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第1話-2 

 それからサミュエルとの同室が始まった。初めての二人部屋。他人と同室って気を使うかと思っていたが案外彼はきっちりした性格だった。部屋もきれいに使うし消灯時間になると寝入ってしまう。別に意地悪をされるわけでもなし、逆にこちらがかまって欲しくなるくらいにサミュエルは僕に対して全く無関心だ。朝起きるのも早く、僕が寝覚める頃にはすでに部屋にはいないときもあるくらいだった。  早朝練習なのかな? 僕と同期の割にサミュエルって体格が良いし授業以外でも鍛錬にでも入ってるんだろうか?ちょっと聞いてみようかな。 「ねえサム。なにか運動部に所属してるの?」 「……どこにも所属なぞしていない」 「ふぅん。じゃあ身体を鍛えてるの?」 「言う必要がない」  僕って避けられてるの?なんなんだ?言う必要がないって?僕に行ってもしょうがないってこと?よくわからないけど同じ部屋にいるのだから世間話しくらいしてくれよ。 「あのさ。なんか僕サムに気に障る事した?」 「……してない」 「そっか。それならいいや」  ん〜。話が続かないなぁ。もうちょっと仲良くなりたいのに。  しばらくして様子をみてこれが普段の彼なんだと理解できた。別に僕だけでなく誰に対してもこの態度だったらしい。どうやらサミュエルは全体的に言葉が足らないのだ。勉強もできる。運動神経も良い。なのに人付き合いが下手なようだ。 「悪気がないってことがわかっただけでもいいかな」  アルベルトは多少の事ではへこたれない。彼は五人兄弟の三男だった。上には兄が二人。下には弟が二人。ちょうど真ん中で揉まれる様にして育った。父親は跡取りである長男と剣に秀でた将来有望な次男につきっきりで、母親は子育てに忙しく、アルベルトも弟たちの面倒をよくみるようになった。世話好きな性格はその頃身についてしまったようだ。上の二人の兄が父親似で屈強な男臭さがあるのに対し、アルベルトは母譲りの長いまつげに豊かな金髪の持ち主である。だが本人は自分の美貌には無頓着であった。

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