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人間椅子【BL版】

 うららかな春の昼下がり、ひと仕事終えたベンチャー企業の経営者・藤堂俊介(とうどう しゅんすけ)は、マンションのリビングに設置した、新調したばかりのひとりがけソファに体を預けていた。  シャワーを浴びたところだったので、彼のかっこうはフードつきパーカーにジョガータイプのジャージと、いたってラフなものでまとめられていた。  少しだけ端末でメールやSNSをチェックしたあと、俊介はたわむれにネットのラジオをかけた。  穏やかなジャズ・ピアノの調べが流れてくる。  春の陽気にこれほどマッチする選曲もない。  日頃からたまっていた疲れと、その音楽の心地よさに負け、俊介はソファに全体重を乗せる形で、いつしかうとうとと眠りに入っていた――    * 「坊っちゃん、坊っちゃん」  ん、なんだ? 「坊っちゃんはたとえば、いま体を預けている大きなソファの中に、とびきりの美男子が好みの変質者がひそんでいたとしたら、ふふ、どう思われるでしょう?」  なんだ、この声は?  いったい誰だ?  どこから聞こえてくる? 「ああ、坊っちゃん。坊っちゃんのお尻、とても柔らかい……しかし、とても引き締まっている。ふふ、高得点ですよ?」  なんだ?  尻がムズムズする……  触られているのか?  いったい誰が…… 「坊っちゃん、わたしは知っているのです。坊っちゃんが真性のドMでいらっしゃることを。ですから坊っちゃんは、いまもこうして、下着もつけずに、ピチピチのジョガージャージを履いていらっしゃる。柔い布地に締めつけられる感覚がたまらない……そうでしょう、坊っちゃん?」  ああ、そこは…… 「ふふ、坊っちゃんのタマタマ、ふにふにしていてかわいいですね。ここも敏感なのでしょう? ふふ、わたしなどよりもよほど変態ですね、坊っちゃん? おや、タマタマが締まってきましたね。と、いうことは――」  ああ…… 「ふふっ、やっぱり! おチンチンが硬くなってきていらっしゃる! まだお尻とタマタマを少し撫でてあげただけですのにねえ。なんというはしたない方でしょう……そんなビッチの坊っちゃんには、こうです――!」  ああっ――! 「ふふ、坊っちゃん、お尻を叩かれて感じていらっしゃるのですか? とんだ変態ですね! もっとしてあげましょう、それっ――!」  あっ、あっ、あひっ――! 「あひっ、ですって! 変態の坊っちゃん! あ~あ、いまのでここもすっかり――」  あっ、ああっ――! 「ふふ、おチンチンがガチガチに勃起してしまいましたね! まったくいやらしい! どうです? ここ、いじめてほしいですか?」  ん、ほしい……  いじめて、ほしい…… 「ふん、イケメン実業家も一皮むけばただの変質者ですか。いいでしょう、ではいきますよ? それっ――!」  あっ、あああっ――! 「ははは、坊っちゃん! その顔、最高ですよ! 服の上からペニスをしごかれ、抵抗するどころか、快楽に喘いでいる! とんだ変態野郎ですね、あなたは!」  ああ、もう、ダメ……  来る、来るう……! 「ふん、ビッチめ! イってしまいなさい! あなたは見も知らない男から辱められ、あらがうこともせず快楽を受け入れ、射精するのです!」  あっ、あっ、あっ、イく、イく、イくっ……! 「ジャージの中にぶちまけちまいな、このブタクソビッチが!」  イく、イく、イく……  イいいいいいいいいいいっ――! 「ふふふ」  はあ、はあ、はあ…… 「あーあ、いっぱい出しましたね、坊っちゃん。ジャージがベトベトですよ?」  はあ、もっと、もっと…… 「おやおや、おねだりですか? いいですよ。ただし、当クラブへの入会が条件になります。それでもかまいませんか?」  する、入会するから、早く…… 「ふふ、いい子ですね、坊っちゃん。それでは続きといたしましょうか」  あっ――    *  このときを境に、藤堂俊介の姿を見たものは、誰ひとりとしていなかった――

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