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cigarette:14
冴さんの家に住む様になってから1人で外に出ていないのだが、冴さんにやっとの事出掛ける許可を貰った俺は店長の元へと会いに行った。
「お久し振りです」
「紫藤君…?そのチョーカー、まさか兄さんと?」
「はい」
「そう…」
そこまで期間は空いていないが、本当に懐かしく感じる。
本当は会いに来ない方が良かったのかもしれないが、ちゃんと礼を言いたかった。
「ちゃんと礼を言いたくて」
「そんなの気にしなくて良いのに。…兄さん、元気で過ごしてる?」
「元気っすよ」
冴さんの事が気になって仕方がなかった様で、話を聞いている間はとても穏やかな表情をしていた。
一通り話し俺は別れたのだが、人通りの少ない道を選んで帰っていた所後ろから声を掛けられた。
別に人が通らない場所では無いので振り返ると、見知らぬ男が立っていた。
「お前があの黛冴の番か」
その一言で、この男が冴さんの敵対する人間だと分かった。
手元には何も持ってない。銃を持っているかもしれないが、隙を作れば何とかいけるか――?
俺は男に転がっていた空き缶を勢い良く投げ付けると、隙を見て頭に蹴りを入れた。
一般人だと気を抜いていた男に完璧に決まり体制を崩したのでその間に逃げる俺だったが、前方に男の仲間が立っており逃げ場を失った。
やっぱ、1人で出掛け無い方が良いな――。
「クソったれが…」
俺は男にスタンガンにより気を失ってしまった。
✵
「彼を攫ったのは、これから潜入する組織の奴らだね。まさか君の事も調べてるとは思わなかった」
「…やっぱり行かせるべきじゃなかったッ」
いつまで立っても帰ってこなかった日色は、もしかしたら逃げ出したのかと思ったが、攫われている事が分かった。
とある裏カジノを経営している奴らだと判明し、今から潜入し日色を助ける事になった。
「急いで準備しようか。ガッティーナはもう変装の準備を始めているから、スーツに着替えて」
「…正面から行ったら駄目なのか」
「逃げられたくないからね。…番が攫われたから早く助けたいのは分かるけれど落ち着いてくれる?1回蹴られたいの?」
「…っ、悪い先生。1回蹴ってくれ」
落ち着かせる為にもそう頼むと、何の躊躇いもなく腹を蹴り上げた先生。
手加減は無いのでその痛みに体制を崩したが、日色を助ける為にも落ち着きパーティー用のスーツに着替え、完璧の女装をしたファウストさんと共に裏カジノへと潜入した。
「…結構繁盛してやがる」
「…ここに標的は居るのかファウストさん」
「いや、ここには居ないらしい」
他の奴らに聞こえない様に小声で話す俺達。怪しまれぬ様に酒を貰ってはゲームに参加していたが、標的は居ないらしい。
「…あの人は恐らく助けに向かってる。標的を逃がさぬ様に見ているしかないだろうな」
「標的以外はどうするんだ」
「…まぁ、それはその内分かるさ」
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