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第4話 恋に落ちたあの日のこと(5)★

 掠れた声で告げ、ゆっくりと腰を引いていく。ギリギリまで引き抜いてから再び奥を穿てば、侑人は悲鳴じみた声を上げた。 「ひあっ、う……ああっ! 待って……あ、うっ」  待ってやりたがったが止まらない。高山は激しく腰を振りたくる。  侑人は顔をぐしゃぐしゃにして喘いでいた。が、なにも苦痛ばかりを感じているわけではないようだ。その証拠に、彼のものは再び熱を帯びて反り返っているし、先端からは蜜が滴っている。 (突っ込まれて勃たせてるとか、マジかよ)  見るからに快楽に溺れているというのに、本人は気がついていないというアンバランスさといったら。愛おしいと思うと同時に、ほのかな加虐心が芽生えてくるのを感じてならなかった。 (……もっと、乱れさせてやりたい)  もっとよがらせて、自分を求めてほしい――そんな欲求に駆られて、侑人の両膝をがっしりと抱え込む。胸につくほど折り曲げたのちに、高山は真上から叩きつけるようにして自身を穿ってみせた。 「あっ! うそ、あ……ああぁ……っ」  侑人が髪を振り乱して身悶える。すすり泣きながらも二度目の絶頂を迎えたようで、自身の顔にまで精液を浴びせかけていた。  同時に内壁が激しく痙攣し、自身をきつく締め付ける。 「っ、締まる」  高山も限界が近かった。ラストスパートをかけるべく、荒々しいピストン運動を再開させる。  侑人はされるがままに揺さぶられていた。 「んあっ、あ! あ、すご……いぃっ」 「俺も、すごくいい」  息も絶え絶えに言葉を交わすと、高山は侑人の腰を掴み直す。  もはや理性など欠片も残っていないのだろう。意味のある言葉を紡げなくなったらしい侑人は、口の端から唾液を垂らしてひたすらに喘いでいた。  その痴態に煽られて、高山も上り詰めていく。そうして一際強く突き上げた瞬間、とうとう限界が訪れた。 「……くっ」 「あっ、あああぁ――!」  熱い飛沫をコンドームの中に放つ。  侑人もまた達したらしく、高山は最後の一滴まで絞り取られる感覚を覚えながら脱力した。 「大丈夫か?」  汗で張りついた前髪を払ってやりつつ声をかける。そんなことをしながらも、冷静になった途端に後悔の念がどっと押し寄せてきた。 (やっちまったな……)  いくらなんでも容易く煽られすぎだ。  無理をさせてしまった自覚があるだけに、かなりバツが悪い。相手からしたら初めてのセックスで、しかも友人が可愛がっていた後輩だというのに――考えれば考えるほど、頭を抱えたくなってくる。  とはいえ、いつまでも考え込んでいるわけにもいかず、ひとまず後処理をしようと思い立ったのだが、 「瀬名?」  不意に侑人がしがみついてきてドキリとする。  どうしたのかと覗き込もうとしたが、侑人は肩口に顔を埋めたまま動こうとしなかった。 「……先輩」  ぐず、という鼻をすする音。 「先輩」とは一体誰のことを指しているのだろう。本城か、それとも――いや、自惚れる余地などあるものか。 「………………」  高山は胸がちくりと痛むのを感じながらも、優しく抱きしめ返したのだった。

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