32 / 37

♡ 「――返事も聞かずに追い出して良かったのか?」 「良いんだよぉ。まぁ、帰って準備はするでしょ。昔から私の命令に背く事は無いし」 返事も聞かず強引に追い出した後、恐らく2人は納得いかないまま去って行っただろう。 然し、私の最後の命令とあらば文句を言いながらも荷物を纏めて指定した場所へ向かうだろう。 昔から私がどんな我儘を言っても、彼は必ずそれに従った。 まぁ、私が彼を拾い育てたのだから逆らう事は出来ないだろうが、今まで1度も逆らった事は無い。 ――いや、あの時唯一逆らおうとしてたか。 「…私はねぇ、弟子として家族として彼を愛してしまった。部下は大事だが本心は見せまいと生きてきた私がだ。…まぁ、君は例外だけれど」 「…良く言う。番になる前はとことん壁を作ってた癖に」 「ごめんごめん。それは昔の話だからさぁ」 私は半ば無理矢理、この子をΩに転化させた。だからこそ、その代償に子供が産めない身体となってしまった。 別に子供何て必要無いと思っていたけれど、ここまで愛してしまうと哀れに求めてしまうのだ。 「オレは別に子供何て要らないと思ってたさ」 「…そう?」 「アイツの子供を抱ければ十分だろ。子育ては性に合わん」 「ふふ、抱きたいは抱きたいんだ」 彼らは幸せになるべき人間では無いかもしれない。 冴君は沢山の人を殺して来た。相手がどんな犯罪者でも殺す事は犯罪だ。犯してはならない罪だろう。 その術を教えてしまった私が全て悪い。 彼の思いを軽々しく受け取り、人を殺す術を与えてしまった。 「アイツが自ら望んだ道だ。自分を責めるなよ?」 「…何でもお見通しなんだなぁ、ガッティーナには」 「何年傍に居ると思ってんだ」 「これも私への愛だねぇ」 「調子乗んな」 「いてっ」 ガッティーナにどつかれた頭を摩りながら、私は彼らの今後の未来が少しでも明るく幸せなものになる事を願った。

ともだちにシェアしよう!