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オメガになりたい6
樹くんに協力して貰って、後天性オメガになる方法を試して一ヶ月経ってもヒートはこなかった。もっとも、ヒートは三ヶ月に一回だから単にまだ来ないだけかもしれないけれど、やっぱりそんなに簡単にΩになんてなれないのか、と少し落ち込む。
そうやって僕が落ち込んでいると、樹くんがそれに気づいて抱きしめてくれる。
「そんなに落ち込まないで。それに何度も言うけど、俺は優斗がベータだろうとオメガだろうと関係ないよ。優斗は将来のことを心配してるけど、子供の生まれない夫婦だっている。もし子供を、というのなら養子を貰えばいい。仮に、優斗と別れろと言われても、そんな性別のことで別れたくなんてない。優斗以上に大切なものなんてないんだ。優斗が望むなら、俺は家だって捨てるよ」
思ってもいないことを言われて、言葉が出なくなってしまった。
性別なんて関係ない、というのは付き合うときから言われていた。でも、養子を貰うことや家を捨てるなんてのとを聞いたのは初めてだった。
もちろん、樹くんに家を捨てさせるなんてしない。樹くんは如月家にとって大切な存在なんだ。僕なんかのためにそんなことをしてはいけないんだ。
だから、その為にもオメガになりたかった。僕がオメガなら、僕は樹くんと一緒にいられるし、樹くんの家のためにも子供を産むことだってできる。だから、後天性オメガになりたかった。
だけど、性別を変えるのなんてそんなに簡単なことじゃなくて。もっともそんなに簡単にできるのなら性別で悩んでいる人なんていなくなるわけで。
後天性で性別が変わるのは、あくまでも特殊なことで、なかなかないことだ。それは、どんなにオメガの多い家系のベータであってもそれは変わらないんだ。単に他の人よりほんのわずか確率が高いだけだ。
そんなことはわかっている。でも、どうしてもオメガになりたいんだ。樹くんに迷惑はかけたくないし、家を捨てさせたくない。
一度試して、まだヒートがこないからと言って落ち込んでも、三ヶ月めぎりぎりに来るかもしれない。
それにもし今回ダメでも誘発剤はまだ後四錠残ってる。つまりまだチャンスはあるんだ。
ホルモン剤だって何回打ったというんだ。十年以上にもわたって打ってきたじゃないか。
それをたった一回試してまだそんなに経たないうちから諦めてどうする。しっかりしろ、自分。
その日は大学の講義が終わり、樹くんと一緒に校門を出ようとしたところで樹くんを呼び止める声がした。
振り返ると、綺麗な男オメガとして校内でも有名な子だった。
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