しぶりにクイズでも出しながら、キッチンの片付けをしようかなと、武蔵は考えながらノエにキスをした。 だけど、今は…もうちょっと。 「ノエ、のぼせちゃうからもう出るか?また抱っこしてベッドに連れて行くからさ…もうちょっと俺に付き合ってくれる?やっぱり、まだ抑えられなくてごめん…」 「うん!ギュッてして?武蔵さん…好き」 デレデレモードに戻ったノエを、湯の中できつく抱きしめる。ノエの首筋にキスをし、強く吸いついて跡を残してしまう。跡をつけられたノエは甘い声を上げていた。 食事と愛が人生だ。 その両方共、好きな人で出来ている。 そう気がついた俺は何てラッキーなんだと、武蔵は考える。 「ノエ?好きだよ…」 「…知ってるもん」 抱き上げたノエと視線を合わせる。 クスクスという二人の笑い声でバスルームを後にした。 「俺の恋人は心も身体も甘い…」 と、歩きながら呟くように武蔵が言うと、 「何それ?クイズ?」 と、ノエは言いクスクスと笑っている。 そうかもな。 答えのないクイズかも。 「じゃあ…」と、武蔵はベッドにノエをゆっくりと降ろし、耳元でクイズを囁く。 「えっ?何それ、ふふふ。それは…」と、クスクスと笑って答えようとしているノエに覆い被さりキスをする。 「…答えは?」 「わかんないよ、ふふ。武蔵さんのクイズは難しいんだもん、」 「難しくないだろ…」 チュッと唇に何度もキスをする。 俺が出す『休日のクイズ』なんて、全部君への質問なんだけどなぁ… 今までだってそうだったんだ。 映画にかこつけて、君のことが知りたくてクイズにしてたんだ。なんて言ったことないけど気づいてるかな?と、武蔵は笑いながらノエの顔を覗き込んだ。 end

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