ゴムのウエストのズボンを、もどかしげに自ら脱ぎ捨てた。下着を脱ごうと腰を浮かせた瞬間、景虎にボクサーパンツに指を引っ掛けられてそのまま引き下ろされ、勢いよくペニスが飛び出た。小ぶりで少し曲がったそこは、先端からだらだらと我慢汁を涙のように垂れ流している。 「金玉まで濡れてる」 「言うな……！　お前が変なっ……わっ」 　触れられることで初めて意識したが、庄助のペニスは痛いほど勃起している。不意に手を取られ、景虎の股間に触れさせられた。 「あ……!?」 「俺も勃ってる。庄助がいやらしいから」 「やらしくないっ……あ」 　ズボン越しに手のひらに昂りを擦り付けるように腰を動かされ、庄助は戸惑ったような恥ずかしいような、なんとも言えない表情になった。 「なんっ、なんかでかくない……？」 「他の男の勃起状態を知らん」 「だから今……っ、見てるやろが……！」 　同じ男なのに自分のものと全然違うのは触っただけでわかる。タイトめなズボンにうっすらと浮かぶその形は、凶悪なくらい大きい。 「あ、あっ!?」 　いきなり握り込まれて腰が引けた。濡れたペニスをゆっくり上下に扱かれると、ちゅこちゅこと恥ずかしい音がした。寝転んだまま膝を立てて阻止しようとする。 「あ、んくっ……！　やっ、お゙、あっ……」 「おい、足閉じるな」 「無茶苦茶言うな……！　ひぃんっ」 　ストロークのたびに、精液がぐいぐいと上がってくる。性急すぎて痛いほどに、そこは射精を待ちわびている。 「ケツの穴までピクピクしてる」 「や……っ」 　窄まりを爪の先で擽られて反射的に閉じそうになる膝の間に、景虎は大きな身体を割り込ませた。つつくように皺をなぞられて、庄助は景虎の身体を必死で押し返した。 「あかん……！」 「優しくする」 「そういう問題と違っ……う、ぁ゙っ……！　指入れんな……無理、無理やって！」 　穴をぐいぐいと押され、庄助は青ざめた。下半身を突っぱらせて侵入を拒んでいると、亀頭を包むように上から下まで擦られて不意に力が抜けた。ぬるっと中指の第一関節が入ってしまう。 「ひ、わ……っ！」 「こんなところまで垂れてる」 　蟻の門渡に景虎の親指が触れる。確かに濡れている。いつの間にそんなところまでドロドロになったんや、庄助は焦った。だってこのまま行ったら、景虎のを挿れられてしまうかもしれない。先程少し触れた、あの大きさを思い出して恐ろしくなった。 「いやや……そこは無理っ！　わかった、出したいんやったら手で……っ。手でするから、カゲっ！　マジでお願いやて……」 　本人にすれば屈辱的であろう懇願が、景虎をいたく興奮させる。普段あんなにバカみたいで粋がっていて、強い男になりたいだのなんだの言っている庄助が、自分の前で足を開いて「手で射精させてやるから、挿入は許してくれ」と乞うている。その事実にぞくぞくした。 　昂った景虎は庄助に口づけた。もう驚いたり拒んだりせずに大人しく口を開け、景虎の唇にされるがままになっている。流されやすいのか順応が早いのか、どちらにせよ都合が良かった。 「んっ、ゔ……ぷ、あっ……ひゃ、め……」 　舌を絡めながら、ゆっくりと侵入してゆく。押し開くように少し進んでは戻り、次に押し進めるときはさらに奥へ。何度か繰り返すうちに景虎の長い中指は全部、庄助の中に埋まってしまった。 「な、無理じゃないだろ？」 「は、あっ……ほんま、抜けって……」 　さすがに怖いのか、庄助のペニスはだいぶ萎えてしまった。頬にキスをすると、涙の味がした。こわばる中の形を確かめるように指を動かすと、庄助は首を振った。もう一度乳首に触れて、さっきよがっていた愛撫を施す。抓って先っぽを擦ると、きゅんと尻の穴が締まった。 「……それ、今あかん……て、あ」 　こりこりと痛いくらいに勃つまでいじって、その後もう片方へ同じことをする。庄助の表情はだんだんと蕩けて、半開きにした口から、赤い舌が覗いていた。 「ここ、好きなんだな。チンポより乳首のほうが感じるのか？」 「ちがう……っ、カゲがさっきから、ずっとそこばっか触るからやんけっ……！　うああっ！」 　中指をずるりとギリギリまで引き抜いて、もう一度ゆっくりと奥に突き入れると、庄助はびくびくと身体を震わせた。もう一度引いて、今度は腹側を探りながら進む。またゆるく熱を持ち始めたペニスの先を指で刺激すると、喉を反らせてあられもない声をあげた。一層きつく締まった内部の、小さな膨らみに触れる。 「お゙っ……!?」 　明らかに反応が変わった。少し硬い凝りのようなそこを指を曲げて押すと、庄助の腰が今までにないほど跳ねた。 「いっ!?　なっ、な……!?　ぎにゃっ！」 　ほぐすように捏ねると動物のような声で鳴いたので、景虎は少し笑ってしまった。 「あっ、あかんて！　押したら死ぬツボやろ今の！」 「笑わせるな、ただの前立腺だろ。あるもんなんだな、ほんとに」 　感心したように景虎は言った。 「ふざけんな！　自分のケツで試せや……っお、はわ……っ、あ！」 　前を扱きながらゆっくりとそこを押す。庄助の腹の中に確実に、今までと違う種類の気持ちよさが広がる。ペニスへの刺激が射精へつながる一点への集中の快楽だとしたら、前立腺への刺激は尻の中から体と脳へ放射状に広がる全身への快楽だった。 「うそ、うそやろ……あかんやつや……」 　庄助はうわ言のように繰り返した。中指に続き人差し指も捻り込まれ、引き攣れたアナルの中を探られる。異物に押し広げられる圧迫感に、吐き気をもよおした。 　景虎は、化粧水やボディクリームと一緒くたにキャビネットの上に置いてあったボトルを手に取った。それは潤滑用のローションだった。涼しい顔して、そんなん置いてんのかよムッツリめ……庄助は腹の中でひとりごちた。 　ひんやりとした粘性の液体を手のひらに出して、庄助の尻に塗りつける。すると嘘みたいにスムーズに抜き差しできるようになった。 「あっ、あっ……ゔあ、あ～～～っ」 　空気を纏ってぶちゅぶちゅと、粘性の液体が音を立てる。最初冷たかったそれが、体温に触れてすぐにとろけるほど温かくなる。臆面もなく身体を浮かせ景虎の首にしがみついて、庄助は泣いた。変なところを触られて、おかしな身体にされる。尻を掘られてオンナにされる。怖かった、でもそれ以上に気持ちよかった。 「やっう……！　いッ、も……はぅ、いくイク、あ……っあ、ぎ……ッ」 　何度も擦られたペニスの表面で、ローションが細かく泡立ち粘つく。音が出そうなほどに精液を派手に散らして、庄助は果てた。男の手で無理矢理射精させられるのは、初めての経験だった。 　精液の散った腹を、景虎はティッシュペーパーで拭った。粘っこい白濁は、薄い紙越しにぬるい熱を指先に伝えてきた。 「最初から使っておけばよかったな、ローション。次からはそうしよう」 　次からってなんや。庄助はよほどそう言いたかったが、喉から洩れるのは情けないほど荒い息ばかりだった。ぜいぜいと肩で息をする庄助をぐるっと裏返してうつ伏せにしてしまうと、景虎はまた庄助の中に今度は2本の指をいきなり差し込んだ。 　絶頂して収斂する胎内を、しつこく解きほぐすように掻き回してから指を抜く。痙攣のように身体を震わせて、庄助はオエ、と小さくえずいた。 　背中にのしかかってくる男の体温が疎ましかった。射精して急激に身体の熱が冷えてゆくのに、今さきほど視界の端にちらりと見えた、ズボンの前をくつろげる景虎のペニスは、烈々たる勢いで上を向いていた。見間違いでなければ、フィクションのような血管が太い幹に幾筋も走っていた。 　嘘やろ……でかすぎる。庄助は思ったが、頭が重くて動かせない。あんな大きなモノを挿れるとなると、指の一本や二本で慣らしても屁の突っ張りにもならないのではないか。逃げ出したかったが、血液が全部鉛に変わったみたいに怠かった。 「やめろ……」 　拒絶の声が掠れる。尻にまたローションをこぽこぽと無遠慮に垂らされて、その冷たさに震えた。浮いた腹の下にクッションを突っ込まれた。本格的に挿入されてしまう。