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Epilogue 青年は幸福な明日を願う

   * 「それでは父様、母様。行って参ります」 「気をつけるんだぞ、ルキウス。五体満足で帰ってこい」 「マックスさん、うちの子をよろしくね」 「お任せください義父上、義母上。このオレ、マクシミリアンが命を駆けてルキウスを守りますから」  僕は気恥ずかしくなり、父様がぐぬぬと悔しそうに唸った。  母様がそんな父様を笑顔で宥める。  オレインやメイド長、メイドたちに挨拶をして外へ出る。  七色の蝶がひらひらと僕の前を飛んでいく。 「ルキウス、マクシミリアン。ふたりとも幸せに過ごしなさい。おめでとう」と『過去』の女神様の声が聞こえて、空を見上げる。  元気になった女神様が、蝶と優雅に空を飛んでいった。 「今のが『過去』の女神か」とマックスさんが手で日光を遮りながら、空を眺めた。 「はい。以前、亜空間で姿をお見かけしたときは大層具合が悪そうだったのですが、元気になられてよかったです」 「そりゃあ、オレが英雄になって偽の神子を元の世界に帰せたんだ。元気にもなるだろ。そんなことよりエリザのやつ、首を長くして待っているぞ」 「お母さんになって、ますます手厳しくなりましたからね」 「ああ、メリーのやつも苦労するぜ。先生は曾孫馬鹿になっているし」 「いいと思いますよ。息子さん夫婦も奥様も早くに亡くしている身。お孫さんであるエリザさんが生んだ赤ちゃんが、かわいくて仕方がないんですよ」  平穏な生活を送っている。  他愛ないことを彼と話す。そんな日常が愛しい。  でも――魔王の封印は依然解かれたままだ。  戦いはまだ続く。 「ルキウス、行くぞ」 「はい、マックスさん」  それでも僕らはまだ見ぬ明日へ向かって、幸せのために歩き続けるのだ。 (Happy End.)

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