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束の間の幸せ2
「それよりさ、式、明後日なのに、式前日まで仕事って疲れない?」
「僕は今、忙しくないから大丈夫だけど、樹くんはキツイかもね」
「まぁ、日曜日空いてなかったから仕方ないけど。でもよく七月なんて取れたよね」
「樹くんのお父さんの力だよ」
そうなのだ。当初は十月頃となっていた結婚式が七月になったのは、樹くんのお父さんのコネで内輪だけの式だけなら、と予約が取れたのだ。披露パーティーは特にしなくて、式出席者だけで食事会をすることになっている。
加賀美の家的には式はどうでもいいけれど、樹くんの方は大丈夫なのか、と思っていたら、一般社員と同じに働いている今なら内輪だけでも大丈夫とのことだった。
「でも、式の翌日は日曜だから休めるよ。ホテルも取ってあるし」
式は土曜日でその日はホテルに泊まることにしてあるから、食事会が終われば、もう休める。本来、新婚旅行となるところだけど、新人の僕達がそんなにゆっくり休めないので、新婚旅行は年末年始に行くことにしてある。
「でも、新婚旅行の代わりなんだから式の後は頑張らないと」
「頑張るって?」
「優斗のお父さんが言ってたでしょう。子供は早くって」
そう言って樹くんはニヤっと笑った。僕は恥ずかしくて顔が火照ってしまう。確かに両家の親ともに早く孫の顔が見たいと言っている。だから、結婚式の後はそういうことをするんだということはわかるのだけど、それを口に出されると恥ずかしい。
「まぁ、子供云々抜きにしてもさ、結婚式の後ってなったら流れでそうなっちゃうでしょう」
「そうだけど、口にしないで。恥ずかしい」
「もう何回もしてるのに。優斗可愛いな。こんな可愛い優斗を俺のものにできたってすっごいラッキーだよな。あのとき頑張って告白して良かった。他のヤツに取られなくてすんだ」
「僕を狙ってる人なんて樹くん以外いないから」
「いたってば。優斗が知らないだけ。物静かでさ密かに人気あったんだよ」
「そうかなぁ?」
樹くんはそういうけれど、樹くん以外の誰かに告白されたとかないからわからない。それを言うなら、モテる樹くんが旦那様になることが不思議だ。自分なんかでいいんだろうか。そう言うと
「俺は優斗以外目に入ってないから問題ないよ」
と蕩けそうな甘い言葉と表情で返されてしまう。そんな樹くんを見るたびに、僕が幸せだと感じているのは通じているのだろうか。
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