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帰宅6

「優斗はさ、もうお父さんやお母さんに言われたことから自由になっていいんだよ。子供のこともそうだけど、性別の優劣もそうだし、役立たずとか出来損ない、なんて言われたこともさ、全部忘れていいんだよ。優斗は役立たずでもないし、できそこないなんかじゃないから」  そっか。僕はもう、そんな呪縛から自由になっていいのか。 「それより、お父さんと連絡取ってたんだな」 「取ってたというより、父から電話がたまにあったから。父からの電話にでないと怒られるし」 「なんだ、それ。お父さんには逆らえない感じだし。俺だったら、とっとと携帯番号変えてるよ」  そう言う樹くんの顔には、ほんのり色が戻ってきた。 「もうさ、電話でなくていいよ。なんかあったら、父さんのところに電話あるだろうし。いや、普通、そんなことけしかけちゃダメなのわかってるけどさ」  そうブツブツ言う樹くんは、もういつもの樹くんで僕はホッとした。これで明日からはきちんと食事できるよね? 頑張って食べて貰わなきゃ。あ、僕も少し痩せたから、二人で頑張らなきゃか。週末はどこか行って美味しいもの食べてもいいな。明日、樹くんに言ってみよう。 「優斗、聞いてる?」 「ううん。聞いてない」 「優斗!」  そう言って僕の頬を引っ張る樹くんに、僕は思わず頬が緩む。 「ちょっと、何笑ってるわけ? 人が真面目に話してるのにさ」 「携帯は変えないし、かかってきたら電話は取るけど、もう父のいうことは聞かないよ」 「ほんと?」 「うん。もしやばくなったら、樹くんが戻して」 「わかった。携帯変えれば一発なのに。優斗はほんと甘いんだから。あ、でも俺には甘くなかったな」  やばい。話が変な方に流れそうだ。 「樹くん。好きだよ」 「俺も好きだよ。って、騙されないんだからな。あぁ、ほんと俺って優斗に甘いよな」  そう言って僕の胸に顔を埋めるようにした樹くんが可愛い。そんなこと言ったら怒られそうだけど。 「樹くん。また子作りしてみよう」 「優斗!」 「妊娠しないからって家出した人間がいうのもおかしいけど、血を残すとかじゃなくて、樹くんの子供なら可愛くて格好いいだろうな、ってふと思って。ダメ?」 「俺の子なんかより優斗の子の方が可愛いよ。でもさ……」 「できなかったらごめん。でも、そんなことより、樹くんの子供、見てみたくなっただけ。でも、妊娠しなかったからって出ていったりしないよ。ずっと樹くんのそばにいる」 「ほんと?」 「うん。約束する」 「じゃ、また子作りするか。優斗似の子供」  そう言って僕は数日ぶりに樹くんのぬくもりを感じながら眠りについた。

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